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昨今、日常生活の事柄だけでなく、それを支えるインフラに関する情報なども、データやグラフとして「見える化」されるようになった。 だからこそ、私たちは、どうすればこの「見える化」の恩恵を最大限に享受することができるのか、改めて考える必要があるだろう。 今回はそのあたりに注目していきたいと思う。

あらゆるモノが「見える化」する時代がやって来た!

スマホやウェアラブル端末の普及、ITやIoTの進化によって、世の中のあらゆる行動が「見える化」されてきている。

たとえば、体調に関するデータを蓄積することは、「継続する努力なしではなし得なかったこと」だったが、体重計や血圧計で計測すると自動的にそれがレコードされるようになり、さらには瞬時に図表化されるようになった。

この情報を元に、適切な運動メニューを組んだり、摂取カロリーを計算したりして健康づくりに役立てる、ということが以前に比べると格段にしやすくなっている。

電気使用量の見える化は、家計だけでなく、大型ビルや工場においても、いつ、どこに電力需要があり、どこは控えめでもよいか、をスマートに振り分けることにつながっている。これによって、効率的な電力利用を促すことは、多方面に渡って利が多いことだ。

それだけではない。スポーツやコンサート会場に集まる人々の動きを「見える化」させることで、大混乱を避け、観客により良い思い出を作ってもらえるように役立てられるようにもなってきている。

こうしたことは、従来は「感覚的に"こうだろう"と思う」という経験則で管理されていたものが少なくない。それが、正確なデータとして誰が見ても分かるようになり、それに基づいた判断を下す参考値として使用し、最適な"次の一手"を導き出せるようになったことは、「見える化」の最大の利点と言えるだろう。

当然ながら、業務も「見える化」がスタンダードに

前述のように世の中の動きが「見える化」され始めたことと、一日の生活の大部分を占める「仕事」の場面は無関係ではいられない。働き方の「見える化」に取り組む企業が年々増えていることからも、それは見て取れよう。

そうしたツールのひとつとして、株式会社チームスピリットの「TeamSpirit」の工数管理の機能がある。これは、スタッフ一人ひとりが自分の仕事を以下のような画面(タイムレポート画面)から入力し、一見して把握できるようにするものだ。

さらに、円滑に「見える化」を継続できるような工夫もなされている。

たとえば、「スケジュールはスケジューラーで管理していて、別画面でTeamSpiritの工数管理を開いてこちらにも入力する」という二度手間をなくすことができるよう、Office 365の予定表もしくは、G Suiteのカレンダーに登録されたスケジュールを、タイムレポート画面のスケジュールの項目内に表示することができる。スケジュールに表示された予定は、ワンクリックで工数実績に取り込まれるので、自動的にグラフとして加工することも可能だ。

こうして蓄積された情報は、定期的に振り返ることで「自分が特に時間をかけている業務はなにか?」や「コンスタントな業務の中でも、特に業務量が多くなるのはいつか?」「無駄に費やしている時間はないか?」といったことを気付くきっかけになり得るだろう。

加えて、これまで「なんとなく、こんな感じ」と自分自身で把握していたことを誰かに説明する機会が訪れたとしたら、その相手に素早く理解してもらうことにも役立つはずだ。

マネジメントレベルにも、この「見える化」された情報は多くの示唆をもたらす。たとえば、同じ業務をお願いしているAさんとBさんを比較して、時間のかけ方やアウトプット、成果の違いを中長期的に追いかけていけば、それぞれの得手不得手を見つけ出すこともできるだろうし、これまで属人的だった業務をベスト・プラクティスに基づいてルール化させることもできるだろう。

これは、ひいては企業のポテンシャルを向上させることにもなるかもしれない。

(登録された工数と残業時間や経費利用状況、さらにはSFAの営業成績などを合わせてダッシュボードとして表示した例。全社、部門、個人の単位で表示させることが可能)

ただし、注意は必要だ。

見える化されたデータは無機質であるため、単純に優劣を判断する参考値として扱ってしまいがちだ。だが、得られたデータは、その大元にはスタッフ個々人がいることを忘れてはならない。

データを見る側は、そのデータを見ることで目指すべきゴール(職場環境の改善、業務の効率化のためのアプローチ等)を見誤ってはならない、というわけだ。

働き方の「見える化」ができたからと言って即・問題解決とはならない

ここまで述べてきたように、働き方の「見える化」の最大のメリットは、経験則といった曖昧な感覚値を誰もがひと目見るだけで理解できるようにする点だと言えよう。このことは、過去から蓄積された先入観を改めるきっかけになるかもしれない。

ただし、残念なことに、単に「見えるようになった情報」は、それがすなわち何かを改善したり、何かを変えることにはつながらない。

見えてきた「イマ」と「こうなったら理想的だ」という姿との間にあるギャップを分析し、それを埋める努力が不可欠なのだ。

この点について、厚生労働省は企業向けに「働き方・休み方改善指標」を作成し、実態把握の方法や実態の指標化、指標ごとに行なうべきネクスト・アクションのポイントなどを公開している。

現在、注目されている有給休暇の取得率向上や残業時間の削減に取り組むなら、きっと参考になることだろう。

ギャップを埋める働きかけのためには、場合によってはインセンティブを付けたりして成功体験を味わってもらい、染み付いた行動パターンを変えていくよう促すことも必要になってくるはずだ。

たとえば、株式会社インフォバーングループ本社では、デジタル・マーケティング業界にありがちな長時間労働の是正を行なうにあたって、働く人たちの課題とも言える「給与減少」という問題をクリアにするための工夫として「リア充手当」を導入している。

新たな人事制度「リア充手当」でメディアの働き方を改革する!
〜リアルタイムに働き方を"見える化"して、現場も満足な残業抑制に取り組む〜

これは、一般的に言われる「残業代がなくなったら、手取りが減って生活に影響が出てしまう。だから、働き方を変えるのはリスクだ」との懸念を払拭させた好例だと言えよう。

変化を起こし、それを継続させることは困難なことではある。

このことは、「夜更かしは良くないから、もう止めておこう」と思ってもゲームの手を止められなかったり、「最近体重が気になってきたから、ハイカロリーなスナックを断とう」と心に決めてもいつの間にかまたその習慣が復活してしまう、という経験をしたことがある人なら、身にしみて分かるはずだ。

だが、それを超えて新たな習慣が身に付けば「見える化」の "果実"を得たことになるだろうし、また別の習慣を「いま、望まれる姿」に変えるような動きにも繋がるはずだ。

このためにも、何を置いてもまずは「見える化」させることが重要だと言うわけだ。


<関連リンク>
TeamSpiritの工数管理でできることは?

text:働き方改革研究所 編集部