2016.05.26

ポストモダンERP 基礎講座④
「デジタル・ビジネス」時代に求められるポストモダンERPの事例とは?
~「ガートナー エンタープライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット2016」イベントレポート その2~

~「ガートナー エンタープライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット2016」イベントレポート その2~" data-hatena-bookmark-layout="standard-balloon" data-hatena-bookmark-lang="ja" title="このエントリーをはてなブックマークに追加">このエントリーをはてなブックマークに追加
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近年、デジタルテクノロジーを「業務支援」としてではなく、ビジネスの「コア」に位置づける動きが高まっています。これが前回ご紹介した「デジタル・ビジネス」です。
テクノロジーを介することで伝統的な産業が新たな産業へと大きく生まれ変わっている今、企業はどのようなアプローチでビジネスのデジタル化を進めていけばよいのでしょうか。

■「バイモーダルIT」という考え方

ガートナー社は「デジタル・ビジネス」時代に必要とされる企業のIT戦略の方針として「バイモーダルIT」(バイモーダル=2つの流儀)という新しいアプローチを提唱しています。

これまでのように「業務の効率化」や「データの統合」を目的として社内システムを導入してきた時代には、安全性・整合性などが最重視されてきました。従来のERPがここまで成長してきたのも、こういった点が高く評価されてきたからだといえるでしょう。もちろん堅牢なシステムの重要性は今後も変わることはありません。しかし「デジタル・ビジネス」時代には、これに加えて「変化する世の中のニーズに柔軟に対応する」、「ITを中心としてビジネスモデルを革新する」ことを目指したIT戦略を考えていく必要があります。

つまりITを導入する目的に応じて、従来の信頼性を重視した堅牢なシステムを構築するというアプローチ(モード1)と、多少の問題があってもまずはサービスインし、改良を重ねながらブラッシュアップしていく俊敏性を重視したアプローチ(モード2)を切り分ける必要があるということです。このようにIT部門が異なる2つのスタイルを両立させながらIT戦略を考えていくことが「バイモーダルIT」の基本的な概念です。

どの部分を「モード1」もしくは「モード2」でアプローチしていくかは、企業やビジネス部門の戦略によって変わるため、一概にいうことはできません。ただ、これまでのように全てに関して堅牢なシステムを構築しようとするのではなく、「デジタル・ビジネス」に直接関わる領域についてはマーケットのニーズに迅速かつ柔軟に対応できるようなリーン・スタートアップの手法を採用し、トライアンドエラーを繰り返しながらブラッシュアップする姿勢を持つことが重要だということです。

さて、この「バイモーダルIT」は「デジタル・ビジネス」時代のERPトレンドである「ポストモダンERP」の考え方にもつながっていきます。そして自社に適したERP戦略を考えるヒントを示してくれたのがガートナー社の本好宏次氏の講演です。

【講演レポート】「ERPトレンド2016:彼を知り己を知れば百戦危うからず」 
ガートナーリサーチ リサーチディレクター 本好宏次氏

「ポストモダンERP」の導入を孫子の「兵法」に喩えて考えるという、とても面白い講演でした。

「彼を知り己を知れば百戦危うからず」というのは兵法の「謀攻編」に書かれた格言で、「敵の実力や現状をしっかりと把握し、自分自身のことをよくわきまえて戦えば、なんど戦っても、勝つことができる」という意味です。
本好氏はここでの「彼」を「ベンダー」、「ERPそのもの」、「他社事例」としています。

①ベンダーを知る

ERP戦略を考えるうえで最も重要なことはベンダーを知ることです。そのためにも、まずはERP市場を把握することが大切だと本好氏は語っていました。ここで注意しなくてはならないのは、ベンダーシェアではなく製品シェアを見ること。さらに製品シェアは各製品が対象とする企業規模によって変わってくるので、自社の規模や目的に合ったセグメントでマーケットを見ることが重要だということでした。

製品選定においては、ベンダーとの相性も考慮しなくてはいけません。そのためにもベンダーの満足度調査や事例紹介もチェックしておくことを本好氏は推奨していました。満足度調査では、自社が比重を置く項目を決め、その項目で満足度が高いかどうかを確認することがポイントです。

②ERPそのものを知る――ERPとは何かを理解し、ERPの向かう先を知る

「そもそもERPとは何か」を理解することも重要です。さらに、ERPが今後どのように進化していくかを知り、そのうえでどの部分を従来のERPで管理して、どの部分をERP以外のシステムで管理するのかを考えることが「ポストモダンERP」戦略の成功の鍵だということでした。

※ERPとは何か、ポストモダンERPとは何かについては、こちらのコラム(https://www.teamspirit.co.jp/catalyst/work-style/postmodern-erp.html)をご参照ください。

③他社事例を知る

もうひとつ重要なことは他社事例を知ることです。
とくに先進的な事例、新たなテクノロジーや手法を実践している事例はしっかりとチェックしておく必要があります。
どのような背景でERPの刷新を考えたのか、どのような理由で、どのようなソリューションを選んだのか、そしてどのような結果に至ったのか、さらにはその企業ならではの独自の工夫がどのようなところにあったのかについて知ることが、自社のERP戦略を考えるうえで大きなヒントとなるということでした。

以上の3点を踏まえたうえで、カスタマイズを増やしすぎずにできるだけ短期導入を目指す。そしてクラウド活用に向けた将来的なシナリオを描く。これが「ポストモダンERP」を成功に導く秘訣だと本好氏は締めくくりました。

さて最後に「他社事例」として、株式会社白組の講演から「ポストモダンERP」の実践事例を紹介したいと思います。

【講演レポート】「実践事例:クリエイター集団の底力を引き出すERPフロントウェア」 
株式会社白組 システム部長 鈴木勝氏

株式会社白組は、「永遠の0」、「ALWAYS 三丁目の夕日」、「STAND BY ME ドラえもん」などの映画をはじめ、ゲーム・CMなどのさまざまな映像作品を手がけるトップクリエイター集団です。
1974年に設立された同社は、CGが一般的になるずっと前からデジタル技術を使った映像制作に先駆的に取り組み、デジタルアニメーションの旗手としてテクノロジーの進化とともに成長を遂げてきました。まさにアニメーション産業のデジタル・ビジネス化に大きく貢献してきた存在です。

そんな同社は「ポストモダンERP」を3年前から実践し、クリエイター達のハイパフォーマンスな働き方を実現しています。
白組ではひとりのクリエイターがいくつものプロジェクトを掛け持ちしています。プロジェクト数も非常に多く、クリエイターたちは複数の制作拠点を行き来しながら仕事をしているため、プロジェクトごとに工数や経費を集計することが非常に大変だったそうです。日報・交通費精算・稟議などもバラバラのシステムで動いており、日々の入力業務も煩雑になっていました。

そんな複雑な業務を効率化し、プロジェクトごとに色々な情報をまとめて見られるようにしたいという理由から、3年前にTeamSpiritを導入しました。

クリエイターというと職人気質で感覚的なものづくりをする印象があるかもしれませんが、実際の制作現場では、各工程が細分化されており、緻密な計算のもとでスピーディーにプロジェクトを遂行することが求められます。

TeamSpiritを導入し、それぞれのプロセスにかかる工数を視覚化することで、クリエイター一人ひとりが効率的な働き方を意識するようになったと語る鈴木氏。さらに「申請」・「却下」・「許可」といった稟議のフローにおいても、ルールに則って素早く適切に判断できるようになったということです。
申請処理が簡単になったことから、定期代の変更や住所の変更など、さまざまな手続きをクリエイター側から事前にしっかりと申請してくるようになってというのも大きな変化だと鈴木氏は話していました。

もうひとつの特徴として、既存のERPとTeamSpiritとを連携させたうえで給与計算などを実行しているという同社。すべてのデータを集約して管理するとシステムが肥大化しシステムの入れ替えも大変になってしまうことから、同社ではデータをTeamSpiritで集め、集約した情報をバックエンドのERPに送るなど、「連携」を意識したIT戦略を行なっています。
先に説明した「バイモーダルIT」のコンセプトに置き換えると、既存のERPは堅牢性を重視した「モード1」、ERPのフロントエンドとして採用したTeamSpiritは俊敏性・柔軟性を重視した「モード2」となります。まさにポストモダンERPの考え方に則したアーキテクチャを実現しているといえるでしょう。

TeamSpirit導入の決め手は、コスト削減というよりも、人が考える時間を増やせることだったという鈴木氏。TeamSpirit導入前と導入後の変化のなかで、社員各自が業務の効率化やよりクリエイティブな働き方について積極的に考え始め、管理する側も管理される側も相互に自己管理する、そんな社風が新たに生まれたというのが、何よりもうれしい結果だと語っていました。

既存のビジネスモデルやビジネスプロセスを変革するであろう「デジタル・ビジネス」は人々の働き方にも大きな影響を与えます。「デジタル・ビジネス」時代には、人間がよりクリエイティブに働くことが求められることは間違いないでしょう。そのための仕組みづくりも非常に重要です。
TeamSpiritの導入後、日々の仕事における一人ひとりの小さい改革が大きなパワーを生みだすことを実感しているという鈴木氏の言葉がとても印象的でした。


さて、「ポストモダンERP戦略」の一環として、今後多くの企業が選択していくことが予想されるサービスがあります。それが、独立系の第三者保守サービスです。
今回のイベントでも登壇された日本リミニストリート株式会社は、エンタープライズ・ソフトウエア向けの保守サービスをベンダーの半額で提供する日本唯一の企業です。講演を聞いて、とても興味がわいたので、取材して参りました!

次回はリミニストリート日本支社長の脇阪順雄氏のインタビューをお届けしたいと思います。

「ポストモダンERP」基礎講座

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