2015.04.13

未来の働き方を考える
第3回「AI」が変える未来の仕事

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 未来の働き方について考える上で欠かせないのがAIやロボット技術の発展と言えます。ICT関連でも関連の会社を買収したり多額の開発投資をしたりといった動きが活発になってきています。さらに、いま人間のやっている仕事のかなりの部分までがAIやロボットによって置き換えられていくという意見も多く出てきています。もともとは人間の仕事を助け、「味方」であるはずだったコンピュータや機械は果たして近い将来「人間の敵」となってしまうのでしょうか?

●新しい上司はAI?

 IBMの「ディープ・ブルー」がチェスのチャンピオンを負かしたのが、1997年、そして同じIBMの「ワトソン」がクイズ王を負かしたのが2011年でした。そしてそのワトソンが今度は「採用試験」でもある意味で人間と互角の勝負を演じたことが先日報じられました。三井住友銀行のコールセンター業務がそれで、質問への回答は熟練オペレータには負けるものの、未経験者は上回ったということです。

 この話に限らず、従来は人間の補佐的な業務や単純業務の代替をしていたコンピュータが、いよいよ直接外部の顧客との「自ら頭を使う」仕事にまで進出を始めています。MITの研究者の共著による『機械との競争』(日本版は日経BP社)の中で、今後は機械が人間の雇用を奪い続け、いずれ残る職業は高度な知的作業と肉体労働だけになるだろうという大胆な予測があります。

 果たしてこのような動きは、さらに人間にとっての脅威へとつながってないくのでしょうか? 近い将来、コールセンターのみならず「採用の『面接官』がAIだった」(しかもそのことに気付かなかった)とか、「今度の『新しい上司』はAIだった」なんていうことが起こり得るのでしょうか?

●どんな仕事から置き換えられる?

 ここでどんな仕事がコンピュータに置き換えられやすいのか考えてみましょう。

 一般的にわかりやすいのは「定型度」の高い仕事です。マニュアル化されたオペレーション業務がその対象になるというのは、誰でも気がつきますが、例えば一見定型度が低いように見える「管理職」の仕事の中にも定型性の高い業務は数多く含まれています。

 単に目標の達成度をみるための進捗会議などもその一例です。数字が達成できた/できないをフォローするだけなら、それこそ機械でもできます。組織につきものの「報告」や「連絡」も、送ってそれに対するアドバイスが得られないなら相手は機械でも良いのです。それに対しての的確な相談や解決策を提示できない単なる伝達役の管理職の仕事も機械が置き換えていくかもしれません。

 下手をすれば、AIであれば、週報の内容をビッグデータ解析して「この担当者がこう言っているなら、次は70%の確率でこうしたほうがよい」なんていう「アドバイス」をくれるかも知れません。そうなれば、「報告させるだけ」の上司に比べて、よっぽど報告のし甲斐もあるでしょう。

 「定型度の高さ」をさらに一般化すると、非定型から定型業務の流れというのは、いわば仕事の上流から下流へという流れで、その性質をまとめて整理すると下図のようになります。

 ここでいう「下流」に当たる仕事から順番に機械やコンピュータが置き換えていく流れになることは間違いありません。きっちりと分業化されて指標が明確になっている仕事、抽象度が低い、つまり具体性の高い仕事(コンセプチャルな仕事は機械には難しい)、ノウハウが蓄積されている仕事というのがその対象ということになります。つまり、「制度が整った」会社ほど自動化が先に進んでいき、人間の出番が少なくなることになります。

 また、自分の仕事は「資格が要る」仕事だから安泰だと思っている人がいるかも知れませんが、これも疑ってみる必要があります。そもそも「資格」というのは、ペーパーテストで判定されて付与されるものが大半を占めます。「ペーパーテストが可能」=「問題の定型度が高い」ことを意味しますから、実はこのような「特定知識が必要」な仕事こそコンピュータがもっとも得意とする領域なのです。

 特に、この手の特定知識が必要な資格には、常に最新の知識を学び続ける必要があるという課題がありますが、これこそコンピュータがもっとも得意とする「ソフトウェアのアップデート」によって簡単に実行できてしまいます(脳科学と組み合わせて人間の記憶にも「アップロード」や「アップデート」の概念を持ち込もうという研究もされています)。

●さらにどんな仕事ができるのか?

 AIやコンピュータの可能性は、単に人間の仕事を置き換えるだけでなく、これまで人間ではできなかった仕事を生み出して、会社の仕事を高度化していく可能性も秘めています。昨今のビッグデータやIoTといったキーワードも、様々な潜在的活用方法が考えられます。少し前まで「夢語り」と思われていた「自動運転」が早くもテスラモーターズの電気自動車では実装レベルにまで実現し、アメリカの公道ではGoogleなども数々の実験を行っています。

 このように、全てがネットでつながってそこからのデータを活用して「管理や制御」が行われるという発想は「従業員」の世界に広がってもおかしくありません。もちろん人間は機械とは違いますから、単純に「管理や制御」の対象になることはないですが、それでも例えば優秀な社員の行動特性を分析して社員のスキルアップに活用するとか、人事評価の客観性や定量性を増すのに単なる自己申告や特定の人の偏った意見だけでなく、具体的かつ客観的で網羅的な行動データを活用するとか、様々な方向が考えられます。

 ビッグデータを活用したリコメンデーション機能についても、オンラインショップのみならず、例えば「この業界の顧客への提案に成功した担当者の 60%の人がこのドキュメントを参照しています」といった、成功パターンの共有に使うことが可能になるかも知れません。

 このように蓄積された従業員に関する「ビッグデータ」の思わぬ活用方法を考える「担当者」はもはや人間ではなくAIになっている可能性だって考えられます。いや担当者だけでなく、「データ解析部長」までAIになっているのかも知れません。

●人間とAIの「共生」がさらに付加価値を生み出す

 このような技術革新を「職がなくなる」と人間の雇用への「脅威」と捉えて、「過度なAI化は危険である」という考え方もある一方で、これをチャンスととらえることもできます。もはやプロ棋士レベルになったコンピュータ将棋も、人間との「共同作業」によってさらに活用できないかといった方向性が考えられているように、「人間か機械か」という二者選択ではなく、それらが融合した新しい会社や働き方の姿を考えていくことが重要ではないでしょうか。

 そのために必要なのは、常日頃から「人間にしかできない(あるいは圧倒的に得意である)ことは何なのか」を考えておくことです。

 機械が得意なのは、

・明確に定義された問題を

・蓄積された膨大なデータを使って

・感情に流されずに淡々と

こなすことでしょう。

 逆に考えれば、人間が持ち味を出す領域は、

・あいまいな問題を自ら発見して定義し(これが先の図の「上流」に相当します)

・「今ないもの」を想像・創造し

・人間の感情に配慮しながら実行する

ことなどと言えます。

 皆さんの仕事は「本当に」AIやコンピュータでも置き換えることのできない仕事なのか? それらがもし「助けてくれる」としたら、自分は何に特化すべきなのか、改めて考えてみることが重要です。

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