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2016.10.31

ソフトな働き方は制度より雰囲気が大事
自己管理が「自由度」「柔軟性」高める

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 米Cook Medicalの日本法人として、国内で医療機器などを提供するCook Japanは、8週間にわたる長期のトレーニング兼採用のプログラム「クック・セールス・アカデミー」を実施。採用方法の新規性を各方面から評価されるだけでなく、実際に事業部のトップセールスの誕生にもつながっている。

 ユニークな採用プログラムを取り入れるCook Japanでは、社員の働き方はどのような姿を見せるのだろうか。同社 代表取締役の矢込和彦氏は、Cook Japanにおける働き方を「ソフト」と「自己管理」の2つの言葉で表現した。

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 米Cook Medicalが掲げる「ペイシェントファースト」、すなわち患者を第一に考えるという理念を受け継ぐCook Japan。会社としての利益を追求することを第一にするのではなく、患者のためを第一に考える視点が、巡り巡って利益に結びつくという考え方だ。

 こうした理念は、「クック・セールス・アカデミー」(以下、アカデミー)による長期間のマッチングの際にも提示してきた。一方で無理して製品を売り込むような営業スタイルを採らずに済む背景には、特徴のある製品を持っていることによる強みもある。矢込氏は「オンリーワンの商品もあり、ドクターからの指定で売れるものも多いのです。無理矢理押し込まなくてもなんとかなる製品の強みは、確かにありますね」と微笑む。製品に自信があるからこそ、理念を守ることができる。そんな好循環が生まれているようだ。

柔軟に働ける雰囲気を醸成

 そんなCook Japanの仕事の仕方を矢込氏に尋ねると、「比較的、"ソフト"ですね」と、これまた柔らかい表情で返事があった。外資系にしてはかなりソフトな働き方だと、トップ自らが言えるとなれば、本当にソフトなのだろう。

 「制度は柔軟に働けるようにと考えて作っていますが、それ自体はものすごくユニークではないと思っています。制度として挙げられるものは、フレックス制を幅広く導入しているぐらいでしょうか。ほかには、特別な制度はないですね」

 フレックスタイムの導入自体は、今となっては特段珍しいことではない。それでも、「ソフト」な働き方ができる会社とは、どういうことなのか。矢込氏に続けて尋ねた。

 「オフィス部門で採用しているフレックスタイム制では、コアタイムを短く設定するようにしました。現在のコアタイムは12時から15時です。また、24時間体制のドクターに向かう営業現場では、裁量労働制を採用しています。いずれにしても、なるべく柔軟に働けるようにしています」

 さらに続けた矢込氏の次の言葉には、ハッとさせられるものがあった。

 「大企業などを見ていると、多くの制度を取り入れているところがあります。しかし、それらの制度がフルに活用されているかというと、かなり疑問です。実際には、制度よりも雰囲気の方が重要ではないでしょうか。帰りたいのに帰れない――そんな良くない雰囲気が根付かないようにすることを心がけています。そのために、私が中心となって、直接事業部の責任者にメッセージを発信していますし、自分も出来る限り率先するようにしています」

 矢込氏が、「こういうことはするな」と戒めている例が、「長時間働いた人が頑張っているというような雰囲気」「有給休暇を全て取ると休みすぎだと指摘するような雰囲気」だという。「マネージャーも早く帰り、有給休暇を取得しなさい」「有給休暇はどんどん取って、フルに消化しなさい」といったメッセージを送り続けることで、実際に柔軟に働き方を調整できる雰囲気を作っているのだ。上司が残業しているから帰りづらい――。そんな気持ちにならなくてもよければ、それだけでも気持ちよく働けそうだ。こうした雰囲気が、矢込氏の言う「ソフト」な働き方を支えているのだろう。

時間の有効活用具合は成績にも反映

 オフィス部門では12時から15時という短いコアタイムで自由度を高め、24時間対応も求められる営業部門では裁量労働制で柔軟な働き方に対応する。そんなCook Japanだが、特別なITツールを利用してはいないという。スマートフォンとしてのiPhoneとノートパソコン、そしてiPadを営業全員に支給している程度だ。社員は管理者に対して週報やレポートを送り、管理者はレポートを見るほか直接の話しかけでコミュニケーションを取る管理スタイルは、確かに特別なことはない。そうした一般的な管理体制で、「自由」「柔軟」に働くとなると、逆に難しさもありそうだ。

 「自己管理できないとダメです。営業で深夜に働いたら、どこかでリラックスする時間を取るといったことを自分で管理する必要があります。昔の日本企業のように、9時に来て朝礼をして、外出して帰ってきて日報を提出するといったスタイルも、それはそれで企業への帰属意識を高めるメリットがあったでしょう。自由なスタイルにすると、組織から放たれてしまったような気持ちで不安になる人もいます。でも、一度、自由度があるスタイルで自己管理して仕事をするようになったら、朝礼をするなんて言われたら苦痛でしかないでしょう。どこまで自己管理できるかがポイントなのです」

 矢込氏は、自由かつ自己管理によるワークスタイルを、こんな風に企業側のメリットとして語る。

 「自由度を高めて一人ひとりの社員が時間を有効に活用できるようになると、業務効率が上がります。そうした中でも、ときどき自己管理ができない人が出てきますよね。すると、それは成績になって表れるのです。有効に時間を活用できていない人が、全体の自由度を高めることで浮かび上がってきます。そうしたら、上司が方法を教えたり、同僚とペアを組ませたりすることで、自己管理の仕方を教えて上げればいいのです」

さらなる女性の活躍を目指す

 ソフトな働き方を推進し、実践するCook Japanでも、手が付いていないこともある。例えば人材の多様性への対応については、将来は取り組むべき課題と考えてはいるものの、何かを今強制的にしなければならない状況だとは感じていないという。

共用スペースにはカフェもあり、社員の顔写真が飾ってある。家族的な雰囲気を大事にしている

 「継続して取り組んでいるのは女性の活躍促進です。オフィス部門の社員は女性が多いのですが、営業部門は男性が97%に対して、女性が3%と女性の比率が圧倒的に低いのが現状です。ダイバーシティや企業の活力という面で、どれだけ女性の営業職を受け入れられるかが我々のチャレンジだと思っています」

 医療機器業界では、歴史的に男性社会が続いてきた。医者も男性中心なら、営業担当者も男性。激務というイメージもある。女性がなかなか営業職に飛び込んできてくれないのだ。そうした中で、アカデミーでは女性を営業担当として20人中8人採用した。アカデミー採用から、事業部でトップセールスを記録した2人は、いずれも女性だという。

 「実際に女性は優秀ですね。最初はドクターも若い女性が来るとはどうしたんだ?と驚いた態度でも、実際に優秀さを目の当たりにするとしっかり認めてくれるようになりました。ドクターの固定概念を覆すことができたわけです。医療機器の営業が持つマイナスのイメージを払拭し、女性にもっと活躍してもらいたいです」

 とはいえ、女性は出産や子育てによって働き方の変化を余儀なくされることも多い。Cook Japanでは、出産を機に営業から内勤に移った女性社員が数人いるという。一緒に働いてきている社員をなるべく失うことのないように、勤務体系の変更などにも柔軟に対応しているから可能になったことだ。「時短で就業しているお母さん社員は7~8人、育休や出産でお休みの社員も3~4人、常にそのぐらいはいます」と矢込氏は笑う。その笑いは、「出産を理由にして退職に追い込まれた社員がいない」という実績が支えている。

 出産を理由に退職した社員がいないことも、自由度を高めた働き方を実践することも、さらにはペイシェントファーストの理念を貫くことも、実はトップである矢込氏の働きかけによるところが大きいようだ。管理職には常にメッセージを発信し、地方の営業担当者とも年に一度は現地に出向いて直接話を聞いたりメッセージを届けたりする場を設けている。こうした気持ちの連帯感があるから、働きやすい雰囲気を醸成することに成功しているのだろう。

 最後に、矢込氏は、こんなエピソードを紹介してくれた。

 「米国本社でも29年ほど前にアカデミーで採用していた時期がありました。そのときの業界未経験のアカデミー生が、今も4人在籍しています。そして、そのうちの2人が現在の本社役員なのです。日本でアカデミーを実施するときも、彼らがサポートしてくれました。それなら今度は日本から本社の役員になって行く人を出そうよ! そんな夢を社員に語っています」

text:Naohisa Iwamoto pic:Takeshi Maehara

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