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2018/03/05 10:00:00

「CESS 働き方改革実現会議 2018 ~イノベーションと日本のV字回復~」開催レポート① 
ニューテクノロジー時代の働き方改革

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2018年2月20日に一般社団法人働き方改革コンソーシアム主催の「CESS 働き方改革実現会議 2018 ~イノベーションと日本のV字回復~」が東京・虎ノ門ヒルズにて開催されました。

日本を代表する経営者や専門家によるパネルディスカッション、働き方改革を実現するソリューションや先進事例に関する講演など盛りだくさんでしたが、チームスピリットが特別協賛したキーノート パネルディスカッションの様子についてご紹介したいと思います。

キーノートパネルディスカッション:ニューテクノロジー時代の働き方改革

パネルセッションの様子

本セッションでは、AI、IoTなどの新しい技術が台頭する中で、個人はどのようなキャリア設計をしていけば良いのか、企業はどのように変革すべきなのか、また政府はどのような社会を実現すべきなのか、様々な角度から議論が展開されました。

【登壇者】

●ファシリテーター
竹中平蔵氏 (東洋大学教授 慶應義塾大学名誉教授)

●パネリスト
南場智子氏 (株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役会長)
八代尚宏氏 (昭和女子大学 特命教授)
荻島浩司 (株式会社チームスピリット 代表取締役社長)


竹中平蔵氏による挨拶

竹中氏本セッションのファシリテーターである竹中平蔵氏は、冒頭の挨拶にて、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムが、サンフランシスコに第4次産業革命センターを設立したことを紹介(2018年夏には東京にも姉妹拠点が設立される予定)※1。

「IoT 、ビッグデータ、シェアリングエコノミーなどテクノロジーが進化するなかで、今までと違った働き方が求められている」とセッションの焦点について、あらためて強調しました。

※1 「世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター」の設立について
https://apinitiative.org/2018/01/23/7777/


八代尚宏氏のプレゼンテーション

最初に八代氏から、「ニューテクノロジー時代の働き方改革」を考える上での3つの重要なポイントについて説明がありました。

1.日本の「無限定の働き方」の限定化

これまでの日本は、新卒を採用し、なんでもできる労働者に育て上げる「働き方を限定しない働き方」で雇用をしてきた。しかし新たなテクノロジーが登場すると、熟練の技術が突然陳腐化するリスクがある。雇用の方法、社内教育の方法を変えていかなくてはならない。

2.企業内外の雇用流動性の促進

日本の長期雇用は、製造業を中心に成功を収めてきたが、経済環境の変化で企業の硬直性を生み出している。高齢化・グローバル化・ニューテクノロジーに対応するためには、企業の内外における雇用の流動化を促進することが重要。政府としても制度改革等でバックアップする必要がある。

3.大学教育と雇用保険の改革

ニューテクノロジーの登場によって、これまでやっていた仕事がなくなるリスクがある。労働者は常に新しい技術を身につけなくてはならない。そのためには大学のリカレント教育の充実とセイフティーネットとしての雇用保険を再訓練支援を強化する方向へ改革していかなくてはならない。

八代氏

1990年代以降、経済成長が減速しているにもかかわらず、高成長時代の働き方を維持することで正規・非正規の格差等の歪みが生じている。人口減少社会に対応した働き方の改革が必要だ。

AIの登場によって、人々の働き方は今後大きく変化し、ルーティンワークはAIに任せ、人間はクリエイティブな仕事に専念する時代になる。生産性向上のためには、時間労働で

はなく裁量労働が基本となるが、現在国会で議論されているホワイトカラーエグゼンプションは「残業代ゼロ法案」などと呼ばれ、非常に後ろ向きの議論がまかり通っている。これは大いに問題視すべきだ。

今後は社会人を対象にしたリカレント教育を重視した教育機関が成長分野となる。顧客が減る少子化を前に大学は衰退の危機にあるが、企業と同じく競争で生き残るべきだ。それにもかかわらず、「学生が減少している地方の大学を保護するために東京23区の大学の定員増を抑制する」という、信じられないような法案が閣議決定された。これではとても世界と戦うことはできない。

私は以前から「教育休業制度」を提唱している。現行の育児休業制度では、休業中の給与は支払われないが、準失業という形で給与の5割が雇用保険から支払われる。これと同じような形で、1年から2年勉強のために休みを取ることのできる「教育休業」制度を作り、雇用保険から給与の一部を保障する。休業中に資格を取ったら、復帰後に資格に応じて昇給するといった仕組みを整備すれば、リカレント教育は広がっていくだろう。政府がバックアップをすることで雇用の質を高め、流動化を進めることで、ニューテクノロジーの時代に対応できるような社会を作っていくことが必要だ。

フリーディスカッション

続いて竹中氏の進行により南場氏、八代氏、荻島によるディスカッションが行われました。

竹中氏:自由な働き方、自由な雇い方を認め、制度的な不平等をなくすというのが「働き方改革」の一番の基本ですが、現状の「働き方改革」の議論では「長時間労働を短くしろ」ということだけが先行しており、非常に不健全な姿と感じられます。南場さん、荻島さんは経営者としてどのように考えますか。

南場氏南場氏:勝利の方程式では「優秀な人材をプロジェクトに集めてくる」ことがとても重要です。今後は、社員だけでプロジェクトを実行する時代ではなくなり、プロジェクト単位でいろいろなところから人が集まり、成果を達成したら解散する、という形に変わっていくのではないかと思います。

当社では自由な働き方を推進する一つの選択肢として副業・兼業を認めています。学校で教えたり、スタートアップの手伝いをするのも歓迎します。社員にはとても喜ばれている一方で、会社としては副業時間も込みで社員の健康を守らなくてはならないので、管理コストは多少上がっているように感じます。

自分の人生を振り返ると、会社に寝袋を持ち込み、熱病にかかったように仕事をしていた起業当時が一番幸せでした。今は従業員の労働時間を厳しく管理する義務があるので、本人がどれだけ働きたくても、家に帰しています。意欲があるのに働けないというのは、正直もったいないなと感じることはありますし、中国やシリコンバレーのビジネスマンの働き方を見ると、このような状態でグローバル競争を勝ち抜くことができるのかという不安も感じます。

荻島氏荻島:先日アメリカで労働法を専門にしている弁護士さんに話を聞いたのですが、アメリカでは時間給で働く人が1割、裁量労働が6割から7割、残り2から3割がインディペンデントコントラクターだそうです。日本ではマネージャーもエンジニアもみんな時間で管理されている。まずはそれを変えていかないといけないと思いました。オリンピックで活躍する選手の姿を見ていて練習時間を8時間に制限されたら大変なことになりますよね。一人ひとりがプロフェッショナルとして活躍できる仕組みを作らなくてはいけないというのを強く感じています。

竹中氏:「働き方の多様性を認める」ということに関しては、政府や社会の枠組みをどう作るか、企業がどう変革するか、個人がどのような行動をとるのかという3段階の議論があるかと思います。

政府や社会の枠組みについては、現在、労働基準法を70年ぶりに大改革しようと議論が進められていますが、中でもホワイトカラーエグゼンプションの話は非常にもめています。この制度が適用されるのは所得が高い特別な職種にもかかわらず「残業代ゼロ法案はけしからん!」という議論になってしまうのはどういうことなのでしょうか。

八代氏:ホワイトカラーエグゼンプションを導入したら、残業なしで際限なく働かされるのではないかという懸念があります。しかし、本場のアメリカでは、そうした企業からは質の高い労働者は逃げ出してしまうので、結局はやっていけなくなります。

日本では中小企業よりも大企業における長時間労働の問題が深刻です。なぜ立派な労働組合がある企業でこのようなことが起こるかというと、給与が高く、年功序列型賃金の企業では、定年まで勤め上げずにやめてしまうと従業員にとっては確実に不利益になります。年功賃金が、従業員を辞めさせないための罠になってしまっています。もっと会社を自由に辞めても大きな不利にならないような労働市場で、雇用の流動化が進んでいけば、従業員を大事にしない企業は倒産します。

「雇用の流動化」というと、経営者が労働者を自由に辞めさせるという側面ばかりが強調されがちです。むしろ労働者を守るために辞める自由を高めていくという側面があることも大事です。

もう一点、ホワイトカラーエグゼンプションで大事なポイントが「休日規制」です。この制度では、使用者に対して年間104日の強制休業という厳しい規制が入っています。これまでは残業代で長い労働時間を抑制しようとしていましたが成功していません。逆に「休日」の強制という形でより直接的な規制を強化しようとしているというのは、日本にとって大きな転換点で評価すべきことです。

竹中氏

竹中氏:最近大手の銀行が軒並み大規模なリストラを発表しました。テクノロジーの進化によって、他の業界でも同じようなことが起きることが予想されますが、南場さんはどう思われますか。

南場これまで人がやっていた仕事がAIに置き換わるという時代は、思ったより早く来るのかなと感じています。当社でも実務レベルで何をどのようにAIに置き換えていくかという研究を進めています。ルーティーン作業はAIがやり、人の仕事はもっとクリエイティブに面白くなっていくと思うと、「仕事が奪われる」というような悲観的な思いはないですね。

竹中そんな時代が予想以上に早く来るのであれば、制度の準備なども急がなくてはいけませんね。まだ日本ではあまり話題になっていませんが、八代先生は解雇無効時の「金銭解決制度」については、どのような見解をお持ちですか?

八代今回の働き方改革法案には入っていませんが、厚生労働省ではすでに議論されています。「首切り自由法案」などと揶揄(やゆ)されていますが、それは大変なミスリーディングです。

解雇無効訴訟では、大きな労働組合がある企業の労働者と中小企業の労働者では、金銭補償の金額に驚くほどの格差が生まれています。訴訟費用が潤沢な大企業の労働者に対する和解金は青天井なのに対し、中小企業の労働者は微々たる金額で自由に解雇されているという不公正があるのが現状です。解雇の金銭解決制度は、欧州の主要国ですでに導入されている仕組みで、解決金の上限と下限を決めた法律の範囲内で裁判官が解雇無効の際の金額を決める速やかに決める仕組みです。現行では、著しい不利益を被っている中小企業の労働者あるいは非正規の労働者を実質的に保護するのための法律だということを強調したいです。

竹中「教育休業」については、皆さんどのようなご意見をお持ちですか?

南場氏:長年働いていればリフレッシュが必要な時もありますし、新しい技術や知識を身につける必要もあると思います。ハイパフォーマンスで働いてもらうために、一度外に出て学ぶというのは企業としては大歓迎です。ただ、戻ってきてもらわないと困るんですよね(笑)。

雇用の流動性という話が出ていますが、IT業界は人材の流動性が非常に高く、むしろ「会社を辞められないようにするためにどうするか」ということを考えなくてはいけません。会社が何らかの負担をして教育休業を取った後はちゃんと戻ってくるという約束を交わす必要はあるかと思っています。

八代氏:留学から戻ってきてすぐに辞めてしまう人がいるのは、せっかく海外の大学で資格を取っても昇給してもらえないという理由もあるようです。努力して能力を磨いてもそれを十分に評価してもらえないのであれば、評価してくれる別の会社に行くというのは当たり前の話です。給料をもらいながらの留学が、いわば「特定の社員へのご褒美」のようになってしまっている。むしろ、自発的に無給の教育休業を選択し、資格を得て会社に戻れば、それにふさわしいポストに就くことができる。企業にとっても個人にとっても、こういういった仕組みが望ましいと思います。社会の仕組みとして流動性を担保しつつ、会社に残ってくれる社員をどう増やしていくかというのが、これからの重要な課題となります。

荻島:GDPだけで見れば、この10年で中国は2.6倍、インドネシアは1.8倍、アメリカでも3割成長しています。日本の成長率はほぼフラット。本当に危機感を感じます。働く人も、企業も変わらなくてはいけない中で、再教育は非常に重要ですし、社会に出る前の教育も変わらなくてはいけないと思います。


質疑応答

Q:働き方改革コンソーシアムは、今後どのような活動を目指しているのでしょうか。

荻島:真の働き方改革を実現するために、個人、企業はどうしていくべきかというのをみんなで議論し、実現していけたらと思っています。既存の制度の中でどうするかではなく、ベンチャースピリットを発揮し、ゼロベースで新しい働き方について考え、「日本発」の働き方を世界に発信していきたいです。竹中先生や八代先生にも特別アドバイザーとして参画していただいているので、政策提言などもやっていけたらと思っています。

八代氏:今の働き方で満足している方もたくさんいるとは思いますが、長期雇用・年功賃金ではない働き方をしたい人、時間にとらわれない働き方をしたい人もたくさんいます。そういった人たちの選択肢を広げるためにどうしたらいいかを議論していく必要があります。日本では学生の多くが雇用保障の大きな大企業への入社を望んでいますが、アメリカでは優秀な人ほどスタートアップに入ったり、起業したりします。この差をどうしていくのか、それもこのコンソーシアムの一つの役割ではないかと考えています。

Q:時間ではなく成果で評価するという話がありましたが、今まで労働時間や働く姿勢、プロセスで部下を評価してきたリーダー層や経営者の意識を変えるというのは難しいのではないかと感じました。意識を変えていくためには何が必要でしょうか。

荻島:まずは社員一人ひとりが何をしているのか、何をすべきなのかを具体的に「見える化」することが大切だと思います。会社が何を目指し、今どういうところにいるのか、そこからブレイクダウンして、それぞれの部署、チームに何が求められているのかについて、一人ひとりが納得できるように丁寧に話をしていくというのも一つの方法ではないでしょうか。

八代氏:大事なことは「評価者を評価する」ということです。そのためには個人の職務をできる限り明確にしないといけません。職務が明確ではないから、結局労働時間くらいしか評価する軸がなくなってしまうわけです。私がOECD在籍時に受けた人事評価は衝撃的でした。上司が部下を評価し、部下は上司の評価に反論し、上司の上司がどちらの言い分が正しいかを判断するのです。ここまでやると評価する方もかなり緊張感が高まって、時間だけで評価するようなことはとてもできなくなると思います。ぜひ社内で提案してみてください(笑)。

竹中氏:最後にこのセッションの締めくくりとして、それぞれ一言ずつお願いします。

南場氏:盤石と思われた企業が5年後にはなくなってしまったり、別の会社に買収されてしまったりということが、今後どんどん起きると思います。慣れた環境でしか仕事できない人材になってしまうのはリスクが大きいので、もしチャンスがあれば、転職に挑戦してみることをお勧めしたいです。

八代氏:政府は働き方改革に取り組んでいますが、本当は政府に言われるまでもなく企業がやるべきことです。実は日本の労働法はとても緩やかで、基本的に企業がやっていることを判例等が後追いしている状態です。いろいろなことにチャレンジする企業が増えていけば、政府も変わってくるはずです。

荻島:八代先生のおっしゃる通り、本来私たち企業が働き方を変えなくてはいけません。それをどうやっていくのか。できないことはないと思うので、多角的な面で学びを進めながら、みなさんと一緒に議論していけたらと思います。

竹中氏:企業が主役であり、個人が主役であるというのは、政府も気づいています。国家戦略特区制度では、大胆な制度改革に取り組むべく、様々な取り組みを行っています。しかし、残念ながらそういったものを積極的に使おうとしている企業はほとんどありません。こういった仕組みがあることも、ぜひ知っていただきたいです。

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裁量労働制に関する国会での議論が連日報道されていますが、データの真偽に関する議論ばかりで(それも大切ではありますが......)、なかなか本質的な議論にたどり着いていないのが、とても残念です。裁量労働制の対象業務拡大の見送りについては、経済界からも改革後退を懸念する声が上がっています。

パネリストの方々もおっしゃっている通り、どう働くかを決めるのはあくまで個人であり、国や企業は多様な選択肢を用意すること、不当な不利益を被らない仕組みを作ることではないかと思います。今この瞬間も時代は変化し続けています。ニューテクノロジーを自分の可能性を広げ、日本の停滞感や閉塞感を打開する武器とするのか、今の地位や既得権益を脅かす異物とするのか、今、私たち一人ひとりの意識が強く問われていることを強く感じました。

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