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正しい「勤怠管理」の第一歩は「労働基準法」の正しい理解から

企業には出社・退社時間、休憩時間、休暇・休日の日数など、働く時間に関する決まりごとがあります。従業員の労働時間を正確に把握し、これらの決まりごとがしっかりと守られているかどうかを管理するのが、いわゆる勤怠管理です。

ここで質問です。皆さんが日々行っている勤怠記録は、どのくらい正確に勤務の実態を表しているでしょうか?

・なんとなくつけづらいから、残業の記録はつけていない(つまりサービス残業をしている)
・家に持ち帰って仕事をしているが、もちろん勤務時間として記録していない。
・休日出勤をしても、代休や振替休日を取っていない。
・始業前に出勤しても、その分の勤務時間は記録に反映されていない。
・勤務時間が15分単位で管理されているので、15分未満の残業時間は切り捨てられている。

......思い当たる節がある方は、決して少なくないように思います。

労働基準法を遵守するため、適切な残業代を支払うため、働きすぎを防止するため――勤怠管理には様々な目的があります。しかし、なぜこのように勤怠の記録が勤務の実態とかけ離れてしまうのでしょうか。

現在の労働基準法では、従業員の賃金は「労働時間」で計算されることが原則となっています。人々の働き方が「時間」ではなく仕事の「成果」で評価される知的労働へと進化している今、時間単位で賃金を計算することが現実の働き方にそぐわないという理由から、実態とかけ離れた「かたちだけ」の勤怠管理となってしまっているのかもしれません。

また最近では、フレックスタイム制度や在宅勤務など柔軟な働き方を導入する企業も増えています。従業員自身が自分の裁量で働く時間を決めることができるため、管理が複雑化していることも理由として考えられるでしょう。従業員の勤怠を厳密に管理することに意義や重要性を感じられず、ただ面倒なだけだと認識されてしまえば、勤怠管理は本来の機能を失ってしまいます。

今、かつてないほどに勤怠管理の重要性は増しています。企業の労働生産性を向上させるためには、少ない労働時間で成果を生みだす仕組みづくりが重要です。そのために何をすべきなのか――勤務制度を変えるのか、業務プロセスを変えるのか、評価制度を変えるのか、企業カルチャーを変えるのか。企業によって最適解は異なりますが、はじめの一歩として間違いなく必要なのは、適切な勤怠管理を行い、従業員の勤務の実態を知ることです。 「法律で決められているからやる」のではなく、従業員の多様な働き方を認め、生産性を高めるうえでも、まずは「労働基準法」を理解し、法にのっとるかたちで仕組みづくりを進めていくことが重要です。

ということで、ここからは最低限押さえておかなくてはならない勤怠管理の基本、「労働時間」について整理してみたいと思います。

そもそも「労働基準法」とは?

労働基準法は、労働条件(労働時間、休日、賃金など)の最低基準を定めた法律です。この法律は、正社員はもちろん契約社員・パート・アルバイト・派遣労働者など、すべての労働者に適用されます。では、「労働時間」についてはどのような基準が設けられているのでしょうか。

労働時間とは?

実は労働時間については、労働基準法などの法律ではっきりと定義されているわけではありません。ただ裁判例などによって、「労働時間=労働契約に基づいて、使用者の指揮命令下におかれている時間」という概念が確立されています。労働時間は契約や就業規則などの約束で決められるものではなく、従業員が実際に働いた時間です。使用者は労働者の実際の労働時間を把握し、その時間に基づいた賃金を支払う義務を負っているのです。

では、「実際に働いた時間」とはどこからどこまでを指すのでしょうか。労働時間には「業務は行っていないが、使用者からの終了要求があればいつでも終了できる状態で待機している時間(手待ち時間)」も含まれます。
次のうち、裁判の判例において労働時間に含まれると認められた時間はどれでしょうか。

ア.自発的残業
イ.持ち帰りの残業
ウ.昼休み中の来客・電話番
エ.労働からの開放が保証されていない仮眠時間
オ.作業前後の更衣時間
カ.勤務時間中の現場までの移動時間
キ.通勤時間
ク.休憩時間
ケ.自由参加の研修
コ.出張の移動時間

正解はア〜カ。自発的残業や持ち帰り残業についても、使用者の黙認や許容があった場合には労働時間となると解釈されています。

法定労働時間と所定労働時間

さて労働基準法では、1週間単位・1日単位での最長の労働時間を定めています。つまり「これ以上働かせてはいけませんよ」という時間が法律で定められているということです。これが「法定労働時間」と呼ばれるものです。

・法定労働時間
労働基準法32条では
- 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間(ただし、特例措置対象事業場は1週44時間)を超えて、労働させてはならない
- 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならないと定められています。

法定労働時間の規則に違反して労働者を労働させた使用者には、刑事罰による制裁があります。もし、法定労働時間を超えて労働する必要がある場合には、労使間で「36(サブロク)協定」を締結し、所轄労働基準監督署に届出をしなければなりません。


・所定労働時間
一方、所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で会社が就業規則などで独自に決めることができる労働時間を指します。始業時刻から終業時刻までの時間から「休憩」時間を除いた時間が、その企業の「所定労働時間」になります。

例えば
・就業時間が9時から17時
・休憩が1時間
という場合、所定労働時間は7時間となります。

17時から18時までの残業は法定労働時間の8時間以内となるので、割増賃金は発生しません(割増なしの所定時間外残業代は発生します)。これを法定内残業時間と呼びます(※1)。

もし18時から20時まで残業した場合には、法定労働時間の8時間を超えるので、2時間分の割増賃金が発生します。これを法定外残業時間と呼びます(※2)。先にも記したように、法定労働時間以上の労働が発生する場合には「36協定」の締結と所轄労働基準監督署への届出が必要です。働き方改革の先駆的存在である株式会社ZOZOは、2012年から9時始業15時終業の「6時間労働制」を採用しています。就業規則上は8時間労働制ですが、6時間で業務を終了してもよい、という決まりになっており、6時間労働でも8時間分の給与が支払われています。

割増賃金

さて、「1日8時間」という法定労働時間を超えて労働させる場合、企業は「36協定」を届け出るだけでなく、従業員に割増賃金を支払わなくてはなりません。

<割増賃金の計算方法>
・法定内残業の場合:法内残業の時間×1時間あたりの賃金(円)
・法定外残業の場合:
a)1ヶ月の時間外労働の合計が60時間まで:時間外労働の時間×1時間あたりの賃金(円)×1.25
b)1ヶ月の時間外労働の合計が60時間を超える場合:超過時間×1時間あたりの賃金(円)×1.5
c)法定休日労働の場合:法定休日労働の時間×1時間あたりの賃金(円)×1.35 となります。

例えば、所定労働時間が7時間(始業が9時で終業が17時、休憩1時間)の会社で、時間単価が2,000円の社員が残業をした場合

※1 17:00~18:00の法定内残業:1(時間)×2,000(円)=2,000(円)
※2 18:00~20:00の法定外残業:2(時間)×2,000(円)×1.25=5,000(円)

 計7,000円が残業代となります。

【働き方改革関連法でここが変わる!】
2019年4月1日に施行された「働き方改革関連法」により、割増賃金率が変わります。b)1ヶ月の時間外労働の合計が60時間を超える場合の割増賃金率について、中小企業にはこれまで猶予措置があり、25%の割増率の設定が可能でした。しかし今回の法改正により大企業・中小企業ともに50%の割増が必要となるので、注意しましょう。


割増賃金については、「所定労働時間」ではなく、「法定労働時間」を何時間超えたかが計算の基準となリます。実は「法定労働時間」を正しく理解していないがために、残業代を正しく計算できていないケースが多いようです。「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間をしっかりと理解することが、未払い残業を防ぐ最初の一歩となります。

労基法で定められている「休憩」のルール

さて、労働基準法では「休憩」についても基準が定められています。
労働基準法34条では、労働時間が
- 6時間を超え、8時間以内の場合、45分以上
- 8時間を超える場合、1時間以上
の休憩を付与しなくてはならないと定めています。

労働時間が6時間以内であれば休憩を付与する必要はありません。ちなみに、前述のZOZO社の「6時間労働制」では休憩時間は設けられていません。

今回整理した「法定労働時間」・「所定労働時間」・「休憩時間」・「法定内残業時間」・「法定外残業時間」・「36協定」・「割増賃金」などの言葉は、勤怠管理の基本中の基本となる用語です。「働き方改革関連法」の施行により、今後はさらに厳密に従業員の労働時間を管理することが求められます。思わぬ形で法律違反をすることのないように、基礎知識はしっかりと押さえておきましょう。

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