個性的な「キモかわ☆にゃんこ」が日本や世界で大暴れする、タワーディフェンスゲーム「にゃんこ大戦争」を開発・運営するポノス。本社を京都に置く企業で、2015年10月に東京・恵比寿に「江戸オフィス」を構えた。同社の企業スローガンは、「GO FAR BEYOND(ナナメウエを、行け)」で、社員には常に、「ナナメウエ」の発想を意識することを求めている。

 そんなポノスは、2015年4月に勤怠や購買などを一元管理できるクラウドサービス「TeamSpirit」を導入した。業務の管理でも「ナナメウエを、行け」るように、どのような取り組みをしているのか。同社 管理部副部長の関 博之氏に導入の経緯とその効果について聞いた。

 ポノスは1990年に創業した歴史のあるコンテンツプロバイダーだ。これまで、携帯電話向けのゲームなど、コンテンツを通じてエンターテインメント文化の発展に貢献してきた。その後、2012年にリリースしたスマートフォン向けゲーム「にゃんこ大戦争」のヒットにより、同社はさらなる成長期を迎えた。2014年頃までは京都を拠点に40人ほどのスタッフで事業を行っていたが、2015年には80人規模に拡大し、東京の恵比寿に「江戸オフィス」も構えるようになった。急速な会社の成長に伴って、業務の管理という仕事の裏方にも新しい助っ人が必要になった。同社 管理部副部長の関 博之氏はこう語る。

 「最も直接的な要因は、備品購入に関する社内手続の問題でした。当時は、申請が紙ベースでしたが、スタッフの増加で申請件数が増え、紙ベースでは管理や保存も大変になってきていました。それだけでなく、申請書類を作り、印刷して上司に持っていき、承認印をもらう必要があるため、購入までに時間がかかるという問題もありました」

 そこで、まず備品や消耗品の購入について、システム化を検討することになった。2014年の夏頃のことだという。その当時も勤怠管理システムは導入していたが、その他の業務管理システムについてはまったく手つかずだった。

 「サービス提供会社も把握していなかったほどで、インターネットで調べて話を聞いて比較検討するといった状態でした」と関氏は笑う。

ワンストップのシステムで、いろいろな管理をまとめたい

 ポノスでは、新しくシステムを導入するに当たって、4社のサービスを比較検討した。もちろんどのサービスでも備品購入のシステム化はできた。コスト面も検討の要素ではあったが、最大の決め手となったのは1つのサービスで複数の業務を管理できる多機能性だったという。

 「ゲーム開発をしていますので、工数管理がシステムに入ればいいなという要望はありましたし、既存の勤怠管理もまとめられれば便利だなと考えていました。稟議制度もシステムで整えたいという希望もありました。備品の購入だけでなく、これらをまとめて対応できるサービスだったのが、TeamSpiritでした」

 また、多くの機能を備えながら、コスト面でも、比較したサービスの中で優位性があった。そのため、最終的に、ポノスが求めた要件を満たしていたTeamSpiritの導入が決まった。

 しかし、実際の導入は苦労の連続だったという。当時の拠点は京都だけでスタッフは40人程度。専任のシステム担当者はいないため、2人ほどの総務や経理のメンバーが通常業務の合間にシステム化の対応をすることになった。

 「稟議のワークフローを作るだけでも、画面を見ているだけではわからず、マニュアルを見ても最初は難しいと感じました。機能が多くあることを決め手としてTeamSpiritを選んだのですが、多機能性と導入の容易さは表裏一体だったかもしれません。シンプルな機能のサービスだったら苦労は少なく済んだでしょう。とはいえ、覚悟していたことなのでなんとか導入し、運用までこぎつけることができました」

 2015年4月、TeamSpiritの運用が始まった。当初は京都のオフィスで40人程のスタッフでの運用だったが、その後2015年10月の江戸オフィス開設を経て、現在150人規模に膨らんでいる会社を、TeamSpiritが裏から支えた。

 「導入、運用を通じて、大きな問題点はなかったと言ってもいいでしょう。スタッフからの不満も出ておりません。購買も経費精算も簡単にできますし、工数の登録も簡単です。今ではTeamSpiritを導入してから入社したスタッフの方が多いので、仕事をする上で、なくてはならないシステムという感覚だと思います。唯一、良くなかった点があるとすれば、私のようにシステムに関する知識が少ないと、初期の導入に苦労するぐらいでしょうか」。関氏はそう言って笑う。

スタッフ増加に伴う管理業務の増加をシステム面から支える

 導入のきっかけとなった備品や消耗品の購買については、効率が良くなったことを実感している。紙ベースの時代は、申請書を作成したタイミングに上司が不在の場合、後日、承認印をもらってようやく必要なものが買えた。TeamSpiritを導入したことで、申請を上げてから必要があれば個別にメールなどで連絡をすれば、すぐに承認が下りるようになった。

 「備品の購入はかなり多いと感じています。開発系のソフトウエアを購入するといったことだけでなく、当時はスタッフが増えていたので入社準備のための備品購入やオフィス増床に伴う備品・消耗品の購入もありました。TeamSpiritの導入で、購買のスピード感が上がりました。スタッフが急増する前に導入できたのは良かったです」

 TeamSpiritでは、備品購入だけでなく、導入前に想定していたように複数の業務管理を実際に行っている。立て替え払いの精算、稟議、勤怠管理と工数管理などである。最近になって、ポノスではフレックスタイム制を導入したが、その際もTeamSpiritがシステム面から支えてくれたという。

ポノスが利用しているTeamSpiritの画面

 「フレックスタイム制への移行を検討したときに、システムでどのような管理ができ、どのような情報を出力できるのかを確認しました。すると、TeamSpiritの勤怠管理機能はフレックスタイム制への移行で私たちが求める機能がすべて用意されていました。TeamSpiritがあったから、フレックスタイム制への移行がスムーズにできたとも言えます」

 以前の勤怠管理システムでは、指紋認証が必要で、出勤のピーク時には指紋認証機器の前にスタッフの行列ができて打刻が遅れて「遅刻」になるといった笑えない話もあったそうだ。TeamSpiritでは自席のパソコンにログインして打刻することで、こうした問題も解決できる。

 「オフィスでの開発の仕事がメインですから、外出先に直行直帰をしたりするような勤怠管理をすることもありません。基本的には社外からのTeamSpiritへのアクセスは禁止しています。承認者である上司だけは、社外からのアクセスを認めて、スムーズな承認ができるようにしています」

 最後に関氏は、TeamSpiritへの評価をこんな表現で語ってくれた。

 「TeamSpiritでは様々な機能が提供されていて、日々アップデートもされています。今後、仕事の仕方が変化したときにTeamSpiritだけあれば対応できるという安心感があるのはありがたいです。機能をどれだけ使っても、コストが増えるわけではないですしね」

 スタッフ数が3倍以上に膨れ上がる業務急拡大の時期をともに乗り越えてくれたTeamSpirit。今後のポノスの業務の成長や仕事の仕方の変化に対しても、しっかりと対応してくれると信じ、裏方を安心して任せているようだ。

text:Naohisa Iwamoto pic:Takeshi Maehara