2016.12.15

未来の働き方を考える 第22回
働き方も"カエル跳び"、今の資産が重荷になる!?

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「リープフロッグ」は新技術が既存の技術を飛び越えていく様子を表す際に使われる

 米アマゾン・ドット・コムが様々な最新技術を駆使して従来のレジをなくしたリアルな店舗である「Amazon Go」の実験を始めたと報じられました。この実験が、現在リアルの店舗網を制しているスーパーやコンビニではなく、その世界ではむしろ何者でもなかったアマゾン・ドット・コムが始めたということで、ひとつ思い出されるキーワードがあります。それは「リープフロッグ」です。

インフラの進化は一足飛びで起こる

 リープフロッグの文字通りの意味は「カエル跳び」(あるいは「馬跳び」)ですが、新技術が既存の技術を飛び越えていく様子を表す際に使われるようになっています。あたかもカエルがピョコンと跳躍するように、劇的な技術の変化によって、それまでの技術を持っていなかった人や企業が一気に既存技術を飛び越えてしまう――。そんな様子をいつしかリープフロッグと言うようになりました。

 分かりやすい例が電話網です。かつで電話網と言えば固定電話でした。先進国ではほぼ100%固定電話が行きわたっていましたが、新興国では固定電話の普及が遅れている国もありました。それが固定電話がろくになかったような新興国の方が、一気に携帯電話が普及するといった状況が見られました。

 道路の普及についても同じことが言えます。既に複雑に道路網が絡み合っている都会で新たに高速道路を建設するとなれば大変ですが、ろくに道もなかったようなところに建設するのであれば、過去のしがらみもなく、まさに「白紙に線を引く」ように容易に実現が可能です。

 恐らく今後、自動運転の普及の際にも同様のことが起こるでしょう。人や馬が通りやすいように最適化されてしまった欧州の「古都」の方が自動車の使い勝手が悪かった一方、当時の米国の各都市の方が自動車に適した広い道路が整備されやすかったといったことがありました。自動運転に際しては、今の交通システムが出来上がっており、自動車の交通量が多いところよりは、新たに自動運転専用レーンなどの仕組みを整備しやすいところの方から普及することになるでしょう。

 ICTの世界でも同様のことはいくらでもあります。自前のサーバーを持っていない中小企業の方がクラウドへの移行が一気に進めやすいとか、キーボード入力にどっぶり使っていない世代の方がスマホの入力の習得が速いといったことです。

 入力デバイスについては、人間の知的習慣においても「置き換えるより新しくやる」方が世代交代を図る上では容易であることを物語っています。過去の慣習を断ち切って何かをする場合、「今うまくやっている人」よりも「何も知らない人」の方が一気に新しいことを進める勢いが出てきます。

「今の資産」は次世代には重荷になる

 なぜこのようなことが起こるのでしょうか? ここまで述べた例については感覚的には理解できると思います。ある世代で築き上げた様々な資産(設備やノウハウなど)は、次世代に移行する時には重荷に変わってしまうことが往々にしてあるのです。

 例えば冒頭の店舗の「自動化」にしても、既存の流通網からすればすぐに「自動化」に舵を切るには難しい状況があります。良くも悪くも大量の顧客ベースを抱えているため、ICTリテラシーの低い人たちへの「配慮」も必要になりますし、大量の従業員や非正規労働者の雇用問題にもつながります。

 また既存のレジやそれを基にした動線をまずは意識した自動化を目指した場合、必ずしもゼロベースでの最適化ができるとは限りません。さらには移行方法についても「旧世代」を一気に置き換えるというよりは、「新旧混在」の移行時期を十分に経た上で、進めていく必要が出てきます。

 加えてシステムや業務プロセスなどに関して、たいてい二世代分の仕組みを混在させる必要が出てくるため、「更地からできる」プレイヤーに比べるとコストも大幅にかかることは容易に想像できます。

 このように一つの世代で最適化されてしまったものは、次の世代にとってはむしろ動きが遅くなる要因となり、身軽な新参者のスピードにはかないません。この構図は様々なイノベーションで同様に起こっていることです。

 ここまで述べたことは「新しい働き方」でも同様です。新しいワークスタイルを考える上では「立派なオフィスがある」ことや、「業務マニュアルが整備されている」ことは次世代への変革の重荷になる可能性があります。したがって、新しい働き方においても、それまで必ずしも「職場環境に恵まれていなかった」人たちの方が大きな役割を占める可能性が高いと言えるでしょう。

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