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2016.08.23

震災復興から社会貢献のコーディネートへ
NPO事業を継続させるための仕掛けを作る

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 NPO(Non-Profit Organization、非営利団体)と聞くと、「ボランティア」「手弁当」「滅私奉公」的な仕事をイメージする人も多いだろう。一般社団法人RCFは東日本大震災を契機に、復興支援や社会課題の解決に向けたコーディネートを行う非営利団体である。東京・赤坂に明るいオフィスを構え、約60人の従業員を抱える様子は、NPOというよりも勢いのあるスタートアップ企業を思わせる。復興支援や社会課題解決のプロ集団を目指してNPOを立ち上げた理由はどこにあるのだろうか。 一般企業のボランティア事業とはどこが異なるのだろうか。そして、目指すところはどこにあるのだろうか。代表理事の藤沢 烈氏にRCFの事業へのモチベーションを聞いた。

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注:本記事では「NPO」という用語を広義の「非営利団体」として用います。狭義の「市民団体」もしくは最狭義の「特定非営利活動法人」(法人格)ではありません。

 一般社団法人RCFは、2011年9月に設立されたNPOである。設立から5年、東日本大震災の復興支援を端緒に、まちづくりや産業創出、教育、人材マッチングなど多岐にわたるプロジェクトに関わり、社会課題の解決に貢献してきた。RCFで代表理事を務める藤沢 烈氏に、そもそものRCFの成り立ちを尋ねた。

 「マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤めた後、NPOや社会事業向けの経営コンサルティング会社を経営していました。そうした中で東日本大震災が起き、私がコンサルティングをしていたNPOは皆、現地へ駆け付けました。自分も何か手伝おうーーそう思って私も現地へ向かいました。最初は3カ月程度の期間限定で復興支援に携わるつもりでしたが、やるべきことは大きいと感じ、震災から半年後に、NPOである一般社団法人RCF復興支援チーム(現一般社団法人RCF)を立ち上げて現在に至っています」

 元々はNPOを運営していたわけではない藤沢氏。東日本大震災を契機に、営利事業から非営利団体へと軸足を移すことになった。世の中を見渡すと、一般の企業でもボランティア事業にリソースを割いて社会貢献に力を入れているケースはある。こうした一般企業の社会貢献と、NPOを立ち上げて行う社会貢献では、意味合いは違うのだろうか。藤沢氏はこう答える。

 「双方では、発想が違いますよね。一般企業の中でのボランティア活動は、営利活動のうちの一部、例えば10%といった時間を社会貢献に割くものです。一方で、NPOではフルタイムジョブとして社会貢献に関わります。団体としても従業員個人としても、100%の割合で社会につながる仕事をするわけです」

 仕事のモチベーションにしても、経営判断にしても、その軸は一般企業のように最終的には利益を上げることにつながるのではなく、すべて社会貢献につなげることにある。RCFはその軸足を復興支援に置き、そこで得られたノウハウを生かして社会の変革へとつながる貢献をしようとしているのだ。

専門スキルを持つ人が長く仕事ができる事業継続を目指す

 RCFは、5年で約60人の従業員を抱えるまでに成長した。NPOというと、従業員は無報酬のボランティアなのではないかと誤解されがちだが、それは違う。

 「確かに、NPOは儲けるためのビジネスをするわけでも利益を上げることを目的にするわけでもありません。一方で、社会貢献の事業を実施して継続させるためには資金が必要ですから、企業などクライアントから正当な対価をいただいています。RCFでは従業員も全員、有給スタッフです。社会貢献には専門性が求められますし、時間も必要です。専門的なスキルを持った人に長く仕事をしてもらうためには、一定水準の報酬が必要になるわけです」

 フルタイムで社会活動事業の仕事をするRCFの従業員には、コンサルタントや企画部門など企業出身者も多いという。様々なステークホルダーが絡みあってくる復興支援を切り盛りするには、かなりの企画力やコミュニケーション力が求められる。社会貢献のための活動は無報酬、などという考えでは、確かにスキルのある人材に継続して活動に参加してもらうことができないだろう。

 「実務的には、コンサルティングにかなり近いと考えています。企業や自治体に社会貢献の枠組みで何ができるかを企画、提案するのが第一の仕事になるからです。企業が自社のリソースを使ってボランティアをしたいと考えたときに、その力を使って大きな社会貢献につなげるような提案をしていきます。行政だけではできないことを、企業やNPOなど民間の力を組み合わせることで解決に導く。こうした仕事には高いスキルが必要です」

 社会貢献というと、行政が担うと考えるのが一般的だろう。行政ではできないこととは、どのようなことだろうか。

 「行政は、補助金を提供したり、被災した家や工場を再建したりするような事業に関してはとても高い能力を持っています。しかし弱いところもあります。その一つはコミュニティー形成です。震災が起こると、避難などによって地域がばらばらになってしまいます。こうした地域のつながりをどのように維持し、作り上げていくかは、行政はあまり得意ではない分野でしょう。産業支援も同様です。震災後に東北の多くの産業は大きな打撃を受けました。単に資本主義的な支援をするだけだと、地域の事業者は立ちゆかなくなり、雇用もサービスもなくなってしまう危険性があります。そこで私たちNPOが仲立ちし、どのような解決方法があるかを分析し、企業の力を借りながら実行していくわけです」

 人や地域をつなぐコーディネーターとして、RCFのメンバーは各地の課題を解決するために精進している。地域住民がいて、行政があって、企業がある。いずれも復興に向けた課題解決を目指していながら、実際には有意な活動に仕立てるのは難しい。RCFは、そうした複数の要素が有機的に活動して社会問題の解決に向かわせるための触媒のようなものかもしれない。藤沢氏は「現地の皆さんが当事者」と言うように、RCFのコーディネーターはコンサルティングして終わりではなく、チームを組んで一緒に動き伴走しながらも、一定期間が過ぎたら当事者だけで事業を回せるようにと一歩引いた立ち位置を守る。そうしたバランス感覚も、「プロ」のコーディネーターには求められる。

求めるのはプロ意識が高い人、運営は会社経営よりよほど難しい

 社会貢献を第一義に活動するRCFでは、どんな人材を求めているのだろうか。人材への要求事項には、一般の企業と違いがあるのだろうか。藤沢氏は、RCFの従業員の現状を伝えながら、こう語る。

 「RCFでは、実際にかなり多様な人材が従事しています。企業出身者も行政出身者もいます。前歴としては国際協力系の人材が多いですが、メディア出身のメンバーもいます。男女はほぼ半々で、少し女性が多いでしょうか。年齢層も20代後半から40代が中心で、50代も2人と幅広いです。ダイバーシティを意識した採用をしているわけではないですが、多様性がないとできない仕事でもあり、多様性を維持することはどこかで考えていると思います」

 企業からRCFへ移ってくるメンバーには、「社会的に意味のある仕事をしたい」という意識が強いという。ただし、社会に対する接し方というのは、かなり難しいようだ。

 「あまり正義感が強すぎる人は、かえってRCFのような社会貢献の仕事には向かないかもしれません。社会意識ばかりが高い人よりも、何かを解決できるプロ意識が高い人、やり遂げられる人が仲間になって仕事をしてくれるのがいいですね。言い換えると、ある種の職人にニュアンスは近いかもしれません」

 震災をきっかけに、東北地方を中心とした復興から社会貢献への活動を支援してきたRCF。藤沢氏は、「きちんとしたNPOは、社会解決ができて、それを継続することが必要です。これは、上場企業の経営並みに難しいことだと考えています」とその道のりを表現する。それでも、「経済的価値だけでは解決できない課題に『事業』として持続的に取り組んでいる」という意義をモチベーションとして、団体としてのRCFも、そこで働く人々も、日々前進しているようだ。

text:Naohisa Iwamoto pic:Takeshi Maehara

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