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求職者が会社選びの条件としてあげるのは、主に職種や業務内容、待遇などが中心です。しかし、仕事では「どんな業務をするのか」「何を成し遂げるか」「どれくらいの給与がもらえるのか」と同様に、「どれくらい働きやすいか」という点にも目を向けるべきでしょう。そして、働きやすい環境を重視するのであれば、「福利厚生」の充実が欠かせません。

従業員の働きやすさやワークエンゲージメントを高める施策は、企業の魅力に直結すると言っても過言ではなく、会社選びの際に福利厚生を重視する人も多いでしょう。そうした背景があるだけに、企業は従業員の生活の質や満足度の向上に着目し、福利厚生の充実をより図っていくべきだと言えます。では従業員が喜ぶ福利厚生とは、どんな内容なのでしょうか。求職者に選ばれる会社になるための福利厚生の施策について紹介します。

改めて整理しておきたい「福利厚生」の基本

福利厚生とは、従業員とその家族の生活・健康の質向上を目指したサービスの総称です。「福利」は幸福や利益、「厚生」は豊かな生活を意味します。その特徴としては、賃金などの基本的労働条件は含まれておらず、企業が従業員やその家族の福祉向上のために行う施策である点です。

福利厚生を設けることで、従業員の仕事に対するモチベーションをアップさせ、企業へのロイヤリティ(忠誠心)を育むことで、企業への定着率の向上を目指します。また、既存の従業員はもちろん、社外から見た企業の魅力を高めることで、労働市場から優秀な人材を採用する要因にもなり得ます。

福利厚生を管轄している部署とは

福利厚生を担当している部署は企業によって異なるのが一般的であり、"福利厚生部"のような独立した組織で成り立っているケースは珍しいのが特徴です。多くの企業ではバックオフィス領域である総務人事が担当しているケースが多いと言えるでしょう。

福利厚生は企業全体に関わる内容なので、担当者は経営陣とやりとりする機会も増えます。多くの従業員に広範囲に関わる重要な役割でもあるため、非常にやりがいがある仕事です。従業員の望む福利厚生を導入するだけでなく、実現にはどれほどのコストがかかるのか、会社への影響はどれくらいなのかを試算するなど会社全体を俯瞰して見る視点が重要になります。

福利厚生が採用に与える影響

求職者が企業を選ぶ際の条件はさまざまですが、実際に福利厚生はどれほど重視されているのでしょうか。転職サービス大手の株式会社マイナビの「2019年卒 マイナビ大学生広報活動開始前の活動調査」概要によると、「企業選びで最も注目しているポイント」に関して「人間関係」(13.8%)や「経営の安定」(13.1%)を上回り、「福利厚生」が14.3%で1位でした。

福利厚生が採用に与える影響

上記からも事業内容や業績・給与などと同じように、ライフスタイルや従業員の満足度を高めるための手助けとなる福利厚生の充実が、求職者が企業を選ぶ際の重要な検討材料になっていることが分かります。つまり、福利厚生が整っていないと就職・転職先として不安に思う人も多いということです。

福利厚生は大きく分けて 2 種類ある

一口に福利厚生と言っても、実はその種類は大きく2つに分類されます。法律で義務づけられている「法定福利」と、会社独自に定めている「法定外福利」です。それぞれの違いや特徴について確認しましょう。

その1:法定福利

「法定福利」とは、従業員とその家族の健康維持や生活の安定のために、法律的に義務づけられている社会保障制度です。法定福利にかかる支出は法定福利費と呼ばれ、損益計算上では「「販売費及び一般管理費」となります。そのため、基本的には課税対象として扱われません。法定福利は主に社会保険料を指しており、会社が従業員と折半して半額を負担します。

その2:法定外福利

法定福利に対して、会社独自で実施している福利厚生が「法定外福利」です。多くの場合、課税対象となりますが、法定福利に比べて自由度が高く制度の種類も豊富です。法定福利とは異なり義務ではないので、企業が導入するのは従業員の満足度を上げることが目的となります。

企業が任意で提供できる法定外福利は、その企業のカラーが反映されます。そのため、住宅手当や交通費などの代表的なものに加え、その企業ならではのユニークな福利厚生を導入するケースもあるのです。例えば、発電事業を行う会社が太陽光発電システムの購入補助をしたり、スノーボード用品メーカーがスキー場のリフト券の一部を補助したりするなどの事例があります。ユニークな福利厚生に注目が集まることで、自社ブランディングや採用力の強化につながることが期待できます。

法定福利に含まれる社会保障とは

法定福利で社会保障が義務づけられているのは、従業員が安心・安全に働くうえでそれらが不可欠だからです。では具体的にはどんな内容の社会保障なのでしょうか。

その1:健康保険

健康保険は従業員の加入が義務付けられている保険であり、入社と同時に従業員と扶養される家族が加入することになります。加入者が病気やケガで治療を受けた際に、治療費の7割を負担してくれる他、病気やケガで休業した時や出産、死亡時にも保険給付を受けられる制度です。

その2:厚生年金

国民年金に上乗せされて給付される年金です。入社時に自動的に加入手続きが行われ、退職する満70歳になるまで加入し続けることになります。厚生年金保険料の50%は会社が負担してくれるので、残りの50%が毎月給与から自動的に天引きされて積み立てられていきます。保険料は給与によって異なり、月収30万円で月額22,000円程度が目安です。

その3:労災・雇用保険

労災保険とは勤務時間中、もしくは通勤中などに事故に遭うなどして従業員がケガ、もしくは死亡した際に保障してくれる制度です。保険料は全額会社負担となりますが、食事休憩中などは対象にならないケースがあるので注意しましょう。雇用保険は、労働者の生活や雇用の安定、就業促進を目的としており、労働者が失業して収入源を失った際に給付金を受けられる制度です。失業給付金のほか、育児休業給付金や介護休業給付金なども、雇用保険から支払われます。

法定外福利は 7 種類に分類される

法定外福利はいわば企業が任意で行っている福利厚生なだけに、その内容は非常にバラエティに富んでいます。種類は大きく7つに分類されるので、それを把握するだけでもどんな福利厚生があるのかの大まかな理解につながるでしょう。

その1:住宅

従業員への住宅手当や社員寮、借り上げ社宅などが該当します。法定外福利費用の中でもその多くを占め、全体の福利費用の約半分を占めます。社員寮にするための「雇用促進住宅」という物件もあり、相場の1/3ほどの家賃で借りられます。現在は民間企業や各自治体が運用しているので、従業員の家賃負担を抑えるために社宅を検討している方は探してみましょう。

その2:医療

健康診断費や人間ドックへの補助、医務室・診療所等の運営費などヘルスケアサポートが含まれる福利厚生です。2015年の12月から50名以上の事業所でストレスチェックの実施が義務づけられたことで注目を集めています。最近では、経済産業商と東京商圏取引所が「健康経営銘柄」を選定したり、日本政策投資銀行による「DBJ健康経営格付」が融資制度に加わったりと、官民一体となって健康経営を行う企業を応援する仕組みが構築されています。

その3:ライフサポート

食費や育児、介護など生活全般をサポートする福利厚生が含まれます。少子高齢化対策としても関心が集まっており、特に都市部での保育については企業側の努力が求められる風潮が高まっています。制服の購入、クリーニング代や駐車場や社員用バスの手配なども幅広く含まれる領域です。

その4:慶長

お祝い事や不幸事について企業から現金を支給する制度です。結婚祝金、出産祝金、入学祝金、傷病見舞金、弔慰金、法定超付加給付などがあります。

その5:文化・体育・レクリエーション

社員旅行やクラブ活動の補助などの福利厚生が含まれます。従業員の親睦や交流を目的とした企業運動会の開催や社内部活動の補助をする企業が増加傾向にあります。

その6:共済会

共済会とは従業員と企業でお金を出し合って、福利厚生を運営する仕組みです。共済会を設立することで、企業だけが支出する場合に比べて財源が豊かになるうえ、従業員が共済会運営に関わることで、福利厚生への参加意識や当事者意識が芽生えます。一般的には給与から毎月天引きとなります。

その7:福利厚生代行

さまざまな施設やサービスを特別料金と特典がある形でまとめて利用できるサービスです。企業の福利厚生担当者がそれぞれの施設やサービスと個別に契約する必要がなく、簡単に充実した福利厚生を実現できます。代行サービスには施設やサービスがまとまっている「パッケージサービス」と、福利厚生の内容をカスタマイズできる「カフェテリアプラン」の大きく2種類があります。企業の規模や、福利厚生を導入する目的によって使い分けましょう。

福利厚生業務を効率的に行うためには

労働者からのニーズが高まっている福利厚生ですが、企業のカラーを反映させて福利厚生を充実させるには、ルールの策定や手続きなどのさまざまな手間が発生するのもまた事実です。そのため、福利厚生業務をいかに効率的に運用できるかも重要なポイントとなります。効率化のために企業でできる施策について紹介します。

その1:電子申請を活用して担当者の業務効率化を実現する

電子申請

厚生年金保険や健康保険など行政に提出する書類は徐々に電子化されているので、電子申請を行いましょう。大企業では2020年4月からすてに電子申請が義務化されており、中小企業も将来的に電子申請が義務化する可能性が高いと言えます。電子申請を行うことで自宅や職場から24時間申請が可能になり、API申請に対応している労務管理ソフトなら、申請データの作成から申請、公文書取得まですべてソフトから行えるため、かなり効率的です。

その2:代行業者や専門家に頼る

福利厚生業務をすべて社内で行うとなると、多大な予算と時間がかかります。しかし、代行業者や専門家に依頼することでコストを抑えながら充実した福利厚生を整備できるため、リソースに余裕のない中小企業でも比較的気軽に利用することが可能です。

福利厚生はただ取り入れればいいというわけではなく、実際に従業員に使われなければ意味がありません。その点、代行業者や専門家を利用すれば、従業員の年齢層や趣味嗜好に合わせて実績のある福利厚生を選べるので満足度が高い傾向にあります。民間資格ではありますが、福利厚生のプロフェッショナルもいるので、バックオフィスのリソースに余裕がない場合はサポートしてもらうことも検討してみましょう。

text:働き方改革研究所 編集部