2016.10.25

長時間労働を抑制する「勤怠管理」の基本(10)
~有給休暇~

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年次有給休暇に関するさまざまな疑問

さて企業で働く人にとって、もっとも身近な休暇といえば有給休暇ではないでしょうか。しかし、管理が煩雑になりがちなため、正しく理解せずに運用してしまっているケースも多いようです。ここでは有給休暇の基本的な内容について整理してみましょう。

○有給休暇は何日付与しなくてはいけないの?

労働基準法では、年次有給休暇は

  • 労働者が6ヶ月間継続勤務している
  • その6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤している

この場合に、10労働日分の有給休暇を付与しなければならないことになっています。つまり、一般的には有給休暇が発生するのは早くとも入社6ヶ月経過後になります(例外については、後ほど紹介します)。

年次有給休暇の付与日数は、最初に10労働日与えた後は継続勤務年数1年ごとにその日数に1労働日ずつ加算した日数を付与しなくてはいけません。さらに3年6ヶ月からは2日ずつ増えて、6年6ヶ月になると労基法上の最多付与である20日となります。

(図1)

○入社直後の社員にも有給休暇を付与することはできないの?

先述した通り、一般的に有給休暇が付与されるのは入社6ヶ月経過後になりますが、労働基準法では「分割付与」という方法が認められています。

・分割付与

初年度の有給休暇の一部を前倒しして(入社6ヶ月後以前に)付与し、6ヶ月後に残りを付与するという方法です。例えば入社のタイミングで3日の有給休暇を付与し、6ヶ月後に残りを付与するということができます。

ちなみに初回の休暇付与を前倒しした場合、次年度の有給休暇の付与日は前倒しした日が基準になります。

(図2)

さらに、会社独自の取り組みで、入社直後に有給休暇を付与することも可能です。というのも、労基法は最低基準を定めたものなので、法定の付与日数を上回る日数を付与することには、なんの問題もないからです。なかには、福利厚生の一貫として入社直後から有給休暇を付与することを採用時のアピールポイントにしている企業もあるようです。

○パートやアルバイト社員にも有給休暇を付与しなくてはいけないの?

「パートタイマーやアルバイトには、有給休暇なんてない!」と信じている経営者の方もいるかもしれませんが、それは誤りです。パートやアルバイトのような短時間労働者(※3)に対しても有給休暇の付与義務があります。

パートタイム労働者の年次有給休暇の付与日数は、週の所定労働時間や所定労働日数により、次のように定められています。

<週所定労働時間が30時間以上の場合>

通常の労働者と同じ日数 (図1参照)

<週所定労働時間が30時間未満、かつ所定労働日数が週5日以上《年間217日以上》の場合>

通常の労働者と同じ日数 (図1参照)

<週所定労働時間が30時間未満、かつ所定労働日数が週4日以下《年間216日以下》の場合)

1週間または1年間の所定労働時間に応じて付与(下図3参照)

(図3)

(※3)短時間労働者とは、週所定労働日数が4日以下、または年所定労働日数が216日以下でなおかつ週所定労働時間が30時間未満のものを指します。

○社員の入社日がバラバラで、有給休暇の付与日や日数を管理するのが大変!簡単に管理できないの?

有給休暇制度の大きな悩みとして、管理が非常に煩雑だということが挙げられます。労働者の入社日が異なれば、当然有給休暇が発生する基準日も異なるため、個別に管理するのはとても大変です。労働基準法では管理を省力化するために、すべての労働者に対して、年次有給休暇が発生する基準日を統一し、一斉付与することが認められています。

<一斉付与方式>

年に1度(4/1など)の「基準日」を設け、その日が到来するたびに労働者に対して有給休暇を付与することができます。

(図4)

<個別付与と一斉付与の違い>

【個別付与】※入社日を基準に有給休暇を付与
入社日:2016/1/1
最初の有給休暇発生日:2016/7/1(入社から6ヵ月後)に10日付与
2回目の有給休暇発生日:2017/7/1(入社から1年6ヵ月後)に11日付与

【一斉付与】※全社員の有給休暇発生基準日を4/1とする
入社日:2016/1/1
最初の有給休暇発生日:2016/4/1に10日付与
2回目の有給休暇発生日:2017/4/1(入社から1年3ヵ月後)に11日付与

○半日単位、時間単位で有給休暇を取得することはできる?

年次有給休暇は原則として1日単位で付与することとされていますが、半日単位や時間単位での取得も差し支えないものとしています。

時間単位の取得には、

  • 取得できる日数は1年につき5日以内
  • 1時間に満たない端数は切り上げる(所定労働時間が7時間30分の場合、時間単位の有給休暇は1日8時間として計算)

などのポイントに注意する必要があります。詳しくは、こちらをご参照ください。

厚生労働省 「年次有給休暇の時間単位付与」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/dl/tp1216-1l-04.pdf

○有給の半休を取った日に所定の就業時間を超えて勤務してしまったら、残業代は支払わなくてはいけないの?

例えば以下のような場合、残業代を支払う必要があるのでしょうか?

  • 就業時間 朝9時~午後6時(休憩1時間)の8時間
  • 午前中に半日の有給休暇を取得
  • 午後1時に出社し、午後7時まで勤務

通常であれば、就業時間を超えた午後6時からの1時間には残業代が支払われますが、この場合は半休を取得しており、労働時間は6時間です。所定労働時間の8時間を超えていないので、残業代の支払いは必要ありません。

○有給休暇は、希望するときにいつでも取ることができる?

有給休暇には「許可」や「承認」といった概念はありません。つまり企業は、労働者から休暇を申請されたら拒否することができません。さらに、有給休暇の取得理由も聞いてはいけないことになっています。

ただし、企業には「時季変更権」があり、繁忙期など、有給休暇を取得されると事業の正常な運営が妨げられるような場合には、使用者が他の時期に変更するように依頼することが認められています。

○1年で使い切れなかった分の有給はどうなる?

労働基準法では、年次有給休暇の権利は基準日から起算して2年間とされており、前年度に使い切らなかった有給休暇は本年度に繰り越すことができます。つまり本年度利用できる年次有給休暇は、昨年の繰越分と、今年新しく付与される分の合計となります。

そこで問題となるのは、今年度分と繰越分のどちらを先に消化していくか、ということです。法律上は明確な定めがないため、就業規則や労働協約にルールを定めておくか、特別の定めがない場合は、繰越分から先に消化する方法が一般的とされています。

では、繰越分から消化する方法と、今年度分から消化する方法ではどのような違いがあるのでしょうか。

(例) 2015年度からの繰越分 10日 2016年度付与 11日 2016年度に7日使用

<繰越分から消化する場合>

2017年度の有給休暇合計は

11日(2016年度からの繰越) + 12日(2017年度に新たに付与される日数) = 23日

※使用した7日分は2015年度分を消化しているので、2016年度分はまるまる翌年に繰り越すことができます。

<本年度分から消化する場合>

2017年度の有給休暇合計は

11日(2016年度からの繰越) - 7日(2016年度消化分)+ 12日(2017年度に新たに付与される日数) = 16日

このように本年度と前年度のどちらを先に消化するかによって、有給休暇の残日数に大きな違いが生じます。「あるはずの有給休暇がない!!」ということにならないよう、是非、就業規則などのルールをしっかりと定め、社内に周知するようにしましょう。

○退職する社員に「残っている有給休暇を会社に買い取ってもらいたい」と言われたら、どうしたらいい?

年次有給休暇は、原則として買い取ることはできないものとされています。ただし、次のような場合には例外として買い取りが認められています。

<法定を上回る日数の有給休暇>

会社独自の制度で、法定以上の有給休暇を設定している場合、法定日数の超過分については買い取りが認められています。

<時効によって消滅してしまった有給休暇>

2年以上前の、事項によって消滅してしまった分の有給休暇であれば買い取りが可能です。

<退職・解雇によって有給休暇が消滅してしまうことが明らかとなった場合>

退職予定者が有給休暇をすべて消化してから退職するということがよくありますが、企業はこれを拒否することはできません。また、消化しきれなかった分を買い取ることも認められています。

もちろん買い取りは企業の義務ではありませんし、買い取りの金額も自由に設定することができます。どのように対処するかは企業の自由ですが、労使間でトラブルにならないような制度や仕組みをしっかりと明文化しておくことが重要です。

次回は休暇に関する、国や企業のさまざまな取組について、ご紹介します!



長時間労働を抑制する「勤怠管理」の基本

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