2015.03.02

「知らなかった」では済まされない!36協定の基礎知識

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皆さんは「36(サブロク)協定って何?」と聞かれたら、正しく答えられますか?
「聞いたことはあるけど、正確にはなんだかわからない・・・」という方も多いのではないでしょうか。

36協定とは、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といいます。 労働基準法第36条が根拠になっていることから、一般的に「36協定」という名称で呼ばれています。そして、こちらがその用紙です。

労働基準法第36条には
「労働者は法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて労働させる場合や、休日労働をさせる場合には、あらかじめ労働組合と使用者で書面による協定を締結しなければならない」と定められています。

会社が法定労働時間以上の残業や法定休日出勤を従業員に課す場合には、本来は労使間で「時間外労働・休日労働に関する協定書」を締結し、別途「36協定届」を労働基準監督署に届け出ることになっています。(ただし、この「36協定届」に労働者代表の署名又は押印がある場合は協定書と届出書を兼ねることができます。)
しかも、就業規則の作成と届け出は常時10人以上の労働者を使用する使用者と規定されているのに対し、36協定は労働者がたった1人でも法定の労働時間を超えて労働(法定時間外労働)させる場合、又は、法定の休日に労働(法定休日労働)させる場合には、届け出が必要となります。その意味では全ての企業に影響する協定と言うことができます。

もしこの「36協定届」を労働基準監督署に届け出ずに従業員に時間外労働をさせた場合は、労働基準法違反となります。
ところがなんと平成25年10月に厚生労働省労働基準局が発表した調査によると中小企業の56.6%が時間外労働・休日労働に関する労使協定を締結しておらず、そのうちの半数以上が「時間外労働や休日出勤があるにも関わらず労使協定を締結していない」=「違法残業を課している」ということが判明しました。

厚生労働省 「平成25年労働時間等総合実態調査結果」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/shiryo2-1_1.pdf [ PDF 2.7 MB ]

最近では、従業員から未払い残業代を告発されたある有名企業の社長が、労働基準法や36協定を軽視した発言で世間を騒がせるといった事件も起きました。

企業間の競争が激化するなかで今や残業や休日出勤が全くない企業というのは珍しく、多くの企業にとってこの「36協定」は無視することのできない存在となっています。ただ、実情としては労働基準法の内容を正しく理解していないがために、意図せず違法残業を強いてしまっているケースも少なくないようです。
ということで、今回は経営者も従業員も「知らなかった」では済まされない「36協定」について、詳しく解説していきたいと思います。

「36協定」に関する疑問 その1

「36協定」の届け出をしていないと、必ず罰せられてしまう??

労使間で時間外労働・休日労働に関する協定の締結と「36協定届」が必要なのは

  1. 「法定労働時間」を超えた時間外労働を課す場合
  2. 「法定休日」に労働を課す場合

です。

では最初に「【1】『法定労働時間』を超えた時間外労働を課す場合」について確認をしてみましょう。
「法定労働時間」とは労働基準法で定められた労働時間の限度です。原則は1日8時間、1週40時間と定められています。それに対し、会社ごとに就業規則や雇用契約書で定めている労働時間を「所定労働時間」といいます。
「所定労働時間」は「法定労働時間」を超えて設定することは、原則(※1)できません。

※1 変形労働を使った場合は、所定労働時間が1日8時間、1週40時間を超えることもありえます

つまり法定労働時間を超えた時間外労働がある場合には、時間外労働・休日労働に関する協定を締結し、「36協定届」を届け出た上で残業や休日出勤を課すということになります。一方で「所定労働時間」が7時間で残業は1日1時間までという場合には、法定労働時間を超過しないので、労使協定の締結と36協定届の必要はありません。
例えば始業が9時で終業が17時、休憩1時間という就業形態の場合、1日の労働時間が7時間なので、残業が1時間以内であるという条件であれば36協定届の対象外です。ただし、残業が1時間を超える場合には36協定届が必要です。
ちなみに、法定時間内の残業は「法定内残業」と呼ばれます。


次に「【2】『法定休日』に労働を課す場合」についても確認してみましょう。

例えば所定労働時間が7時間、週休2日制の会社があったとします。今週は忙しかったので、土曜日に5時間だけ休日出勤を行いました。

曜日
労働時間 7時間 7時間 7時間 7時間 7時間 5時間

こういった勤務形態がある場合、「36協定届」は必要でしょうか?
答えは「NO」です。
上記の例の場合、週の労働時間は1週40時間という法定労働時間内に労働時間が収まっています。かつ、週休2日制で日曜日に休んでいる場合、土曜日の休日出勤は「法定外休日」の労働になるので、36協定届は必要ありません。

「法定休日・法定外休日」については、こちらのブログ記事をご参照下さい。
「振替休日」をとるか、「代休」をとるかでお給料が変わる!?――意外と知られていない「休日出勤」の仕組み
https://www.teamspirit.co.jp/catalyst/work-style/working-on-a-day-off.html

ということで、全ての従業員の労働時間が「法定労働時間」以内に収まっている場合、また法定休日の労働がないという場合には、時間外労働・休日労働に関する労使協定の締結および「36協定届」の届け出がなくても罰せられることはありません。

「36協定」に関する疑問 その2

「36協定」の届け出をしていたら、いくら残業させてもOKなの??

さてそうなると、36協定届さえきちんと届け出ていればいくらでも残業させられるの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
こちらも答えは「NO」です。
36協定においては、「1日」、「1日を超えて3ヵ月以内の期間」、「1年」のそれぞれについて、延長することができる時間を定めることができます。そし て協定の期間により、延長可能な時間には限度があります。(「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」により定めら れています)

●労働時間を延長できる限度

期間一般の労働者1年単位の変形労働時間制の対象者
1週間 15時間 14時間
2週間 27時間 25時間
4週間 43時間 40時間
1ヶ月 45時間 42時間
2ヶ月 81時間 75時間
3ヶ月 120時間 110時間
1年間 360時間 320時間

基本的には上記範囲内で時間外労働の上限を設定することになります。「基本的には」といったのは、実はこの上限設定には例外措置があります。例えば システムの大規模改修がある、またはある時期に受注が集中してしまうなどの場合、どうしても上記の限度時間を超えた残業や休日出勤が発生してしまうことが あると思います。
そのような場合は、「特別条項付の36協定届」の届け出をすることで、上記の限度時間を超えた延長時間を設定することができます。

具体的には36協定届の余白に
「一定期間についての延長時間は、1ヶ月45時間、1年360時間を限度とする。ただし、受注が集中して納品が間に合わないとき、システム不具合などの特 別な事情のあるときは、労使の協議を経て、1ヶ月80時間、1年630時間まで延長することができる。この場合、延長時間をさらに延長する回数は、6回ま でとする。なお、延長時間が1ヶ月45時間又は1年360時間を超えた場合の割増賃金率は25%とする」
というように、理由と延長時間を明記します。これにより、特別条項の範囲内で36協定届に記載された限度時間を超えることが可能になります。

ただし、この特別条項はあくまで臨時的措置であり、これが認められるのは年間で6ヶ月以下だということを覚えておいてください。

「36協定」に関する疑問 その3

「36協定」の届け出をしていたら、残業代は免除になる??

ちなみに労使間で協定を締結すれば残業代は免除されるのでしょうか?
もちろん「NO」です。
36協定届はあくまで「労働時間を延長しても良い」というものであり、残業代はしっかりと支払わなくてはなりません。
残業代の計算方法については、

  1. 法定内残業の場合:法内残業の時間×1時間あたりの賃金(円)
  2. 法定外残業の場合
    • 1ヶ月の時間外労働の合計が60時間まで:時間外労働の時間×1時間あたりの賃金(円)×1.25
    • 1ヶ月の時間外労働の合計が60時間を超える場合:超過時間×1時間あたりの賃金(円)×1.5(※2
  3. 法定休日労働の場合:法定休日労働の時間×1時間あたりの賃金(円)×1.35

となります。
※2 中小企業については現在猶予措置があり、1.25でも可です。

例えば、所定労働時間が7時間(始業が9時で終業が17時、休憩1時間)の会社で、時間単価が2,000円の社員が残業をした場合
※1 17:00~18:00の法定内残業:1(時間)×2,000(円)=2,000(円)
※2 18:00~20:00の法定外残業:2(時間)×2,000(円)×1.25=5,000(円)

計 7,000円が残業代となります。

「所定労働時間を何時間超えたか」ではなく、「法定労働時間を何時間超えたか」が残業時間や残業代計算の基準となるので注意が必要です。実は「法定労働時間」を正しく理解していないがために、残業代を正しく計算できていないケースがとても多いようです。
「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間をしっかりと理解することが、36協定を遵守し、未払い残業を防ぐ最初の一歩となります。

36協定届、正しく記入できていますか?

最後に、36協定届の作成方法について簡単に見てみましょう。

  1. 下記【2】に該当しない労働者
    「1年単位の変形労働時間制」の対象ではない従業員について記入します。
  2. 1年単位の変形労働時間制により労働する労働者
    「1年単位の変形労働時間制」とは、1ヵ月を超え1年以内の期間を平均して1週間当たりの法定労働時間(40時間)を超えない範囲で、特定の日または特定の週の労働時間について法定労働時間を超えることができる制度です。
    この対象となる従業員について記入します。対象者がいない場合は記入する必要はありません。
    ちなみに、1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、この届けの他に「1年単位の変形労働時間制に関する協定届」をも届け出る必要があります。
  3. 所定労働時間
    会社の就業規則や雇用契約書に記載されている労働時間を記入します。
  4. 延長することができる時間 「1日」
    法定労働時間を超えて、延長する時間を記入します(所定労働時間を超えた時間ではありません)。
  5. 延長することができる時間「1日を超える一定の期間(起算日)」
    協定期間と限度時間を記入します。例)「1ヶ月(毎月1日) 40時間」、「1年(4月1日) 300時間」など
  6. 期間
    協定の有効期間を記入します。 例)「平成26年4月1日から1年間」など
  7. 所定休日
    会社の就業規則や雇用契約書に記載されている休日を記入します。
  8. 労働させることができる休日並びに始業及び就業の時刻
    法定休日のうち、休日労働をさせる日数を記入します。

最後に、36協定届は一度労働基準監督署に届け出ればOKなのでしょうか?

この答えも「NO」です。
36協定届の有効期間は最長でも1年間とすることが望ましいという指導方針が出されています。ちょっと面倒だな、と思われるかもしれませんが、本来時間外労働については労務管理の面から考えても、コスト面を考えても必要最小限にとどめるべきもの。
もうすぐ年度末がやってきますが、新年度の36協定届作成のためにも是非一度社員の勤務状況を確認し、残業や休日出勤について見直してみてはいかがでしょうか。

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