2016.10.17

長時間労働を抑制する「勤怠管理」の基本(4)
~1ヶ月単位の変形労働時間制~

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「変形労働時間制」を活用した労働時間の最適配分を考える

労働基準法では原則として1日8時間、1週40時間(特例措置対象事業場は週44時間)という労働時間が定められています。恐らく多くの会社が所定労働時間を労働基準法の枠内ぎりぎり、つまり「1日8時間・1週40時間・週休2日」と設定しているのではないでしょうか。

ただ日々の労働時間をこの枠におさめるというのは難しい場合も多く、過剰な時間外労働はいまだに大きな社会問題となっています。

最近では生産性向上やワークライフバランスの実現を目指し、労働時間の削減に力を注ぐ企業も増えています。しかし労働時間を削減すればすべてが解決するか、というとそうではなさそうです。

例えば「残業を認めない!」という雰囲気が強すぎるあまりに結局仕事を持ち帰り、目に見えないところでサービス残業が増えてしまうということも考えられますし、労働時間が減ることでアウトプットの質や量そのものが低下してしまう可能性もないとはいえません。

短い労働時間で高い成果をあげるということは、単に労働時間を減らすことを意味するわけではありません。高パフォーマンスを実現できるような労働時間の最適配分、つまり「休むときは最大限休む、働くときは最大限働く」というような環境を整えることも選択肢のひとつとして重要ではないでしょうか。

実は労働基準法では、さまざまな業務・業態に合わせて労働時間の考え方に融通を利かせられるような制度が用意されています。そこで活用できるのが、今回ご紹介する「変形労働時間制」です。

「変形労働時間制」とは?

「変形労働時間制」とは、ある一定期間において、週あたりの平均労働時間が週法定労働時間(1週40時間《特例措置対象事業場は44時間》)の枠内に収まっていれば、1日もしくは1週の法定労働時間の規制を解除することが認められる制度です。

例えば繁忙期には連日連夜と残業が続く一方で、閑散期には大して仕事もないのに8時間職場にいないといけない......など時期によって仕事量が大きく変動する企業において、時期ごとに所定労働時間を長くしたり短くしたりすることで労働時間を最適配分できるというのがこの制度です。結果として全体の労働時間を短縮や割増賃金コストを削減することができます。

「変形労働時間制」には、以下の4つの制度があります。

① 1ヶ月単位の変形労働時間制
② 1年単位の変形労働時間制
③ フレックスタイム制
④ 1週間単位の非定型的変形労働時間制

1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月以内の一定期間を平均して、1週当たりの労働時間が法定労働時間(1週40時間、特例措置対象事業場は44時間)の範囲内であれば、特定の日に8時間、特定の週に40時間(特例事業場は44時間)を超えて働かせることができる制度です。

上記の条件にあてはまる限り、1日8時間、1週40時間(特例事業場は44時間)を超えた労働時間を時間外労働として取り扱う必要がありません。

例えば下図のように

  • 1日の所定労働時間が7時間
  • 週休2日制
  • 月末に業務量が大幅に増加する

という場合、

1週目から3週目は1週40時間働けるところを35時間しか働いていないのに、4週目には10時間、5週目には4時間の法定時間外労働が発生しています。その結果、月全体として7時間の所定時間外賃金(法定時間内残業。割増なし)と14時間分の割増賃金(法定時間外残業。割増あり)の支払いが必要となっています。

しかし「1ヶ月単位の変形労働時間制」を導入した場合、下図の通りに「1ヶ月以内の一定期間を平均して1週当たりの労働時間が法定労働時間の範囲内」である限り、1日・1週あたりの法定動労時間を超過していても時間外労働とはなりません。

週40時間を達成するための労働時間の総枠 = 週40時間×変形期間の暦日数÷7日

1ヶ月の日数労働時間の総枠
31日 177時間
30日 171時間
29日 165時間
28日 160時間

上図の事例では1ヶ月の日数が31日・総労働時間は175時間です(※3)。暦日数が31日の労働時間の総枠177時間以内に収まっているため、4週目・5週目の労働に関しても割増賃金の支払いの対象とはなりません。

ファーストリテイリング社の事例

ファーストリテイリング社では、ユニクロの店舗で働く社員を対象に、希望に応じて週休3日制を選べる制度を導入しています。

【ファーストリテイリング社の週休3日制度】

  • 原則として来客の多い土日を含む週4日働き、平日に3日休む
  • 出勤日の労働時間は1日10時間

こちらも1週40時間以内という条件を満たしているので、平日の10時間労働も割増賃金の対象とはなりません。

「変形労働時間制」を採用すれば、このような仕組みを実現することも可能です。従業員の皆さんも「忙しいときにはしっかりと働き、休むときには徹底的に休む」というメリハリのある働き方ができているのではないでしょうか。

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入する際の手続き

さて「1ヶ月単位の変形労働時間制」を導入する際には、労使協定の定めまたは就業規則などの定めが必要となります。労使協定または就業規則などに規定する事項は、以下の通りです。

(1)対象労働者の範囲

(2)対象期間および起算日
 例:毎月1日を起算日とし、1ヶ月を平均として1週40時間以内とする。
 なお対象期間は1ヶ月以内に限られますが、必ずしも1ヶ月ジャストである必要はなく、2週間単位、4週間単位でもかまいません。

(3)労働日および労働日ごとの労働時間
 例:

始業時刻終業時刻休憩時間
1日から24日まで 午前9時 午後5時 正午から午後1時まで
25日から月末まで 午前9時 午後8時 上記に同じ

(休日) 休日は、毎週土曜日および日曜日とする。

(4)協定の有効期間
 例:本協定の有効期間は、平成○年○月○日から平成○年○月○日とする。
※労使協定に基づく場合には、書面協定を締結し、労働基準監督署に届ける必要があります。

1ヶ月単位の変形労働時間制における時間外労働の考え方

もちろん1ヶ月単位の変形労働時間制を採用したからといって、時間外労働がなくなるわけではありません。どこからが時間外労働になるかについては、次のように考えることが行政解釈で示されています。

(1)1日については、就業規則などにより8時間を超える所定労働時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

(2)1週間については、就業規則などにより法定労働時間を超える時間を定めた週はその時間、その他の週は法定労働時間を超えて労働した時間(1で時間外労働となる時間は除く)

(3)変形期間(1ヶ月以内で定めた期間)については、変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(1または2で時間外労働時間となる時間を除く)

時間外労働に関する具体例については、こちらに詳しい解説が掲載されています。是非ご参照ください。

厚生労働省リーフレット 「1か月単位の変形労働時間制」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-2.pdf

次回は、「1年単位の変形労働制」について整理してみたいと思います。



長時間労働を抑制する「勤怠管理」の基本

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