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 今月より私たちの仕事や働き方の将来について考える連載を始めます。

 最新のICTや社会変化がどんな変化をもたらし、仕事の内容やワークスタイルがどのように変わっていくのか、読者のみなさんがアイデアを膨らませるためのヒントを提供したいと思います。

●未来とは予想するものではなく創るもの

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The best way to predict the future is to invent it. (未来を予測する最善の方法はそれを発明してしまうことだ;アラン・ケイ)
If you can dream it, you can do it.(夢見ることができれば実現できる;ウォルト・ディズニー)
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 はじめに本連載のスタンスを明確にしておきます。

 様々な未来予測やトレンド予測があります。タイムマシンに乗って未来を見に行ったらどんな姿になっているだろうかという考えは、こどもの時から私たちをわくわくさせるテーマの一つです。タイムマシンという言葉を使いましたが、同じ使い方でも、過去にもどるのと未来に行くのとでは意味合いが全く違うというのが、本連載の大前提です。

 なぜなら、過去は基本的に確定しているものですが、将来はこれから自分も含めたいまの人たちが創っていくものだからです。重要なのは、そこには「自分の意志」が入ってもよいということです。つまり、未来は単に「水晶玉を客観的に眺める」という位置付けのものではなく、「こうしたい」という自分の理想や気持ちを込めていくものだということです。

 2015年は、30年前の映画「バック・トウ・ザ・フューチャー」シリーズが予言した30年後ということで、どこまで「30年前に描かれた未来」が実現しているかが話題になりました。実際に近いものが実現目前のホバーボードや遠隔会議など、かなりの未来が現実になっているという結論は、予想が当たったというより、この映画を見た人たちがそのような将来を思い浮かべて実現に向けて行動に移したからこその結果とも言えるでしょう。

それではこのように、未来を思い浮かべて実現させるためには何が必要なのでしょうか?

●語るべきはサイエンスフィクション

 未来の仕事や働き方の今後にICTを始めとする技術の発展が大きな影響を与えることは、最近のクラウド化や動きを見ても疑いのないところです。では、未来を考える上で必須になるのは、「最新技術に詳しくなること」なのでしょうか?

 最近話題になることの多いIoT(Internet of Things:モノのインターネット)やビッグデータというキーワードについて考えてみましょう。いまやどんなデータでも技術的には収集や分析が可能な時代になってきて、むしろいま圧倒的に不足しているのは、「サイエンス」や「エンジニアリング」のスキルよりも、サイエンスフィクションのような「夢物語」をどこまで語れるかで、最新の技術やデータをつかいこなすための、ユーザの使い方に関するアイデアの方がボトルネックになっているとも言えるでしょう。

 いったいデータをどのように使えば私たち一人一人の課題を解決して、思い描く理想像に近づけるか、あるいはそれがどういうビジネスにつながるのかという「使い方の仮説に関する想像力」がますます重要になってきているということです。

 アメリカのハイテク企業にはフューチャリスト(Futurist)と呼ばれる役職の人を置いている会社があります。文字通り、「未来予測」を専門にし、私たちの暮らしがどう変わり、それが自社の製品やサービスにどのような影響を持ち、逆に自社の製品やサービスによってどのように世界を変えようとしているのかを常に考えている人たちです。本連載で目標とするのは、私たち一人一人が自分自身のためのFuturist となって、自分自身の想像力を発揮し、自らの未来を創造していくための「思考の材料」を提供することです。

●何が未来に影響を与えるのか?

では、未来に起きる(起こす)変化をソウゾウするためにインプットとして考慮すべき要素と考えるための視点を以下の2方向から考えてみましょう。

・社会と人の変化(ニーズ側)
 
 当然はじめに考慮すべきことは、人間の変化です。経済トレンドや社会変化によるユーザニーズの変化の大きなトレンドが出発点です。具体的には、グローバル化、ソーシャル化、草食化、エコ意識の高まりといった変化が仕事や働き方に影響するのは言うまでもありません。

・技術変化(シーズ側)

 もう一つの大きな柱は、IoTやビッグデータ、クラウドといった現在進行形のキーワードに加えてAIやロボット、ドローンや3Dプリンタ、ウェアラブルコンピューティングなど、現在では「SFの世界」に近いと思われていることが、近い将来現実のものになっていく可能性が高いのは先述の通りです。いまの時点では「SFの世界」だからこそ、想像力を発揮して自分なりの未来を描くチャンスなのです。

 このような要因をインプットとして、仕事や働き方の将来を考える上での切口りとして本連載では、時間と空間、そして様々なリソース(人、もの、金、情報)の活用の仕方という観点を考えます。

 特にICTの発展は、これまでの仕事や働き方の時間的、空間的な制約を取り払うことを容易にします。私たちが固定観念としてもっていた、「仕事は会社で、遊びは家で」という空間的制約や、9時から5時が「定時」でそれ以後は「残業」といった概念を破壊しつつあります。さらにドローンや3Dプリンタは別の意味で空間的な制約を抜本的に取り払ってしまう可能性も持っています。

 また、クラウド化やシェアのトレンドはリソースの活用方法や分担範囲を抜本的に変えてしまう可能性を秘めています。

 次回以降、これらのキーワードから連想される大胆な仮説の構築を試みて、読者の想像力を刺激していきたいと思います。