企業が活動していく中で多く存在する文書。一昔前まではあらゆる文書を紙に起こし、共有し、保管していた。それが、ITの発達とともにその取り扱い方に変化が出てきたのはご存知の通りだ。

現在のビジネスの現場においては、ペーパーレスという考え方が広く浸透してきており、経費削減もあってプリントアウトの枚数を極力絞るように指示されている企業も少なくないだろう。一方で、コンプライアンス経営の観点から見ると、社内外から集まる文書はその取り扱いや社内での共有が重要なファクターとなっているのも事実である。そうしたこともあり、企業活動に不可欠な文書について、ITを活用して戦略的に取り扱っている企業も多く出現してきている。

今回は文書の電子化とその端的な例である電子稟議について考えていくこととしたい。

- 経産省が推進する文書の電子化の現状

昨今、文書の電子化については、官民それぞれで活発な動きを見せている。官庁についてはその推進役を担っているのが経産省だ。経産省では2005年に「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」を施行した。

※参考:経済産業省「文書の電子化の促進」
経済産業省「文書の電子化・活用ガイド」

この2つの法律は合わせて「e-文書法」と呼ばれ、内閣官房IT担当室が全体をとりまとめ、これをもって民間事業者は法令で義務付けられた文書での保存に代わって、電磁的な記録、つまり文書を電子化して保存をすることが可能となった。

このことは、従来は膨大な枚数となってしまっていた「保存しなければならない文書」について、ペーパーレス化を促進するきっかけとなり、企業においては保管コストの低減や、過去の資料を検索、確認する際の効率性の向上がはかれるようになった。それだけではない。必要書類の共有なども非常に容易となったものだ。

このように、「e-文書法」を起点に歴史を振り返ると、電子化した文書による必要書類の保管はかなり以前から公に認められていたこととなる。

- 社内稟議を電子化し迅速かつ適切な判断を!

一方、民間企業における文書の電子化についての取り組みについても見ていきたい。社内の文書となると、一番身近なものとして「社内稟議書」が思いつく。多くの関係者のハンコが順番に押された稟議書は社内の意思決定を具現化している文書として重要であり、またコンプライアンスの観点からもしかるべき人間が判断をしていることを証明する上で重要なものとなる。

特に最近はコンプライアンス遵守を求める風潮が強くなっており、稟議書の重要性はさらに高まっていると言えるだろう。

しかし、紙の文書でのやり取りはさまざまな弊害を招いていることも事実である。一番分かりやすいところでは、決裁者が多忙でなかなか(物理的な)稟議書を見る時間がなく、いつまでも決裁が降りないといった事例だ。「はんこリレーが進まない!」と嘆いた経験がある方は少なくないはずだ。

こうした事柄は組織に属している人間なら誰もが一度は味わったことのあるストレスのひとつだろう。これは現場スタッフの悩みとなるだけでなく、判断が迅速にされないことで機会損失を招き、企業活動のスピードそのものが鈍化することにもつながる。

また、稟議書の煩わしさを味わった現場の人間にとっては、日々忙殺される中で稟議そのものを上げることが面倒になってしまい、稟議を上げず、しかるべき人間の意思決定を得ずに現場の判断で事を進めてしまう恐れもある。
こうなれば、内部統制の観点からも重大なコンプライアンス違反であり、企業として大きなリスクを抱えることとなる。

それでは、このようなリスクを回避しつつ、内部統制を確立し、意思決定を迅速におこなうためにはどうすれば良いのだろうか。ここでは社内稟議書を電子化することで、ペーパーレスを実現しつつ、迅速な意思決定と内部統制を実現した企業の取り組みを紹介したい。

- 電子稟議のメリット: ITのチカラで内部統制を確立する

2014年に東京証券取引所マザースに上場を果たしたデータセクション株式会社は、上場審査を前に、ITのチカラを使った働き方改革プラットフォームである「TeamSpirit」を導入した。

これにより、従来は紙でおこなっていた稟議や勤怠管理をIT化することで効率的な業務管理をおこなうことができるようになり、厳しい上場審査にもしっかりと臨むことができただけでなく、コストの削減にも成功した。

特に、上場審査では決裁権限が適切に運用されているかが重要なポイントとなるが、「TeamSpirit」の電子稟議機能を活用することで、効率的かつ的確に稟議を運用していることを監査法人にもしっかりと見せることができたという。
このことは、ITを活用した内部統制の有効性が証明されたと考えることもできるだろう。

- 「TeamSpirit」電子稟議3つの機能を見る

ITのチカラを使った働き方改革プラットフォームである「TeamSpirit」の電子稟議。その特徴は大きく3つ挙げられる。

ひとつはワークフロー設定をおこなうことで、従来の紙の稟議フローを変えることなく、そのまま電子稟議化し、導入したその日からペーパーレスを実現できるというもの。これは「TeamSpirit」がSalesforceのForce.comをプラットフォームとしたクラウドシステムとなっていることが大きい。

次に既存の紙による稟議書の項目をそのまま電子稟議に移管させることができる点。これにより電子稟議へのスムーズな移行をおこなうことができるはずだ。

そして3つ目は、プロジェクトや取引先などと関連した稟議の作成や経費の精算時に「TeamSpirit」のデータと連携させることができる点だ。当然ながら、クラウドサービスなので、どこにいても確認、承認作業が可能となる。これは物理的な紙の書類に押印しなければならない、という制約をフリーにする意味で画期的とも言えるだろう。

これにより、効率的に稟議を上げ、ワークフロー(=電子的なはんこリレー)に落とし込むことができるというわけだ。

現在のビジネスシーンにおいて、迅速な意思決定と内部統制の確立を実現することは経営の最重要課題と位置づけられるはずだ。本来両立の難しいこれらの実現のためにITのチカラは不可欠なものだと言えよう。

また、企業が信頼性の高い事業運営を続けていく上で、この精度を上げていく重要性はますます高まってる。
もはや、はんこを押す作法を議論している場合ではないことだけは確かだ。

★関連リンク 
データセクション株式会社様事例 
https://www.teamspirit.co.jp/case/datasection.html

text:働き方改革研究所 編集部