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2016.09.20

「LOVE休暇」や「カルチャー半休」で
人材採用コンサル会社が仕掛ける"改革"

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 アルバイト・パートの採用を中心に、人材採用のコンサルティングを手がけるツナグ・ソリューションズ。同社は、自社の社員に対してユニークな休暇制度を設けている。採用コンサルティングの会社が考える、社員の向けのユニークな制度にはどんなメッセージが込められているのか。同社取締役コーポレート支援室室長の矢野孝治氏にその真意を聞いた。

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 2000年をピークに日本の労働人口は減少に転じ、その一方でアルバイトやパートといった非正規の労働人口は増加の一途をたどっている。労働人口が減少する中、働き手は多様化し、老若男女の別なく複線化した働き方が求められるようにもなっている。アルバイト・パートを中心に採用コンサルティングを手がけるツナグ・ソリューションズは、そうした背景から生まれた会社だ。

 同社取締役コーポレート支援室室長の矢野孝治氏は、「『アルバイト・パートをヒーローに』というコンセプトで、専門のコンサルティング会社を立ち上げました」と語る。労働人口の中でアルバイト・パートといった非正規労働者だけが増えているのならば、その人たちの地位を向上させる取り組みが必要だという視点だ。会社は2007年に設立、11人のメンバーで事業をスタートさせた。

「有給休暇」と「LOVE休暇」のインパクトの違い

 ツナグ・ソリューションズでは、採用コンサルティング会社として、人材を集めて定着させるためのノウハウを、企業などにコンサルティングしている。そうした中で、1つの重要な視点が「我々がやってみたことを、企業に提案する」というものだ。自分たちが人材採用や定着にうまく活用できた方法ならば、自信を持って提案できる。矢野氏はこう語る。

 「そうした考え方の1つに、休暇などのワークスタイル制度の設計もありました。どういう休暇があったら働き手として嬉しいだろうか、ということを自分たちで考えてみたわけです。ツナグ・ソリューションズを立ち上げたばかりのころは、もちろん自社の採用力も高いわけではありませんから、応募してくる人に興味を持ってもらえて、楽しく働けそうだと思ってもらうことが重要でした」

 自社の採用力を高め、社員としての定着を図る狙いで、新しい休暇制度のアイデアを募ったわけだ。「トップダウンで決めたのではなく、制度は社員が皆で考えた」と矢野氏は当時を振り返る。そうして出来上がり、現在でも続けられている独特の休暇制度が4つある。

 「LOVE休暇」は、パートナーなど大切な人の誕生月に休暇が取れる制度。会社が1万円までのプレゼント代も支給してくれる。「勉強休暇」は自己啓発を目的としたもの。年に1回、連続5日まで休暇が取得でき、勉強費用も最大10万円まで支給される。「カルチャー&エンタメ半休」は、文化や教養に触れるための半休。年に2回まで取得でき、会社から1回に5000円が支給される。「理美容半休」は心身のリフレッシュを目的とした半休。理容院・美容院に行くだけでなく、ネイルやマッサージ、エステなどで身も心も磨き上げる時間を、毎月1回与えてもらえる。

 「実際に、新卒社員採用の面接などをすると、『LOVE休暇や勉強休暇は、面白い制度ですよね』と興味を持ってもらえます。同じ休暇があるとしても、『有給休暇が何日あります』というだけの情報と、有給休暇に加えてLOVE休暇がありますというのとでは、明らかに雰囲気が違うと捉えられるようです。応募する人の感じ方を変えられるのです」

 実際に、こうした休暇制度を設けていることをコンサルティング先の会社などに話すと、興味を持ってもらえるようだ。「御社もLOVE休暇を導入しましょう」といった提案をすることはないというが、こうした考え方が人材採用や定着に影響を与える可能性は、クライアント企業にも伝わっている。

休暇が増えると属人性が排除される

 ツナグ・ソリューションズがこのような独特の休暇制度を採用している狙いは、人材採用の入口における告知効果を求めるだけではない。社員のワークスタイル変革への影響を考えてのことだ。矢野氏は、例を挙げて説明する。

 「例えば、カルチャー&エンタメ半休は、会社が5,000円の費用を提供して、文化や教養に触れて右脳を活性化してもらおうという制度です。ただし、休暇は、文化や教養に触れて楽しかった!では終わりになりません。休暇を取得して見たり聞いたりしたものは、最終的にアウトプットしてもらうのです。イントラネットで報告するわけです。映画を見てこんな感想を持った、世の中でこのようなアートが流行している――といったことを社内で情報共有してもらうことがもう1つの目的です。5,000円は"取材費"という考え方なのです」

 映画でも絵画でも舞台でも、誰かがカルチャー&エンタメ半休を取得すると、世の中の流行などが社内で情報共有できる。アルバイト・パートの採用コンサルティングの対象となる応募者には若い人も多い。そうした人たちが興味を持つような趣向や価値観をインプットすることで、応募者にどのような原稿が"刺さるか"などを考えるヒントにしようという狙いがある。さらに、社内の人材相互のつながりを促進する効果にも期待している。同じような趣味の人を見つけることもできるし、従業員同士の知らなかった側面を見ることもできるというわけだ。

気持ちを込めた手書きのウェルカムボードでお出迎え

 しかし、ツナグ・ソリューションズは採用コンサルティングを手がける企業だけに、休暇を従業員に与えることで得られる効果について、より多くのことを求めている。その最たるものが、属人性の排除だという。これらの独特の休暇は、社員の側から申請して取得する自発的なもの。休むためには、休む際の業務を誰かに引き継ぐ必要がある。

 「各種の休みを提供することで、多くの社員が自分に適した休みを取得しやすい環境を作っています。すると、休みの間にも仕事がきちんと回るように、日常的に仕事を引き継げるようにする必要が出てきます。引継書をきちんと作ったり、仕事の内容を整理して伝えたりする訓練ができるわけです。『この業務は誰々さんじゃないとできない』といった属人的な状況に陥ることがよくあります。休暇を多く設けることで、仕事の代替が効くようなオペレーションや仕事の割り振りを実践できるようにしています」

 さらに、業務改善の効果も狙う。他の人の業務にかかわることによって、無理や無駄を見つけて業務の棚卸しができるというわけだ。自分の中で抱え込んでしまったり、取り繕ってしまったりする部分を、他の人に引き継ぐことで異なる視点から改善できる。抱え込んだ挙句のリスク回避にもつながる。

 「仕事を自分で抱えていないと、自分が会社に求められていることを確認できず不安になる人もいるでしょう。でもツナグ・ソリューションズでは業務を平準化することで、そうした会社ではないことを伝え続けています。頻繁にジョブローテーションを行い、常に『コワして、ツクる』ことを考えるよう、意識を持ってもらっています。改善したことは次のステップにつながり、最終的にお客様に価値を提供することにつながるのです」

 ツナグ・ソリューションズが設けているユニークな休暇制度は、社員募集の際に目を引くことはもちろん、社員の業務改善から顧客満足度の向上にまで綿々とつながっている「意識改革」の旗印としての役割も大きく果たしているようだ。

text:Naohisa Iwamoto pic:Takeshi Maehara

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