2016.10.12

長時間労働を抑制する「勤怠管理」の基本(2)
~労働時間とは~

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「労働生産性」という言葉、正しく理解していますか?

「海外と比べて日本の労働生産性は著しく低い」という記事をよく目にします。

前回のコラムで書いたように、人間は放っておくと長時間労働に心地よさを感じてしまう生き物のようですし、確かに日本ではまだまだ結果そのものよりも「残業して頑張っている」ことが評価されがちです。自分の仕事が終わっても、なんとなく帰りづらい雰囲気があったり、意思決定に時間がかかって「待ち」の時間が長かったりということも少なくないように思います。

日本では今後、働き手の中心となる15歳~64歳の人口が毎年数十万規模で減少していくといわれています。このような時代に、企業が従業員の長時間労働に依存したビジネスモデルを維持していくのは非常に難しく、また大きなリスクともなります。

煩雑な業務はできるだけ効率化すること、働ける時間や場所に制約があっても活躍できる短時間勤務やリモートワークなどの仕組みを整えること、そしていろいろな人が心身ともに健康で、生産性が高く働ける環境づくりに、企業が本気で取り組むべき時が来ているのではないでしょうか。

さて「労働生産性」の向上について考える前に、そもそもこの「労働生産性」という言葉が、一体何を意味しているのかを整理してみたいと思います。よく使われる割には意味があいまいで、もしかしたら一人ひとり全く違うイメージをもっているかもしれません。

公益財団法人日本生産性本部(http://www.jpc-net.jp/)では、「労働生産性」を下記のように定義しています。

※生産性データベース http://www.jpc-net.jp/jamp/ 『労働生産性及び全要素生産性とは』より

日本の評価制度では、ある「期間」の生産性、つまり月ごとや半期ごとなどの成果を評価することが多いと思います。しかし、本当の意味での労働生産性を向上させるのであれば、上記の定義にあるように「1時間あたりの生産性」を意識することが重要です。

「時間あたりの生産性」が評価されれば、働く人は「長時間働かないといけない」という思いから解放されますし、短時間しか働くことができない人でも活躍することができます。無駄な業務を効率化しようとする姿勢も強くなるのではないでしょうか。

「労働生産性」の向上の第一歩となる勤怠管理。まずは「労働基準法」の正しい理解から!

労働生産性を向上させるためには、少ない労働時間で成果を生みだす仕組みづくりが重要です。
そのために何をすべきなのか――勤務制度を変えるのか、業務プロセスを変えるのか、評価制度を変えるのか、企業カルチャーを変えるのか――その選択肢は非常に幅が広く、企業によって最適解は異なります。

すべてを一律的に語ることはできませんが、はじめの一歩として間違いなく必要なのは、適切な勤怠管理を行い、従業員の勤務の実態を知ることです。

さらにそこから、従業員の多様な活躍方法を支援する取り組みを考えていくうえでも、まずは「労働基準法」を理解し、法にのっとるかたちで仕組みづくりを進めていくことが重要です。
ということで、ここからは最低限押さえておかなくてはならない「労働基準法」のポイントについて整理してみたいと思います。

そもそも「労働基準法」とは?

労働基準法は、労働条件(労働時間、休日、賃金など)の最低基準を定めた法律です。 この法律は、正社員はもちろん契約社員・パート・アルバイト・派遣労働者など、すべての労働者に適用されます。

では、「労働時間」についてはどのような基準が設けられているのでしょうか。

「労働時間」とは?

実は「労働時間」については、労働基準法などの法律ではっきりと定義されているわけではありません。

ただ裁判例などによって、

労働時間 = 労働契約に基づいて、使用者の指揮命令下におかれている時間

という概念が確立されています。

重要なのは「実際に働いた時間が労働時間となる」ということ。労働契約や就業規則などの約束で決められるものではなく、使用者は労働者の実際の労働時間を把握し、その時間に基づいた賃金を支払う義務を負っています。

では、「実際に働いた時間」とはどこからどこまでを指すのでしょうか。

労働時間には「業務は行っていないが、使用者からの終了要求があればいつでも終了できる状態で待機している時間(手待ち時間)」も含まれます。

それでは次のうち、裁判の判例において労働時間に含まれると認められた時間はどれでしょうか。

ア. 自発的残業
イ. 持ち帰りの残業
ウ. 昼休み中の来客・電話番
エ. 仮眠時間
オ. 作業前後の更衣時間
カ. 勤務時間中の現場までの移動時間
キ. 通勤時間
ク. 休憩時間
ケ. 自由参加の研修
コ. 出張の移動時間

正解はア~カ。自発的残業や持ち帰り残業についても、使用者の黙認や許容があった場合には労働時間となると解釈されています。

参考:独立行政法人 労働政策研究・研究機構 【労働時間】労働時間の定義
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/024.html

法定労働時間と所定労働時間

さて労働基準法では、1週間単位・1日単位でそれぞれ最長の労働時間を定めています。つまり「これ以上働かせてはいけませんよ」という時間が法律で定められているということです。これが「法定労働時間」とよばれるものです。

・法定労働時間

労働基準法32条では

-使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間(ただし、特例措置対象事業場は1週44時間)を超えて、労働させてはならない
-使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない

と定められています。

法定労働時間の規則に違反して労働者を労働させた使用者には、刑事罰による制裁があります。もし、法定労働時間を超えて労働する必要がある場合には、労使間で「36(サブロク)協定」を締結し、所轄労働基準監督署に届出をしなければなりません。

※「36協定の基礎知識」については、こちらのコラム(https://www.teamspirit.co.jp/catalyst/work-style/36agreement.html)をご参照ください。

・所定労働時間

一方、所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で会社が就業規則などで独自に決めることができる労働時間を指します。

始業時刻から終業時刻までの時間から「休憩」時間を除いた時間が、その企業の「所定労働時間」になります。

例えば

・就業時間が9時から17時
・休憩が1時間

という場合、所定労働時間は7時間となります。

17時から18時までの残業は法定労働時間の8時間以内となるので、割増賃金は発生しません(割増なしの所定時間外残業代は発生します)。これを法定内残業時間と呼びます(※1)。

もし18時から20時まで残業した場合には、法定労働時間の8時間を超えるので、2時間分の割増賃金が発生します。これを法定外残業時間と呼びます(※2)。

先にも記したように、法定労働時間以上の労働が発生する場合には「36協定」の締結と所轄労働基準監督署への届出が必要です。

日本最大級のファッショサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ社は、9時始業15時終業の「6時間労働制」を導入しています。就業規則上は8時間労働制ですが、6時間で業務を終了してもよい、という決まりになっているそうです(6時間労働でも8時間分の給与が支払われているそうです)。

労基法で定められている「休憩」のルール

さて、労働基準法では「休憩」についても基準が定められています。

・休憩

労働基準法34条では、労働時間が

-6時間を超え、8時間以内の場合は、45分以上
-8時間を超える場合は、1時間以上

の休憩を付与しなくてはならないと定めています。

労働時間が6時間以内であれば休憩を付与する必要はありません。ちなみに、前述のスタートトゥデイ社の「6時間労働制」では休憩時間は設けられていません。
上記のスタートトゥデイ社は、「1日最低8時間は働く、残業は当たり前」という既成概念を打ち破り、「6時間労働制」を導入しながらも変わらず成長を続けています。これも、「今、自分の会社で誰がどのような働き方をしているのだろうか」という現実にしっかりと目を向けたからこそ生まれた改革ではないでしょうか。従業員の労働時間を管理することは、労働基準法を守る以上のメリットがあるように感じます(労働時間管理のメリットについては、こちらのコラム《https://www.teamspirit.co.jp/catalyst/work-style/working-hours.html》もご参照ください)

次回は、「休日と休暇の違い」について考えてみたいと思います。



長時間労働を抑制する「勤怠管理」の基本

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