勤務間インターバル制度とは

 今回、「働き方改革関連法」に基づき「労働時間等設定改善法」が改正され、勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務として規定されました(2019年4月1日施行)。努力義務なので、必ずしも導入しなければならないということではありませんが、厚生労働省は、勤務間インターバル制度を導入する中小企業に対して助成金を支給するなど、積極的に支援を行う方針を打ち出しています。

「勤務間インターバル」とは、終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を設ける制度です。

日本ではまだ導入事例が少ない制度ですが、EUでは加盟国の最低労働基準を定める「労働時間指令」において、勤務間インターバル制度を設けることが義務づけられています。

勤務間インターバル制度導入のポイント

では実際に勤務間インターバル制度を導入するにあたっては、どのような点に留意すればよいのでしょうか。4つのポイントを解説します。

①最低限確保すべき休息時間を決める

 まずはインターバルの時間を何時間にするのかを決めなければなりません。厚生労働省の助成金の基準では「休息時間が9時間以上」とされていますが、EU基準では「11時間以上」となっています。職種や組織ごとに異なるインターバル時間を設けることも可能です。制度が絵に描いた餅にならないよう、実際の業務に合わせた実現可能な時間を設定することが重要です。

②適用対象を決める

 必ずしも社内の全従業員を対象とする必要はありません。職種によって適用の有無を決めることができます。

③適用期間

 年間を通じていつも一定のインターバル時間を確保しなくてはならないということではありません。多忙な時期を避けて設定することもできますし、あえて多忙な時期に限って適用し、従業員の長時間労働に歯止めをかけるといった運用方法も効果的です。

④インターバルに応じた労働時間管理

 勤務間インターバル制度を導入すると、前日の終業時刻によって翌日の始業時刻が定時よりも遅れる場合があります。始業時刻が遅れると、終業時刻や休憩時間にも影響が及びます。導入の際には、これらの取り扱いについて事前に取り決めておくことが重要です。

始業時刻

前日の終業時刻が22時15分など中途半端な時刻になった場合に、翌日の始業時刻をどうするかを検討する必要があります。

終業時刻

始業時刻に応じて終業時刻も遅らせるのか、また定時のままとするのかによって給与などにも影響が及びます。終業時刻についても、事前にしっかりと取り決めをしておきましょう。

休憩時間

インターバルによる始業時刻が、休憩時間にかかってしまった場合(例えば休憩が12時〜13時の企業で、始業時刻が12時半になった場合など)にも注意が必要です。

休憩時間は労働時間の途中に与えなくてはなりません。従って始業直後の12時半から13時までを休憩とすることはできません。

労働基準法では
・ 労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は45分以上
・ 労働時間が8時間を超える場合には1時間以上

の休憩を取得させるよう定められています。休憩時間を従業員が取り忘れることがないよう、休憩についてのルールも事前に決めておく必要があります。

導入事例

細かい運用まで考えると勤務間インターバル制度を導入するのはちょっと面倒……という印象があるかもしれません。しかしうまく活用することによって、働き方改革の効果を出している企業もあります。厚生労働省のウェブページに掲載されている導入事例から、いくつかピックアップしてみました。(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/

例1)長時間労働に流れがちな社内の雰囲気を変えるために導入

 社内でいくら「残業を抑えましょう」という声がけをしても、長時間労働の雰囲気がなかなか変えられない……、そんな悩みを持つ企業も多いのではないでしょうか。

ある企業ではこの雰囲気を変えるために、終業から翌日の始業までに原則11時間のインターバルを設けるという制度を導入しました。8時の始業時刻までに11時間空けなくてはならないという決まりを作ったことで、23時には必ず帰るようになり、深夜残業が抑制されています。

また別の企業では、勤務間インターバルは原則11時間。退社が23時以降になってしまった場合は、翌日の始業時刻は10時以降にするという制度を導入しました。義務化はせず、緩やかな運用とのことですが、これまでは、前日の疲労が抜けていなくても、周囲を気にしてなかなかゆっくり出勤することができなかったのが、勤務インターバル制度を導入することで堂々と時差通勤ができるようになり、働き方改革の第一歩となっているようです。

例えば、「22時以降の深夜残業を行う場合は事前に申請を行い、上長の了解を得られない限りは残業ができない」など残業申請制度とセットで導入する方法や、翌日の始業時刻が遅れることで、1日の労働時間が所定よりも短くなってしまっても、給与は変更しない、というシンプルな運用が成功の秘訣となりそうです。

例2)インターバルが取れない場合は、特別休暇で対応

 12時間の勤務間インターバルを設けているある企業では、終業から翌朝始業までの勤務間インターバルが取れない場合は、インターバル休暇という特別休暇(勤務体制が確保できることを条件に時間単位で取得できる有給休暇)と時間単位の有給休暇を使って翌日を休暇扱いにしたり、翌日の休憩時間を1時間プラスして2時間としたりするなどの対応で、従業員の働きすぎを防いでいるようです。

例3)インターバル時間は勤怠管理システムで管理

 出退勤時のタイムカードのログデータでインターバル時間がしっかりと守られているかどうかを把握するのも有効な方法です。例えばある企業では、従業員の勤務シフトを上長が登録する場合にも、インターバル時間が不足していると警告が出るシステムに改修したそうです。また、別の企業ではICカードで出退勤を管理しており、ログを見てインターバルが守られていない状況が見つかった場合は、人事が状況と原因の確認を行い、人手不足やマネジメントの課題などに対応しているそうです。

労働時間の適正な把握は必要不可欠

 これまで見てきた通り、勤務間インターバル制度を運用する上では、労働時間管理や勤怠管理が不可欠です。正しく管理できることはもちろん、始業時刻がバラバラになってしまった時のチーム内のコミュニケーションツールなどの整備も必要になります。

 ルールが複雑になると制度は形だけのものになってしまいます。できることはシステムで自動管理し、従業員の負担にならないようにすることが重要ではないでしょうか。


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