企業の広報、PR支援サービス「プレスリリースプラットフォーム(PRP)」を提供するリアライズでは、メディアと企業を双方向でマッチングさせる機能を用意して、双方からメリットを引き出すことに成功している。メディアに掲載してほしい企業と、ネタがほしいメディアの仲を取り持ち、ビジネスを成り立たせているのだ。

 他社の広報、PRを支援するリアライズの社員の働き方はどのようなものだろうか。リアライズ代表取締役社長の本村 衆(もとむら・あつむ)氏は、女性の比率が高い同社社員に、気持ちよく働いてもらう環境を整えることを考慮しているという。

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 リアライズは、企業の広報、PRを支援するプレスリリースプラットフォーム(PRP)を提供し、企業の広報力を高めることの重要性を訴える。本村氏はこう語る。

 「経営の中にPRの概念を取り入れることが重要です。企業のブランディングにもつながりますし、広告費の削減といったコスト効果も表れます。さらに採用にもプラスになる効果があります。PRを経営に取り入れることで、お金を生み出すのです。中堅企業でも、専任の広報、PR担当者は必要でしょう。広報担当者を1人雇って売り上げが上がる企業を多く見てきていますから、役に立たない営業担当者を1人雇うよりもよいと伝えるようにしています」

 そのような企業の「PR」の仕事をサポートするおよそ50人のリアライズの社員は、6割から7割が女性で占められている。本村氏は、対人関係が重要になるPRの仕事は「女性のほうが圧倒的に優秀だと思います」と評価しているためだ。

顧客管理から勤怠管理までICTが仕事を支える

 リアライズのオフィスは、東京・港区の青山にある。地下鉄・外苑前の駅前で、ビルの1階には高級輸入車のショールームがあるといったロケーションだ。オフィスは、部屋ごとに内装のカラーリングなどが異なる。照明も家具も、オフィス用のありきたりのものではない。例えばデスクなどは注文して作ったものだという。

 「女性が多いということもあって、オフィスの立地やオフィス内の環境には気を使っています。オフィスにお金をかけても、たかが知れています。オフィス環境を整えることで、より良い人材が社員に採用できれば、経営的には安いものです」

 現在のオフィスでは当初、内装も工夫した女性専用のパウダールームを作ったそうだ。ただ、パウダールームまでは不要だったと見えて、時間が経つに連れて倉庫になってしまった。現在は、会議室に改装したと本村氏は笑う。

 そうした環境面からの就労支援はもちろん、ICT活用による業務支援も行っている。iPhoneとiPadを5年前に全員に支給し、社内外で業務に活用できるインフラを整えている。

 しかし約2年前まで、PRPのクライアントである企業の利用状況や、メディアの活用状況といった管理、社員のスケジュール、勤怠、精算などの管理は個別のシステムでバラバラに行っていた。社員数も増加し、一元管理の必要性が高まってきたことから、セールスフォース・ドットコムのサービスを使い、一元化した。その際、セールスフォース・ドットコムからの紹介などもあり、スケジュールはrakumoが提供する「rakumo」を、勤怠・経費精算はチームスピリットの「TeamSpirit」を、それぞれオリジナル機能を追加する改変を加えて導入した。

 「TeamSpiritを利用している勤怠管理では、地図情報と連動し、業務終了後にその場ですぐに終業報告できます。交通費精算も移動中にスマートフォンで情報を入力してしまえば終わりです。通勤定期券が支給されている区間を差し引いて精算するといったことが自動的にできるので、とても効率が良いと感じています。ICTをうまく使うことで、本業に集中できる環境が整えられるのです」

 リアライズでは、残業も基本は20時までと決めている。広報、PR業界は長時間の仕事になりがちだが、そうしたワークスタイルに陥らないようにとの配慮だ。それでも、業務に追われるとオーバーワークになってしまう社員も出てくる。本村氏はこんな風にICT側にリクエストを出す。

 「TeamSpiritに要望があるとしたら、月間の残業の累積時間が基準を超えそうな場合、早期に管理者へアラームを上げる機能を付けて欲しいということでしょうか。残業が多い人は、どうしても偏りがちになるので、残業時間の基準を超えてしまう前に、管理者からサポートできるようにしたいです」

 ICTはあくまでも、周りから緩やかに仕事をサポートするための道具と、見極めているようだ。本村氏の中ではICTも、青山のオフィスや、デスクなどの什器へのこだわりと、同列の「働きやすい環境」の提案の1つなのだろう。

フレックスで働ける業務も用意

 柔軟な働き方をサポートしているリアライズだが、一般の社員の就業時間はフレックス制ではないという。フレックス制を採用しているのは、一部の特別な社員だけだ。

 ここで少し業務の話題に触れる。「インターネット上の記者クラブ」をコンセプトとするPRPを導入している企業は、プレスリリースをメディアに開示することができ、テーマごとのメール配信も利用できる。さらに、リアルなセミナーや勉強会への参加権も得られ、ノウハウのインプットもできる。とはいえ、実際にメディアの気持ちを引きつけるプレスリリースを作るのは至難の技だ。アウトプットが難しいのだ。

 「PR代理店ではないので、リアライズがプレスリリースをどんどん作成するという仕事の仕方はしていません。オプションのサービスとして、企業ごとの担当者が、週に1回、1時間打ち合わせをして、月1本程度のプレスリリースを発行するような支援を提供しています。この業務では、フレックス制にすることで、事情で長時間働けないPR経験者といった人材が活躍しています」

 企業にとって、広報、PRのプロを1人雇うとなると、大きなコスト負担になる。専属のPR担当者をリアライズが用意することで、大きなコスト負担になることなくプレスリリースの発行などの広報業務を遂行してもらえるのだ。

 「広報の新しい働き方として、約10人の部署を設けています。社員1人が5社を受け持ち、それぞれの会社のPR業務を担当するわけです。フレックス制の社員は勤務時間に合わせた企業数を受け持ってもらう働き方です」

 PR業界自体、女性の人材が多く、社長の本村氏自身が女性の優秀さを認めているとなると、女性にライフイベントを乗り越えて働いてもらう工夫が必要になる。その1つが、広報代理のオプションサービスであり、フレックス制であるというわけだ。こうして適材適所に応用する例を見ると、多くの企業で幅広く使われているフレックス制も、ピリリと効果のある制度だと感じてくる。

 「歓迎会や決起会は、四半期に一回程度、社員全員で集まって開催しています。前回は屋形船をチャーターして、社員全員で浴衣を着て決起会を行いました」と本村氏は語る。新しい広報、PRの形を提供していくリアライズは、柔らかくそして少し"昭和的"な暖かさで、社員を支援していくようだ。

text:Naohisa Iwamoto pic:Takeshi Maehara