企業で働く人にとって、もっとも身近な休暇といえば有給休暇ではないでしょうか。一方で、職場に休める雰囲気がなく「有給休暇を取りづらい」と感じている人も多いかもしれません。
欧米諸国と比較すると、日本の年次有給休暇取得率はとても低く、厚生労働省の「就労条件総合調査 結果の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaikyou.pdf)によれば、日本の有給休暇消化率は51.1%にとどまっています。
取得率を企業規模別にみると、 「30〜99 人」が 44.3% 、「宿泊業,飲食サービス業」が 32.5%と最も低くなっており、深刻な人手不足が有給取得を妨げる大きな理由になっていることが感じられます。

 このような現状に歯止めをかけるべく、2019年4月に施行された「働き方改革法」では、使用者は10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対し、毎年5日間、時季を指定して年次有給休暇を取得させることが義務づけられました。

有給休暇は管理業務が煩雑になりがちで、誤って運用されているケースも多いようです。しかし、有給休暇の取得が罰則つきで義務化されることにより、制度の内容を正しく理解・運用することが、すべての企業にとって必要不可欠となりました。
ここでは有給休暇の基本的な内容と、法律改正により企業が対応しなければならないことについて整理してみたいと思います。

有給休暇の基本

労働基準法では、年次有給休暇は

・労働者が6ヶ月間継続勤務している
・その6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤している場合
・10労働日の有給休暇

を付与しなければならないことになっています。

労働基準法では、年次有給休暇は入社日を基準にして、勤続年数に応じた日数を付与するように定められています。一般的には有給休暇が発生するのは早くとも入社6ヶ月経過後になります(例外については、後ほど紹介します)。

年次有給休暇の付与日数は、最初に10労働日与えた後は、継続勤務年数1年ごとにその日数に1労働日ずつ加算した日数を付与しなくてはいけません。さらに3年6ヶ月からは2日ずつ増え、6年6ヶ月になると労基法上の最多付与である20日となります。

年5日の年次有給休暇の取得が、企業に義務づけられます。

 2019年4月1日に施行された「働き方改革関連法」では、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、そのうち5日について、基準日から1年以内の期間に、使用者が労働者ごとにその取得時季を定めて年次有給休暇を取得させることが使用者に義務づけられます。使用者が取得時季を定める際には、当該労働者の意見を聴かなくてはなりません。

 また本制度の開始に伴い、使用者は「年次有給休暇管理簿」を作成することが義務づけられます。この管理簿では、労働者ごとに①年次有給休暇の取得時期 ②取得日数 ③基準日を記録しておく必要があります。

ちなみに初回の休暇付与を前倒しした場合、次年度の有給休暇の付与日は前倒しした日が基準になります。

※リーフレット 「働き方改革〜一億総活躍社会の実現に向けて」 -厚生労働省 
https://www.mhlw.go.jp/content/000335765.pd

上記の場合、使用者は2019/10/1〜2020/9/30の1年間に年5日の取得時季を指定しなければなりません。

 年5日の取得義務については、すでに労働者自身が5日以上の時季指定をしている場合(自ら有給休暇を取得している場合)には、使用者がそれ以上の時季指定をする必要はありません。5日に満たない場合には、合計で5日に達するまで、使用者が時季指定する必要があります。

 また「計画的付与制度」(※1)を利用している場合には、この制度で取得した有給休暇日数が取得義務の日数としてカウントされます。計画的付与制度による取得日数が5日より少ない場合のみ、使用者は合計で5日に達するまで時季指定する必要があります。

※1 計画的付与制度:年次有給休暇のうち、5日を超える分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のことをいいます。 「企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方法」、「班・グループ別の交替制付与方法」、「年次有給休暇付与計画表による個人別付与方法」などさまざまな方法で活用されています。 年次有給休暇のうち5日は、個人が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければなりません。

有給休暇付与の「基準日」とは?

労働基準法では、入社日を基準にして年次有給休暇を付与するよう定められています。労働者の入社日が異なれば、当然有給休暇が発生する基準日も異なります。そうすると管理が非常に煩雑になってしまうため、通達によりすべての労働者に対して有給休暇付与の「基準日」を統一し、一斉付与することが認められています。法律改正後は、この「基準日」が有給休暇管理の大きなポイントとなります。

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