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自動運転技術の普及は自動車業界ばかりだけではなく、社会全体を含めて私たちの生活を抜本的に大きく変えていく可能性を持っています。例えばアメリカの未来学者のThomas Freyが予測した「自動運転時代のアメリカの25の衝撃的な予測(25 Shocking Predictions about the Coming Driverless Car Era in the U.S.)には以下のような予測が挙げられています(括弧内は筆者注)。

  • 自動車の寿命は1年以内になる(シェアの進展で車の稼働率が飛躍的に上昇するため)
  • 「場所」が意味を持たなくなる
  • 車の所有は「贅沢な趣味」になる

これらに加えて、彼が挙げている項目の一つが、私たち個人の生活や働き方にも大きな変化をもたらす可能性を持っています。それは「各家庭のガレージの活用が大きなビジネスになる」というものです。

クルマが単なる移動手段ではなくなる未来

自動運転が普及して個人所有がほとんどなくなるという状況になれば、当然のことながら各家庭での車の置き場所も不要になります。これは日本においても自動運転化が進んだとすれば、特に「戸建てで車を所有している」可能性が高い郊外において、顕著な現象となってくるでしょう。国中で駐車スペースが空いてくることになりますから、ここを将来いかにうまく使えるようにするかはアイデアの宝庫となってきます。

もう一つ自動運転関連の大きなニュースとして、トヨタ自動車が2018 International CESで発表して話題になったe-Paletteという自動運転のサービスプラットフォーム化のコンセプトが挙げられます。

これは自動運転車の仕組みをプラットフォームとし、そこで展開するサービスを様々に組み合わせて移動、物流、物販といった身近な生活そのものを変えようという未来志向の発想です。

事例として挙がっているサービスとしては、ピザ屋、ショールーム、ラウンジ、フリーマーケット、宿泊施設、オフィス、物流、といったものですが、要は車の中を「スペース」として考えれば応用範囲は無限に考えられ、あらゆる物販の店舗や飲食店、さらには病院や役所、カラオケボックスやゲームセンター等、それこそありとあらゆるものが「移動◯◯」になってしまう可能性があるということです。

自動運転はガレージに眠る無限の可能性をも広げる

これを先の「ガレージが空いてくる」という現象と組み合わせて考えると、さらに面白い将来を描くことができます。要はそのガレージを今度は「移動◯◯の駐車スペース」と考えれば、オンデマンドで様々な店舗やサービス施設を自宅前」に交代で呼んでくることができるということです。

「ガレージが余ってくる」のは比較的通勤時間がかかる郊外に顕著でしょうから、リモートワークとの相性も抜群です。自宅前が移動オフィスになりますから、「家に落ち着いて仕事をする場所がない」と嘆いている人も心配ありません。またちょっとリフレッシュしたくなったら「移動スポーツジム」を呼び、体調が悪くなったら「移動クリニック」(遠隔診断してもらえるような)を呼べば簡易休憩所としても使えるかも知れません。

このように考えてくれば、自動運転の普及というのは、単に通勤や勤務場所の自由度が上がるというリモートワークの領域を遥かに超えた新しい働き方の変革のチャンスをもたらす可能性が出てきます。もちろんコストや(個人の車の大きさに収めるような)「移動◯◯」のコンパクト化等の課題は色々あるでしょうが、それも本当に大きなニーズがあれば技術革新によって克服できる側面が大きいと予想できます。

かつてスタートアップ起業の伝説の多くが「ガレージから」始まりました。自動運転後の未来には、また多くの新しいライフスタイルが、違う意味で「ガレージから」スタートすることになるでしょう。

さて皆さんは「自宅のガレージが空いて好きなスペースを好きな時に呼べる」となったらどんな将来を描くでしょうか?