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2016.07.29

多様化を受け入れる世界にゴールはない
新たなコミュニケーションの姿を模索し続ける

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 クラウドセキュリティサービスの「HDE One」の提供や、法人向けソフトウエア開発などを手掛けるHDEは、外国人やワーキングマザーを積極的に採用することで成長のエンジンを確保している。こうした新しい採用の形は、クラウドビジネスを前進させるための苦肉の策だったが、多様化の推進にもつながっている。HDEで人事部長を務める高橋実氏は、多様化への対応を「ゴールのないチャレンジ」と語る。コミュニケーションの形、それを支えるITの力、そしてスタッフの働き方に至るまで、HDEの終わりなき変革について聞いた。

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 創業から15年目の2011年、HDEはそれまでのソフトウエア開発のビジネスモデルから、クラウドビジネスに事業の軸足をシフトすることに決めた。クラウドビジネスに必要な人材を求めていくと、採用はグローバル人材や育児中の女性へと拡大。それに合わせて社内の公用語を英語にする取り組みを進めるなど、大きな変革を実行している。もちろんこうした変化は一筋縄では進まない。グローバル採用や英語の公用語化でも、導入には反対意見があったという。「グローバル採用で英語しかできないスタッフを採用したら、コミュニケーションロスで大変なことになる」という意見だ。

 「HDEは20年の歴史の中でほんの数年前までは『管理型会社』だったと思います。しかしスピードが速く大きな環境変化に対応するには、人材が自律性をもって動いていかなければなりません。以前の管理型のモデルから、社員が自律してそれぞれが能動的に動けるようなモデルに転換し、自由度を高めることで、イノベーションの速度が圧倒的にあがるようになってきています」

 一方で、こうした変化は痛みも伴う。高橋氏は、「従来型の業務に馴染んでいたスタッフと新しい業務に適したスタッフの間で、衝突が起こることもありました。英語公用語化などの新しい動きに追従できないスタッフもいました。会社が成長していくときに、スタッフは会社組織以上に成長しないとキャッチアップできなくなりますし、それに追いつけないと仕事をすること自体が苦しくなってしまいます。実際にHDEを"卒業"していったメンバーもいましたし、そのメンバーの転職先を探すなどのフォローもしたことはあります」と語る。

 そうした痛みの時期を通過し、「辞める社員が減って、会社のベクトルと社員のベクトルが合ってきたように感じる」と高橋氏は言う。グローバル採用も定着し、新規採用の多くが外国人になってしまっているほどだ。「日本人の新入社員が来ると、驚きの声が上がるようになってしまいました。ダイバーシティという意味では、逆に偏りができてしまっているのかもしれません」と高橋氏は苦笑する。

適材適所のITツールをベースにコミュニケーションロスをなくす

 育った環境や考え方の異なるグローバル採用のスタッフや、在宅勤務のスタッフが増えていくと、管理職の仕事はこれまで以上に大変になりそうだ。コミュニケーションの仕方が従来の日本企業に見られたような阿吽(あうん)の呼吸とは異なってしまうからだ。英語でのコミュニケーションの課題は当然あるとして、在宅勤務をしている部下との円滑なコミュニケーションの仕方も考えなければならない。

 「いかにしてコミュニケーションレベルを維持するか、議論しながら運用しているところです。大きいのはITツールの使い方ですね。クラウドサービスを提供している会社ですから、自らがクラウドを一番活用している会社でなければ商品を売れないと考えています。そうした考えから、オフィスでも自宅でもさらにはまんが喫茶であろうとも、同じように仕事ができるクラウド環境で業務システムが動くようにしています。もちろん、クラウドで全てが今まで通りにできるとは限りませんが、課題を発見して対応していくことで、ベストソリューションに近づけられると考えています」

 業務システムとしては、米Salesforce.comの「Salesforce」とその関連ツールを中核に据えながら、マーケティングオートメーションツールとしてはマルケトの「Market」を、勤怠管理にはチームスピリットの「TeamSpirit」を活用。場所を問わず、社内外で同じように仕事ができる業務インフラが、クラウドサービスによって形作られている。スタッフには、在宅でも外出先でも仕事をした時間はTeamSpiritにきちんと登録するようにと伝えている。場所はどこであっても勤務した時間を把握し、そこからそれぞれのスタッフのパフォーマンスを見極めるためだ。

 人と人のコミュニケーションもITツールがサポートする。しかし、会社側から特定のツールを使うように「通達」するといったことがないのがHDEの柔軟なところだ。高橋氏はこう語る。

 「職種や相手によって、使い勝手の良いコミュニケーションツールに違いがあるようです。管理部門のスタッフは『Facebook』やブログならば使いやすく、東南アジアの取引先とは『LINE』を活用することもあります。エンジニアはレスポンスよく共同作業ができるビジネスチャットツールの『Slack』が使いやすいようですが、管理部門のスタッフになるとSlackなどは使いにくいようです。このように適材適所でツールを使い分けながら、社内全体としては電子メールと、マイクロソフトのチャットツールである『Yammer』は見ておくといった不文律があるような状況です」

 ツールを社内規定などで統一するのではなく、業務に適したコミュニケーションツールを現場が縦横無尽に使うことで、文化や時間といった制約を超えたスムーズなコミュニケーションを実現していく。対面でリアルなコミュニケーションができないことを前提として、ITツールを使ったテキストメッセージのやりとりでコミュニケーションロスを極限まで少なく保つ。それがHDEの新しいコミュニケーション文化なのかもしれない。

コミュニケーションや働き方の変化が企業の成長の道を切り拓く

 業務の内容もスタッフの属性も、変化を続けるHDE。今後の規模の拡大を目指す中でコミュニケーションスタイルやワークスタイルはどのように変化していくのだろうか。高橋氏は、「多様化をいかに組織に融合させていけるかがカギを握ると思います」と語る。

オープンスペースにあるドクターペッパーの自販機。社長が好きということもあり、ゼロ円で提供。これも福利厚生の一環だ

 その一つが、文字コミュニケーションのさらなる進化だ。グローバル採用の社員、在宅勤務のスタッフ、エンジニアや営業担当者、ボードメンバーといった多様な人材に対して、ITツールを使って「自分の伝えたいこと」を正確に文字で届けられるスキルがさらに求められると高橋氏は指摘する。対面ならば、不明点はその場で問いただせば済む。しかし、ITツールを使ったコミュニケーションでは、1回の連絡で意図が通じないと、無駄な情報のやり取りが発生して労力も時間も無駄になってしまうというわけだ。

 「SNSなどのITツールでは、24時間のどこかで非同期コミュニケーションが取れることが前提です。24時間に1回のチャンスに、1回の連絡で意図が通じなかったら、パフォーマンスが一気に低下してしまうわけです。リアルなコミュニケーションに頼らず、ITツールで意思疎通できるコミュニケーションスキルが要求されるのです。また、日本人同士の英語のコミュニケーションも、きちんと言いたいことを言葉だけでなく文字で伝えられるようにする必要があります。フェイス・ツー・フェイスのパッションあふれるコミュニケーションよりも、HDEでは文字でロジカルに相手に意図を伝えられて、それを理解できるコミュニケーションスキルが求められるのだと思います」

 HDEでは2020年に現在のおよそ2.5倍にあたる250人の規模への人員拡大と、現在の10倍にあたる事業規模を目標に掲げている。2.5倍の人員で10倍の事業規模を実現するには、一人当たりのパフォーマンスを大幅に向上しなければならない。そのためには今後も、優秀な人材を求めていく。すなわち、グローバル採用やワーキングマザーを含めた多様な人材を登用していくことになる。

 「例えば、グローバル採用のスタッフは、ロジカルなロール(役割)をきちんと受け止めて仕事をする傾向にあります。しかし、英語を公用語にして、ロールを核に据えた仕事の仕方をするだけでは、日本の企業である良いところが生かせません。日本出身のスタッフにはロジカルなロールの良い所を取り入れてもらい、一方でグローバル採用のスタッフには(対面する場合は)阿吽の呼吸のようなものを理解してもらいたいと思います」

 HDEのコミュニケーションやワークスタイルの変革は、まだ始まったばかりのようだ。「多様化を受け入れる世界にゴールはないと考えています。ダイバーシティにゴールの絵を描いてしまったら、そこから先の多様性を受け入れられなくなるのではないでしょうか」。一人ひとりと向き合い、最適なコミュニケーションの形を模索しながら、スタッフも会社もパフォーマンスを最大化する。そんな働く環境を作るために、多様化への対応は高橋氏にとって今後も継続したミッションであり続けるだろう。

text:Naohisa Iwamoto pic:Takeshi Maehara

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