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2017.02.02

「まず隗より始めよ」で政府自身が取り組む
誰もが能力を発揮できる働き方改革への道

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 国を挙げて「働き方改革」への大号令がかかるようになり、様々な企業や団体で働き方改革への実践が始まっている。そうした中で、働き方改革の旗振り役である政府機関で働く国家公務員の働き方改革は、実際にどのように進められているのだろうか。

 国家公務員の働き方改革の取りまとめ役となっているのが、内閣官房 内閣人事局だ。それぞれの省庁の取り組みにとどまらず、政府を横断して働き方改革を推進するための国の人事行政に関する戦略的な組織である。同局で参事官補佐を務める渡部貴徳氏に、国家公務員における働き方改革の課題と、取り組みを聞いた。

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 安倍晋三首相が施政方針演説でも強調するほど、喫緊の課題となってきているのが「働き方改革」の推進だ。内閣人事局の渡部貴徳氏は、「働き方改革は官民を問わずに進めなければいけないテーマだと考えています。もちろん、政府としても自分たち自身のこととして働き方改革を推進する必要があります」と切り出す。

 そもそも、政府自身がなぜ働き方改革をしなければならないか。その背景として、渡部氏は3点を挙げる。

 「1つは国家公務員に占める女性職員の割合が増えていることです。採用される職員のうち女性職員の比率は政府目標では3割ですが、2年連続して3割を上回っています。平成28年度(2016年度)の採用では34.5%が女性でしたし、総合職に限っても33.5%が女性となっています」

 「2つ目は、共働き世帯が増えていることです。平成9年(1997年)以降、共働き世帯数が片働き世帯数を上回り続け、その差は拡大する傾向にあります。既に共働き世帯数は片働き世帯数の1.6倍にも上り、専業主婦が家を支え夫が外で働くというかつてのイメージが大きく変わってきているのです」

 「3つ目は介護問題です。高齢者人口が増加し、要介護認定者数も増え続けています。また、家族を介護している雇用者の雇用者総数に占める割合は女性で5.5%、男性で3.3%となっていますが、年齢階級別で見ると、特に55歳から59歳が最も割合が高く、女性の13.1%、男性の7.5%が働きながら介護をしています。今後はますます介護の問題が大きくなっていくでしょう」

 こうした背景から、今までの仕事の仕方を変える必然性が高まっている。長時間労働が根付いているような働き方では、共働きでの子育て、介護と、仕事を両立させるのは難しいからだ。

 「これまでは、育児や介護などで時間の制約がある職員については、超過勤務をしなくていいポストに異動したり、周囲の職員の負担増で対応したりしてきたことが少なくありませんでした。しかし、共働き世帯数が増加し、子育ても男女で同じように行い、仕事と介護の両立が求められるようになると、時間制約のある職員がますます増えていきます。ポストの配慮や周囲のカバーでは、立ち行かなくなるでしょう。その打破のポイントとなるのが、働き方改革なのです」

 すべての人にとって時間は有限だという前提の下で、限られた時間の中で生産性をなるべく高めて業務を回していこうとの考えだ。長時間労働に依存して仕事を回していくのではなく、時間制約のある職員を含む全ての職員が十分な能力を発揮して仕事ができるようにすることで生産性を高める。それが働き方改革のポイントとなるという。

 働き方改革を求める背景には複合的な要因があり、「これさえやればOK」という答えはない。渡部氏は「まず隗より始めよだと思いますし、些細に思える取り組みであっても、まずはできるところから地道にやっていくことが大切なのだと思います」と語る。

夕方を有効活用する「ゆう活」で意識改革

 「できるところから地道に」取り組んでいる国家公務員の働き方改革の1つが、「ゆう活」だ。ゆう活とは、日の長い夏の期間に退庁時間を早めて夕方の時間を家族と過ごしたり、趣味に使ったりできるようにする国民運動のこと。比較的容易にワークライフバランスの実現に寄与できる施策だ。

 「平成27年度(2015年度)の夏からゆう活を実施し、平成28年度(2016年度)は2回目となりました。7月、8月のワークライフバランス推進強化月間(WLB月間)に実施したもので、遅くとも17時15分までに終業時間を設定して、なるべく早く帰る働き方を推進するものです。初年度は、早く帰る分だけ早く来なければならなかったので、保育園の送り迎えに支障をきたすようなこともありました。この点、2016年度は、2016年4月に原則として全職員を対象にフレックスタイム制が拡充されたことで、フレックスタイムによる勤務期間の1週間当たりの時間数が法定の勤務時間数に達していれば、日ごとの勤務時間の調整ができるようになり、ゆう活がより実践しやすくなりました」

 フレックスタイム制との併用もあり、2016年度のゆう活の実施状況は、2015年度よりもさらに進展した。本府省など内部部局でゆう活を実施したのは前年度の3万7000人を上回る4万人。ゆう活を実施しない機関の職員を除いて91.5%の職員が実施(前年度は86.7%)、期間中の毎週水曜日の定時退庁率はゆう活実施者の73.3%に上った(前年度は60.9%)。着実にゆう活の効果は上がっているようだ。

 「ゆう活を始めてから、様々な工夫が生まれています。ゆう活期間には16時15分に退庁する人がいるので会議は16時までに終わらせるようにする、夜遅くなってからの各省庁への照会をやめる、といったものです。夜に仕事をせざるを得ない状況をなくす取り組みです。内閣人事局では、ゆう活期間以外にもこの考え方を広げています。例えば、各人が『今日は何時に帰ります』という札を机上に出すようにしました。こうすることで、本人がその時間内に仕事を終わらせる意識を高められますし、仕事を依頼する場合も、相手の退庁時間に合わせて頼むように意識が変わります。長時間労働をしている人ほど仕事をしている、という雰囲気から脱却するきっかけになっていると考えています」

 ゆう活の実施は、実施そのものによる効果も期待しているが、「できることから始める」ことによる働き方への意識改革の効果をより多く狙っているようだ。働き方改革は人事評価にも反映されるようになっていて、ワークライフバランスや働き方改革に留意するように内閣人事局から各省庁に通知しているという。例えば、評価の目標として「超過勤務時間を1割減らす」といった目標が立てられているそうだ。

 「働き方改革は、トップダウンとボトムアップの両方の動きが重要だと思います。上司が率先して実施することで、部下がやりやすくなるという部分も大きいでしょう。それと同時に、トップダウンで言われるからやるというだけでなく、各職員が当事者として問題意識を持つことも重要だと思います。地味に思われるかもしれませんが、そうした意識改革が有効なのだと思います」

 渡部氏は、「既存の制度や仕組みありきではなく、実際に生身の人間が使うことに思いを致すことが重要です。例えば、フレックスタイム制にしても、使い勝手に改善の余地があるのであれば、それを変えるといった発想が必要です。時間制約のある職員を含む全ての職員が十分な能力を発揮できるようにする、それこそが働き方の意識改革なのだと考えています」と語る。

 国を挙げての働き方改革の旗を振る政府、その政府の中で国家公務員の働き方改革の旗振り役を担う内閣人事局では、意外なまでに柔軟なスタンスで働き方改革の一歩を踏み出しているのだ。

 後編では、テレワークやリモートワーク、ITを活用した働き方改革も含めて、内閣人事局が推進する国家公務員の働き方の変革の動きを渡部氏に聞く。

text:Naohisa Iwamoto pic:Takeshi Maehara

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