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多種多様なパートナー企業が出展するCloud Expoも毎年のDreamforceの大きな目玉です。アプリケーション開発に必要な機能を兼ね備えたクラウドプラットフォームを提供することで、今や、コンサルティング企業・SI企業・アプリケーションベンダーなど、多数のパートナー企業を巻き込んだ巨大エコシステムを構築しているSalesforce.com社。今年は約300社がさまざまなソリューションを展示し、大変な盛り上がりを見せていました。

Salesforce.com社のエコシステムは、2018年までに100万人の雇用を生む!?

Salesforce.com社が築き上げてきたエコシステムの基盤には、Force.comというPaaS、そしてアプリケーションを流通させるSalesforce AppExchangeというストアの存在があります。
Force.comの登場によって、企業はインフラの構築や保守、セキュリティなどの問題を気にすることなく、ソリューションの開発だけに集中することができるようになりました。また業務用アプリケーション版App Storeとも言えるAppExchange上でアプリケーションを簡単に販売することもできます。
一方、エンドユーザーにとってはAppExchangeを通して、Salesforce.com社以外のベンダーが開発したクラウドアプリケーションを気軽に試すことができるようになり、コンサルティング企業やSI企業は高度な技術を活用した新しい付加価値をスピーディーに提供することができるようになりました。

このようにSalesforce.com社は、高度な技術を誰にでも使えるようなかたちで提供することをポリシーにクラウド市場を牽引してきました。画期的なビジネスモデルとその技術力によって、今、エンタープライズクラウドは爆発的な普及を見せ、ユニークなSaaS企業が次々と誕生しています。
2015年に公開されたIDC社の最新調査レポートでは、2018年までにセールスフォース・ドットコムとそのエコシステム(顧客とパートナー)によって なんと100万人の雇用が創出され、GDP へのインパクトは世界で 2,720億ドルに上ると報告されています。さらにSalesforce.com社のエコシステムが生み出す収益は同社の収益の 2.8倍に上り、さらに 3.7倍にまで成長すると見込まれています(※1)。
破竹の勢いで成長を続けるSalesforceのエコシステムですが、今回のCloud Expoはまさにその勢いとビジネスチャンスの大きさを肌で感じられる熱気あふれる空間となっていました。

セールスフォースのエコシステムは、2018年までに日本国内だけでも200億ドルの付加価値と7万人の雇用を生むとされています(※2)

(※1、2ともに) 出典:Salesforce.om社 「Salesforce エコシステムがもたらす 2,720億ドル規模の機会」
https://www.salesforce.com/jp/blog/2015/11/272-billion-salesforce-opportunity.html

Cloud Expo出展企業の概要

さて、今回Cloud Expoに出展していたパートナー企業291社の内訳を整理してみました。
(現地で配布されていたブースマップより作成)

①AppExchangeパートナーの割合
AppExchangeパートナー...Force.com でアプリケーションを開発し、AppExchange でアプリケーションを販売しているベンダー

②パートナー企業のソリューション分野
やはり営業生産性を高めるソリューションが半数以上を占めていました。その他、クラウド型ERPや情報共有ツール、地図分析、社員教育などが見られました。
出展企業の一覧と簡単な分類については、こちらの表をご参照ください。

日本からの出展企業をご紹介!

さて今回、日本からも7社が出展していました。チームスピリットをはじめ、いずれもSaleforce.comのエコシステムで躍進する企業です。皆さんとてもお忙しそうだったのですが、ちょっと割り込ませていただいてお話を伺ってきました。

●株式会社テラスカイ

株式会社テラスカイは、日本におけるSalesforce.com社のパートナー企業としては先駆けの存在です。日本で一番売れている Salesforceの画面開発アプリ 「SkyVisualEditor」をグローバルに展開しています。なんと5年連続でDreamforceに出展されているとのこと。今回は2ヶ所でブースを出されていて、ひとつは北米向けのソリューション、もうひとつが新しく開発したグループウェアMitocoのブースということでした。
今回はMitocoブースでひときわ目立っていたジェイソン・ダニエルソン氏にお話をお伺いしました。

-出展内容について教えてください。
こちらのブースではSalesforceをプラットフォームとする次世代型のグループウェア、Mitocoを紹介しています。「Mitocoを見とこ」で覚えてくださいね(笑)。Mitocoは掲示板・コミュニティ・カレンダー・ワークフローなどの機能があり、社内の情報を「見える化」することができます。既存のSalesforceではできないけれど、日本のお客様が求めている機能を盛り込んだグループウェアで、社内外のコミュニケーションを円滑にし、業務の効率を高めることができます。

-今回の出展目的について教えてください。
Mitocoをアメリカでも展開したいと思っているので、製品のプロモーションをしつつ、マーケティングや市場調査をすることが出展の目的です。Mitocoのようなグループウェアがアメリカでも求められているのか、またアメリカで売るにはどういう機能が必要なのかを、お客様とコミュニケーションをとりながら調査しています。

-お客様の反応はいかがですか?
思っていた以上に興味を持ってくださる方がいるな、という印象です。今後、「コラボレーション」はクラウドの大きなテーマになっていきます。すでに社内外の色々な人が関わりながら仕事を進めていくことが当たり前の世の中になっていますが、今後その動きはさらに加速していきます。ですから、Mitocoのようなグループウェアの需要は大きいと感じています。ただ、同じような分野でのソリューションが既にあるなかで、Mitocoをどう差別化していくか、そこをもっとしっかりと考えてはいけません。そのためにも、お客様から色々な話を聞きたいと思っています。

-日本企業が海外で成功する秘訣は何でしょうか?
アメリカでもどこの国でも同じですが、まずは市場のニーズを正確に把握することが重要です。日本企業は、製品やサービスが日本で売れると、それをそのままアメリカに持ってきても売れるだろうと考えてしまうパターンが多いように感じます。残念ながらそれではうまくいきません。アメリカで売りたいのであれば、開発を始める前の段階でどのようなニーズがあるのかをしっかりと把握し、全く新しいものを開発するというくらいの気持ちで挑戦しないといけないですね。もちろん当社も同じです。今回出展して、やアメリカのためのソリューションを持ってこないといけないなというのを改めて痛感しています。実際にこうやってブースに立つと、すごく勉強になりますね。

-日本とアメリカのスタートアップの違いについて、どのように感じていますか?
大きく異なるのはスタートアップの規模感ですね。アメリカでは面白いスタートアップが生まれるとすぐ競合が現れます。競合企業の方がすぐに何億も調達して一気に開発を進め、あっという間にシェアをひっくり返してしまうということが多々あります。アメリカはスタートアップがお金を集めやすい環境なので、あっという間に会社が大きくなっていきます。日本はスモールスタートで、失敗しないように慎重に進めていくことが多いのではないでしょうか。それが失敗の源になっているような気がします。石橋を叩いているうちに他の会社がガーンと大きくなったりしますよね。
またエグジットのかたちも全然違いますね。日本はエグジットというと上場がほとんどですが、アメリカはM&Aの方が圧倒的に多いです。僕の友達は、数人で会社を作ってオラクルに買収され、次に作った会社はセールスフォースに買収されて、ということを繰り返しながら何度も起業しています。日本ももっとエグジットしやすい環境になれば、成功者といわれる人も増え、ベンチャーに対する見方も変わってくるんじゃないでしょうか。優秀な人ほどスタートアップに行きたがる、そんな文化に変えていけたらいいですね。

お笑いの仕事ではないはずですが(笑)、常にサービス精神旺盛のジェイソンさんでした


●株式会社ソルクシーズ

安全性の高いクラウドストレージサービスとクラウド帳票サービスから成る「Cloud Shared Office」を提供しています。日本国内では大手有名企業を中心に、また世界190カ国、200社以上で「Cloud Shared Office」が導入されています。Dreamforceへは4年連続で出展されているそうです。

-出展内容について教えてください。
こちらでは「Cloud Shared Office」のファイル共有サービスをご紹介しています。ファイル共有サービスは色々とありますが、弊社のサービスはビジネスプロセスを自動化できたり、権限を細かく設定できたりするなど、きめ細やかな機能が特徴です。今回ご紹介している新バージョンでは、ファイルをローカルに残さずに編集できるようになるなど、さらに機能を強化しています。

-今回の出展目的について教えてください。
弊社のサービスは既に海外でも利用されていますが、今後さらに本格的に世界に向けてビジネス展開するために、出展することにしました。

-出展してみてのご感想はいかがですか?
今年はフリーパスの参加者がエキスポに参加できる日程が決められてしまっているので、初日、2日目は昨年に比べて人がちょっと少ないかなという印象です。ただ色々なことをしっかりと研究したうえで、目的を持ってブースに来てくださっている方が増えている印象です。トライアルで導入してみたいという声もいただいたので、ニーズのあるところにしっかりとアピールしていきたいと思っています。

-Dreamforce全体についてはどのような感想をお持ちですか?
今回4回目の出展ですが、イベントの規模がどんどん大きくなっています。ただ、US内では飽和状態になっているので、世界に向けてマーケットを拡大していこうという雰囲気があるように思います。また、セールスクラウドだけではなく、IoTやAIなどのテクノロジーを積極的に採用することで、エコシステム自体もさらに大きなものにしていこうという勢いも感じますね。当社も北米だけではなくアジアに向けても頑張っていきたいです。


●Sansan株式会社

企業向けクラウド名刺管理サービスを提供する企業です。同社のソリューションでは、名刺をスキャンするだけで顧客・取引先に関するデータベースが構築され、営業活動の基盤として活用することができます。現在国内シェアは3年連続ナンバーワン。4000社以上に導入されています。今回、サンフランシスコのDreamforceは初出展ということです。

-出展内容について教えてください
日本で展開している名刺管理サービスをアメリカ向けにローカライズしてご紹介しています。名刺のデータ化とその情報をチーム内でシェアするサービスです。

-今回の出展目的について教えてください。
アメリカでの市場開拓を考えているので、プロモーションと市場調査を兼ねての出展です。日本では当社のサービスも認知度が上がってきて市場も拡大してきたので、アメリカで挑戦してみたいと考えています。

-お客様の反応はいかがですか?
皆さん思ったよりも良い反応を示してくれていますね。周りのブースの人たちも「お前のブースに人がたくさん集まってるけど何をやってるんだ?」と興味を持ってくれたりしています(笑)。「Business Card Managementだよ」と言うと「まだそんなことやってるの? Business Cardなんて持ってる人がいるのか?」と驚く人もいれば、「名刺がありすぎて困ってるんだよ!」と言う人もいましたね。

-アメリカの名刺文化は、どんな感じなのでしょうか?
場所と業種によって全然違うようです。西海岸だとFacebookやLinkedInを使ってコミュニケーションをするのが一般的で、名刺を管理する必要性はあまりないようです。東海岸や西海岸でも特定の業種では、従来のように名刺交換をしているということで、やはり名刺管理には困っているようでした。思ったよりもみんな名刺交換しているんだなという印象です。

-Dreamforceの感想についてはいかがでしょうか。
規模の大きさにびっくりしています。日本でも同じようなテック系のイベントはありますが、ここまで人が集まることはないですよね。街全体がイベント一色に染まっているのが本当にすごいと思います。これだけ広い会場でもテーマが一貫していて、世界観が確立されているのも素晴らしいと思います。色々と刺激を受けています。


●ウイングアーク1st株式会社

Salesforceに対応した帳票サービス「SVF Cloud」を 展開する企業です。帳票運用パッケージでは圧倒的なシェアを誇り、利用社数18000社を超えています。Dreamforce出展は2年目とのことです。

-出展内容について教えてください。
今回はVyndexというSalesforce向けのデータ入力ツールをご紹介しています。通常Salesforceはブラウザ上でデータを入力しなくてはなりません。件数が多くなると、一件一件編集してセーブして、というのは非常に大変です。Vyndexを使えばSalesforceのデータをエクセルで編集して一気にアップロードすることができます。入力の手間を省き、生産性を向上させるツールです。
Salesforceは入力の手間がかかることが課題として挙げられることが多いのですが、このツールを使っていただければその課題を解決することができます。

-今回の出展目的について教えてください。
昨年も出展したのですが、やはりグローバルに展開したいという思いがあり今年も出展することにしました。業務用ソフトウェアに関しては、日本では営業担当者が顧客のところに訪問して対面で販売するのが当たり前ですが、アメリカではWebマーケティングの力だけで販売するようになってきています。当社のソフトウェアもクラウドらしくマーケティングの力だけで販売できるようにしていきたいので、ここで色々な意見を聞いて、今後に向けての一歩にしたいと思います。
またDreamforceは世界最大のITイベントなので、出展するだけでも大きな意義があると思っています。まだ日本企業の出展が少ないので、このなかで日本から来て製品をアピールしているというのは、日本の方に対しても良いアピールになるのではないかと考えています。

-出展してみての感想はいかがですか?
Cloud Expoも昨年よりもさらに規模が大きくなっていて驚きました。ただブース出展の難しさも少し感じています。現地企業はブースに来てくださったお客様のIDパスをスキャンして後で個別にフォローするということができますが、日本から来ているとそれが難しいですね。こちらに拠点があるわけではないので......。この場で一つひとつ丁寧に訴求していかなくてはいけないのが大変ですが、せっかくこの場に立てているので、世界に向けて頑張りたいと思います!


●NTTソフトウェア株式会社

NTTグループでの出展になります。NTTグループは昨年に続き、4年連続で上位スポンサーとして名を連ねています。今回はSalesforce連携アプリをはじめ、NTTグ ループ全体のソリューションを展示されていました。

-今回の出展目的について教えてください。
当社はクラウドセキュリティのシステムを日本で販売しています。アメリカ市場でも需要があるかどうかのマーケティングと日本からいらっしゃっているお客様へのアピールが目的です。NTTグループのソリューションに興味を持ってくださっているお客様にうまくアピールできるといいなと思っています。

-出展してみての感想はいかがですか?
前回Dreamforceに参加したのは4年前ですが、イベント自体が一段とパワーアップしている印象です。セールスフォースエコシステムに参画している企業の活気と勢いをとても感じます。日本からも600人の参加者がいると聞いて驚きました。日本のIT展示会はわりとキチッとした雰囲気ですが、こちらはとてもカジュアルな感じで面白いです(笑)。Einsteinに関する発表も気になります。当社はコールセンター向けのソリューションを得意としているので、うまく組み込める製品があるといいなと思いますね。


Dreamforceに来ると日本の3年後がわかる!?

日本のスタートアップ業界はBtoCのサービスが多い印象がありますが、このCloud Expoを見るだけでもアメリカにおけるBtoB向けSaaS市場がいかに盛り上がっているかを実感することができました。数年後間違いなく、この流れは近々日本にもやってくるのではないでしょうか。日本企業のブースを拝見して、来年以降、もっと多くのサービスが世界に向けて発信されるようになるといいな、と思いました。

次回もCloud Expo特集です。今度は現地企業の展示ブースから、面白そうだなと思ったサービスについてご紹介したいと思います!既に日本で事業を展開しているもの、そしてもうすぐ日本に来そうなもの、色々ありました。お楽しみに。


「SaaSビジネスの今と未来」Dreamforce 2016 観戦記