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2015.06.15

世の中変える在野の研究者集団
自分たちの「巣立ち」が原点

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 リバネスは、科学技術の研究者が集まって2001年に創業したベンチャー企業だ。自らを「研究者集団」と呼ぶリバネスは、研究者のさまざまな知識や知見を持ち寄って新たな価値の提供を目指している。科学技術によるイノベーションを通じて、より良い世の中作りに貢献することが目標だ。

 その事業内容は多岐にわたる。企業からの研究受託、研究者やベンチャー企業の支援、研究者の卵である子どもたちを対象とした教育プロジェクトなど、「研究者」の能力やスキルを生かせるジャンルで広くサービスを展開する。自らも「藻類・植物の研究者」で農学博士である代表取締役CEOの丸 幸弘氏に、リバネスが誇る“研究者魂”について語ってもらった。

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社長の丸氏。2時間近く、精力的に話してくれた

 社名の「リバネス」とは、耳慣れない言葉かもしれない。この社名、英語の「Leave a Nest」の発音をカナ表記したもので、訳すと「巣立ち」といった意味だ。研究者集団であることを掲げ、教育や研究支援のサービスを提供するリバネスだけに、その名称にはビジネスを創造し、それを軌道に乗せるインキュベーター的な意味合いを感じてしまう。ところが、丸氏は笑いながらこう語る。

 「リバネスの意味は、そんな"上から目線"のものではありません。リバネスは元々、2001年に理科系の大学院生が始めたベンチャー企業です。私が24歳、(同席している)吉田さん(同社専務取締役CIOの吉田丈治氏)が21歳のころでした。世の中は就職氷河期でしたから、自分たちが巣立つ場所を作ろうというのが発端なんですよ」

 研究者として自分たちがどうやって巣立っていけばいいのか。そのためのプラットフォームとしてはどのようなものができるのか。それを考えた結果、生み出されたのがリバネスだった。

 「最初の取り組みは、子どもたちに最先端の科学を教えることでした。メンバーは東京大学や東京工業大学の大学院などで科学技術を研究しています。そのため最先端を肌で感じているという資産があります。研究が好きな自分たちが、科学の面白さを伝えることで、子どもたちの理科離れを防ごうと考えました。そう言うと、子どもたちを巣立たせる場を作ったように聞こえるかもしれませんが、世の中に研究者が関われる場を作ることで自分たちが巣立つ場所を作ったというのが本音です」

 研究者である自分たちが持っているスキルを活用できる場として、また自分たちのやりたいことができる世界を作るためのプラットフォームとして、リバネスは活動を開始した。その背景には、研究が大好きな大学院生が学位を取り、その後いわゆる"ポスドク"になったときに研究したいことを続けられる場が、日本には少ないことが関係しているようだ。

 「私は藻類の研究や植物の研究をする研究者です。リバネスではその研究を社会に伝えることでお金をもらっているわけです。これは立派なLeave a Nestですよ。もしも、大学に残って研究をしていたら、ポストなんてないでしょうから。私たちは大好きなサイエンスとテクノロジーで仕事ができているんです」。

研究者には需要はあるけれど、雇用はしない日本社会

 研究者が集まっているリバネスが柱の1つとしているのが、企業の研究開発の受託だ。受託研究というと、お金のために研究成果を出してクライアントの要求に応えるといった多少ネガティブなニュアンスを感じることも少なからずあるが、リバネスでは否定的な見方はしていない。

 「リバネスでは受託研究を肯定しています。受託の話は毎日のように飛び込んでくるのですが、全部受けるスタンスです。これも自分たちの能力を生かす場です。企業に属する人の数は有限で、研究者の需要はあっても実際には雇用することは少ないんです。例えば植物工場を作ろうとしたとき、光の研究者、培地の研究者、野菜の研究者、全体をまとめる研究者など細分化した分野の研究者が必要になります。企業としては、研究者を何人雇えばいいのか、どれだけのコストがかかるのか、分からない。だからチャレンジできないわけです。これをリバネスに頼めば、複数のジャンルの研究者が揃っていますから全部できてしまいます」

 丸氏は、別の例も挙げて説明を続ける。「製薬会社には大勢の研究者がいますが、ほとんどの研究者は化学の研究者です。製薬会社がバイオ薬品に進出しようとすると、例えば抗体や免疫系の研究者が必要になります。しかし、その分野の研究者を雇ったとしても、上司は化学の研究者で、研究のコミュニケーションを取ることが難しいという現状があります。それならば、リバネスが必要な研究を受託すればいいわけです。これまで、異なる分野の研究をコミュニケーションする研究者はいませんでしたが、リバネスは異なるバックグラウンドの研究者の集団であり、研究者同士がコミュニケーションを取ってすみやかに問題を解決できます」。

 リバネスには、CIOの吉田氏のような、電気電子工学をバックグラウンドにもつITシステムを専門とする研究者もいれば、丸氏のように藻類や植物などを専門とする研究者もいる。この二人で植物工場を作ったら、単に野菜を作るだけでなく、センサー技術で生育の状態を検知して、TwitterやFacebookと連動して情報を提供して集客するといったトータルシステムを作れる。これが、研究者同士がコミュニケーションすることを前提としたリバネスの強みだ。

異文化のコミュニケーションでクリエイティビティを高める

 この研究者同士のコミュニケーションがリバネスの強みの源泉だ。

 「リバネスとしてデータ分析や解析といったこともしていますが、それは私にはよく分かりません。私は感性で動いていて、興奮する場所が違うんです。私のセンサーが捉えた情報を脳で集中して分析した結果と、データ解析したものが一緒なら、感性で捉えた結果は正解といえますよね。昔は私のセンサーに頼ってきたのですが、最近は社内のデータ解析もよく当たるようになってきました。そんなように、"人のセンサー"と、データ解析を融合させられるサイエンティストがいるところがリバネスの強みです。ゴールは共有しているので、異文化のコミュニケーションによりクリエイティビティをより高められるのです」


 人間の感覚という「ウェット」な側面と、データ解析のような「ドライ」な側面が、両方うまく連携して動いていることが会社のクリエイティビティにつながるという丸氏。研究者を集めて「研究をしていればいい」環境を用意しながら、実は異なる分野の研究者の間でのコミュニケーションから生まれる化学反応を強く求めているように見える。そこには、名前から想像するような冷徹な「研究者」ではなく、人とコミュニケーションを大切にし、勘や感覚を磨くことで真理に近づこうとする、人間味にあふれた人物がいる。

 丸氏のほとばしる情熱と感性が研究者集団の求心力になり、イノベーションやクリエイティビティを支えている。


リバネス 丸 幸弘氏インタビュー

text:Naohisa Iwamoto pic:Takeshi Maehara

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