2015.12.14

未来の働き方を考える 第10回
「定額○○放題」から考える、進む"バイキング化"の背景

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 米国で飛行機の会員制定額乗り放題サービスが話題になっています。西海岸を中心に月額1500ドルで乗り放題サービスを始めたOneGo、プライベートジェットを活用することで同様のサービスを2013年からカルフォルニア州で開始しているSurf Air、テキサス州で展開中のRiseなどがその代表例です。

ますます増えていく「定額○○放題」

 「定額○○放題」といってすぐに思い浮かぶのは携帯電話のサービスです。これ以外にも最近のネット関連のサービスではこのタイプのサービスが様々な分野で増えてきています。クラウドコンピューティングの発展に伴って一気に増えてきた「定額使い放題」のいわゆるSaaS(Software as a Servics)型のアプリケーション、ソフトウエアに加えて、「定額見放題」の「Netflix(ネットフリックス)」や「Hulu」といったテレビや映画の視聴サービス、「定額聞き放題」の「Apple Music」のような音楽配信サービス等がその代表と言えるでしょう。

 さらに日本ではまだ始まっていませんが、アメリカでは「Kindle unlimited」という書籍などの「定額読み放題」サービスも提供されています。

 このような「定額○○放題」の"老舗"といえば「定額食べ放題」のバイキング料理ですが、このように世界中で様々なサービスの"バイキング化"が進行しています。この背景には何があるのでしょうか。

 ユーザー側のメリットは明確です。なにしろ料金のことを気にせずに好きなだけ商品やサービスを購入・利用できるのですから、特に"大食い"=ヘビーユーザーにとってはこれほどありがたいものはないでしょう。

 逆に提供者側にとってはどういうサービスがこのモデルになじむのでしょうか。売価が固定だということは、もしコストが可変であれば、ある程度の量をユーザーが購入・利用した場合に赤字になるリスクが提供者側にはあります。そのため、コストモデルがなるべく「固定費の割合が多い」ことが定額での提供には基本的に有利に働きます。

 そう考えれば、最近のクラウド型のネットサービスがほとんどこのモデルになっていることは納得できます。クラウド側にシステムを構築してしまえば、利用料が増えることによる変動費は固定費に比べると比較にならないほど小さいからです。

 この点から、航空業界のビジネスもこのモデルに比較的になじみやすいことがわかります。航空業界のビジネスモデルは、ホテル業界と同様、典型的な固定費型で、航空機やホテルの稼働率をいかに上げるかが重要な成功要因だからです。ただしネット系のサービスと比べてこれらが不利なのは、「満席」や「満室」といった設備上の上限がある点で、「乗り放題」にしても一定の条件を設けなければならない点です。

 ただいずれにしても相対的に「定額○○放題」にはなじみやすく、冒頭のような動きは他の固定費型の業界に広がってもおかしくはないでしょう。

「サラリーマン」は「定額制」の元祖?

 このような「定額○○放題」="バイキング化"の流れと私たちの働き方との関連を考えてみましょう。給与所得者の働き方も、雇う側の会社から見れば「月額定額制」の働き方と見ることもできます。もちろん、規定時間を超過した分については大抵の従業員は残業代として「変動制」の給与を手にできますが、それ以下の場合では(実質的にはどんなに働いていなくても)、会社は従業員に対して一定額の給与を払う必要が出てきます。

 いわば「部分的片側定額制」とでも呼べるシステムです。またこのシステムはバイキングのような単発ではなく、「月額制の自動更新」という点でネット系の「月額○○放題」の仕組みによく似ています。

 つまり、「サラリーマン」の世界というのは「月額定額制自動更新」のルーツとも言えるのです。そこで今度は逆の立場からこのシステムを考えてみましょう。自分たちが「定額○○放題」のサービスを利用する立場で「商品」(つまり従業員)がどう見えるかです。

 バイキングを始め、「定額○○放題」を契約した立場のユーザー側の心理として、以下のようなことを考えたり、思ったりしないでしょうか。

  1. なんとか「元をとってやろう」と思う
  2. そのために不必要なものまで頼んでしまう
  3. したがって、個々の商品やサービスへの扱いがついついぞんざいになってしまう
  4. (月額自動更新などの場合)一度契約すると、多少使わなくなってもずるずると契約が続いてしまい、なかなか解約しづらい

 会社に「こき使われる」という感覚も、1の要素を考えれば「買った方」からすれば当然の心境とも言えます。また、2については、仕事が早く終わったのなら、早く帰ってしまっても問題はないはずなのに、「余計な仕事を作ってでも」何か仕事をしてもらわないと損のような気がする」のも使う側からすればなんとなく理解できるのではないでしょうか。

 「バイキングで余計なものまで頼んで余計な肉がついてしまう」というのは、まさに会社でも同様のことが起こり得ます。早く帰らずに余計な仕事を作ると、それに関連する人の仕事も増えていき、「ぜい肉」がついて不健康になるのは会社の仕事も同じです。

 そのような扱いをしていると、3で述べたように、ついつい一つ一つの商品やサービスへの扱いが、都度購入するのに比べて"粗く"なってしまいます(バイキング料理だと、元をとろうと必死になって量重視になるあまり、一つ一つの料理を丁寧に扱うことを忘れてしまうといったイメージです)。当然そうなれば、会社のケースで考えると、扱われる方の従業員のモチベーションの維持に常に留意する必要が出てきます。

 最後の項目の、「ずるずる続いてなかなか解約できない」といったことは会社の雇用でも起こり得ます。法律上簡単に従業員に辞めてもらうことはできませんが、本来、働く側としては、「自動更新」に甘んずることなく、毎月更新してもらうことを目標として、常に成長による自らの価値向上を意識して日々の業務に取り組む必要があります。

 このように考えると、働き方の世界はネット系を中心とした世の中の流れと逆に、「脱○○放題」を考えてもよいかもしれません。前述した「サラリーマン」の働き方から脱却し、「こき使われず」「無駄をなくし」「常に自らの付加価値の時価を認識する」ためにも、「都度契約」のような緊張感を持った働き方がこれまで以上に増えてくるのかもしれません。

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