厚生労働省が2017年1月に発表した情報によると、2016年10月末現在の外国人労働者数は約108万人。この数は届け出が義務化されて以来、過去最高を更新したとのことです。

他方、少子化と高齢化の影響から、日本では生産年齢人口の減少が懸念されています。発表によると、「2030年にかけて、生産年齢人口の減少が加速。国際的にみても、日本の生産年齢人口の減少率は大きい。労働参加が進展しても、2030年までに就業者数は減少する見込み(2017年1月25日 経済諮問会議「2030年展望と改革タスクフォース報告書(2030年展望と改革タスクフォース)」)」との見方まで示されています。

生産年齢人口の伸び率この打開策として、高度外国人材の受け入れに注目が集まっています。現在すでに、建設業や小売業を中心に多くの外国人が働いていますが、今後はこれら業種のみならず多分野で活躍することも考えられるでしょう。特に、IT企業におけるエンジニアの不足は危機的状況だといわれており、そうした分野では、オフィスの同僚は外国人というケースが珍しくなくなると想像できます。

また、生産年齢人口の減少という問題に関わらず、外国企業の進出や日系企業の外国企業による買収によって、オフィスで外国人と働く機会はますます増えていくとも考えられます。

職場での多様性が現実のものとなりつつある今日。企業はどのような課題を想定し、準備するべきなのでしょうか? ここでは、業務遂行を例に挙げて考えてみたいと思います。

管理部門が直面する「多言語化」の必要性

多くの方が、外国人の同僚と上手くやっていく必要がある、というシチュエーションを想像した際に思い浮かべるのは「円滑にコミュニケーションが取れるかどうか」という心配でしょう。

確かにそうした「すぐに直面する問題」に頭を悩ませることは多くありそうです。しかし、それだけではありません。たとえば、社内の調達や稟議、人事考課など、業務管理や業務遂行に利用しているシステムの利用についても同じくらいハードルが高い問題として挙げられます。

社員が毎日使う勤怠管理の打刻システム一つをとってみてもおそらく日本語のみの表記になっているのではないでしょうか。

これからは、管理職が外国人ということも珍しくなくなってくるでしょう。そんな時に、社内のシステムが日本語にしか対応できていないと困ってしまいます。

限られた会社の中だけの問題ではなくなる

現在「TeamSpirit」を活用するエボニック ジャパン株式会社はまさに前述の問題に直面する企業でした。

同社では、旧来の勤怠管理や稟議等のフローをクラウド化させる際、サービス選定の基準として「英語版があるかどうか」を設定していたといいます。

その理由は、同社の組織では社長ほか本部長レベルには必ず外国人がいるため。たとえば部長職の方が休暇申請を出した場合、その申請データは英語でなければ処理できない環境だったというわけです。

英語対応できなければビジネスが円滑に進まない、という企業はエボニック ジャパンだけではないでしょう。中には日本語と英語の相対表を独自にドキュメントファイルなどで用意し、それを見ながら日本語のシステムをそのまま利用してもらっている、という例があるようです。しかし、その手間や負担を想像すると好手とは言い辛いでしょう。

こうした課題は、これまでは外資との取引が多いなど、ある意味特殊なケースと考えられてきました。日本国内では「利用する社内の業務管理ツールは、日本語をつかう人が利用するもの」というのが圧倒的な見方だったわけです。

しかし、これからは冒頭で示した通り、「多言語対応。最低でも日英両方の言語で記されている必要がある」という要望が増えていくと考えられます。

これから導入するなら、「英語対応している」システムの導入を

たとえば、企業にとっても働くひとにとっても重要な勤怠管理システム。これをクラウド化し、場所やデバイスに左右されずに勤怠打刻などができるようにしたい、と考える企業は多いでしょう。

出退勤カードに打刻した情報を表計算ソフトに転記して集計する負担を軽減したり、自社のイントラネット上でしか打刻ができない、といった環境を改善して、よりスマートな勤怠管理の仕組みに変化させるならクラウドシステムを利用しない手はありません。

そうしたシステムの選定を行う際、前述のように「英語でのコミュニケーションの方がよい」というスタッフが社内で活躍する可能性が少しでも考えられるなら、システム導入の要件には「英語対応しているサービスかどうか」という項目を追加しておく必要があります。

企業によっては、「社内で構築したシステムがあるので、その英語版をつくれば問題が解決できる」と考えるケースもあるかもしれません。確かに短期的にはその選択肢も考えられるかもしれません。

しかし、たとえば労基法や関連法規が改定されたとして、対応は可能でしょうか? 自社内のシステムを新しいルールに適応させ、かつ、それを英語化すること。そして、それが正しいことを確認するためのレビューなどを行うことは、費用やリソースだけでなく、責任の所在をどこにするかといった問題も絡んだ複雑なプロジェクトになりそうです。

前出のエボニック ジャパンでも、自社で構築したシステムをカスタマイズすれば英語対応ができるのかもしれないが、表示される英語のチェックなどのリソースコストを考えると既存のサービスの方が現実的、との判断がなされたと言います。

エボニック様導入事例

今回は日本国内の外国人就労人口の増加から、業務管理・遂行ツールの多言語、とりわけ英語対応の必要性を見てみました。別の見方から考えると、M&Aや現地法人で活躍する外国人スタッフとの共同プロジェクトで英語やその他の言語に対応したツールが必要になる、ということも考えられます。

「システムを利用する者のうち、英語対応が必須という対象者が多いわけではないのでつい後回しにしてしまう」や「開発リソースの問題やROIの観点から、対応が進まない」ということがあるなら、解決策のひとつとして、外部の知見やサービスを活用するという判断もあり得る時代です。

多様化が進んだ職場で、外国人スタッフがもたらす新たな意見を受け入れて成長を果たすためにも、環境整備は気づき辛いところまでしっかりと目を向けてみてはいかがでしょうか。

お問い合わせイラスト

英語版も選べるクラウド勤怠管理システム
についての相談はこちらから

お問い合わせボタン

text:働き方改革研究所 編集部