2016.04.07

未来の働き方を考える 第14回
個人のレーティングはどこまで進む?

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 ついに出てきた――。そんな感じで2016年3月にリリースされたのが、「個人のレーティング(格付け)アプリ」である「Peeple」です。元々2015年時点でその存在が話題になりながらも、さまざまな物議を醸してこれまでリリースされていませんでしたが、ここにきて現実のものとなりました。

 「Yelp(様々なお店などのレーティングサイト) for People」というキャッチフレーズを掲げるこのアプリ、今後の私たちの価値観を根本的に揺さぶる可能性を持った破壊的なアプリといえます。

レーティングは「個人」へ

 国内でレーティングといえば、代表的なものとして「食べログ」や「ぐるなび」といった飲食店サイトが挙げられます。さらには一般の商品やホテル選びでも「口コミ情報」はもはや購買決定のためには不可欠な情報になっています。

 最近ではこのようなレーティングが、店や商品といった「人間以外」のものから、徐々に一個人にまで広がりつつあります。例えば税理士や弁護士といった「士業」のようなサービスを提供する専門職の「格付け」は米国では数年前から当たり前になりつつあり、さらには本連載でも何度か触れた「Uber」や「Airbnb」といったサービスでは、実際にレーティングする相手は個々の運転手や貸し手などであり、全て「個人名」に対してレーティングされるようになってきています。

 そうなれば次に来るレーティング対象も、「店」の単位ではなく、「店員個人」のレベルにまでいくのは時間の問題でしょう。ホテルでも担当者が誰なのか、営業職などの接客業でも「どの会社と付き合っているか」だけでなく「どの担当者と付き合っているか」が重要ですから、担当者別のレーティングや口コミが出てきても全く不思議はありません。

 ここまで来れば、その矛先は商品やサービスと紐付いた形での「仕事上の個人」だけでなく、純粋に「プライベートとしての個人」に向いてもおかしくはありません。むしろこのような仕組みがこれまでなかった方が不思議です。それがようやく冒頭の「Peeple」のようなサービスとなって実現しつつあるのです。

個人のレーティングで予想されること

 ここまで事態が進行してくると、人間の価値観そのものを大きく変える可能性があり、プライバシー侵害や「オンラインいじめ」などさまざまなネガティブな側面も危惧されます。ネットの中での陰湿ないじめの世界が半ば公の場で行われる可能性も出てきたり、触れられたくない個人の側面にも容赦ない「攻撃」がされたり、といった事態も想定されます。もちろん「Peeple」では、こうした事態が発生しないように様々な機能を実装してはいます。

 ただ問題は、このような仕組みは誰かが一度作り上げてしまえば、法律で明確に禁止でもしない限り(たとえしたとしても)、「なかったことにする」のが非常に難しい不可逆性を持っている点です。ある一定のユーザー数などの「クリティカルマス」を超えてしまうと、提供者側の一方的な判断でサービスを止めることが難しくなります。

 このような動きにも前向きに考えられる部分はあります。自分を客観的に見て、自分の長所や短所を認識するのは非常に難しいことです。そこを他人から指摘してもらえれば成長のきっかけにもできるでしょうし、「目に見えない親切」など、多数の人に分かりにくい形で社会に貢献している人が日の目を浴びる可能性も大きくなってくるのではないでしょうか。

 また、ネット上の心ない批判や個人攻撃などについての「ネット批判リテラシー」を向上させるにも、「自らがネット上で批判される」ことを経験してみるのも一つの反省材料になるかも知れません。「お店相手」だからよいだろうと一方的なネガティブコメントを残すたつもりでも、その向こう側にいるのは、「生身の人間」なのです。

 「ろくに事実も確認しないで一方的に批判する」「当事者でもないのに『観客席』から一方的に上から目線で物申す」ことが、言われた方がどんな気持ちになるかを経験することで相手の立場に立ち、真の意味での建設的な批判を増やしていくきっかけにもなるのではないでしょうか?

 どちらにしても、レーティングアプリの職場での評価や採用にもつながっていくことは容易に想像できます。今後のネット文化やそこから影響される個人の働き方を考える上でも、その動きが非常に注目されるサービスだといえるでしょう。

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