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 「AI(人工知能)やロボットによって近い将来置き換えられる仕事」が話題になっています。単純作業や定型作業がその代表です。あるいは単なる知識量や情報量で勝負する仕事も機械に置き換えられていくのは時間の問題といえるでしょう。

 逆に置き換えられない職業として、創造性が必要な芸術家や作家などが挙げられていますが、このような世界にもAIの足音はひたひたと忍び寄ってきています。AIによる自動作曲もその一つです。

人工知能、機械学習が「作曲家」「作家」になる?

 例えば2015年12月、米Jukedeckは、著作権フリーでかつ、世界に一つだけの曲をAIが「自動作曲」してくれるフリーミアムモデルのサービスの提供を開始しました。一般の人が動画サイトに投稿するビデオ用の音楽を、機械学習の技術を応用して瞬時にAIが"作曲"するものです。

 「本を書く」という、これまた創造的作業の代名詞についてもコンピュータが進出しています。著名な経営大学院であるINSEADのPhilip M. Parker教授は、自らが開発したシステムの自動執筆による「書籍」を大量にネットで販売しています。恐らく、このような「創作」になじむのは、大量の事実を、ある定型的なフォーマットに従って「流し込む」ことで生成できるものでしょう。

 もちろんこれらの例は、作曲にしろ執筆にしろ、ある程度定型化やパターン化が可能な世界に限定した「創造性」であり、純粋に斬新な芸術作品や文芸作品を生み出すことは、今のところ人間の方が圧倒的に勝っています。とはいえ、必ずしも「創造的な作業は機械には無理」とされていた世界であっても、人間が優位性を保ち続けられるわけではないという危機感を感じさせるには十分な状況となりつつあると言ってよいでしょう。

 さらに注目すべきは、これらによって、単に人間の作業を代替するだけでなく、例えば音楽の世界で言えば著作権を気にすることなく極めて短時間でオリジナル(世界で1曲だけ)の曲を選べたり、膨大なネット上の情報をもれなく検索してまとめたりといった、創造性以外にも、それまで人間ではできなかったことを実現できるようになっている点は注目すべきでしょう。

仕事への影響は? 「報告のための報告」はなくなる?

 では、このような動きは私たちの仕事にどのような影響を与えるか考えてみましょう。例えば「自動編集機能」は、うまく使えば「○○報告」の類(出張報告、不具合報告、イベント報告など)のレポート作成には絶大な効果があるでしょう。これらの報告書はまさに、「事実を集めて」「定型フォーマットに流し込む」ものだからです。

 創造的な人ほど、このような報告書を書くのが後回しになります。過去に起こったことをまとめるという作業は、企画などの将来に向かった仕事に比べて後ろ向きに見えるからです。また、ITシステムの導入によって、様々な入力作業やレポートが増えてしまい、本来効率的になるはずの業務がむしろ煩雑になったというのもよくある話です。

 このように、必ずしも定型的とまではいきませんが、「後ろ向きな報告作成や入力作業」から一気に解放される可能性を自動編集作業は秘めています。そうなれば、「仕事を奪われる」のではなく、まさに創造性のより高い仕事に人間が集中するための環境整備ができるようになるのです。

 逆にこのようなことが実現されてくれば、「報告のための報告」という業務自体がなくなってしまう可能性があります。中身はともかく、「営業日報を出せ」といっているだけのマネージャーの仕事がなくなるのは時間の問題といってもよいでしょう。