働き方改革にまつわる議論は多々あるが、その中でも特に管理部門と社員の関心事といえば、「有給休暇の取得」についてだろう。働く者の権利として付与されているはずの有給休暇だが、日本では以前からなぜか取得しにくいイメージがついてしまっている。「働き方改革をするならば、まずは有給休暇をきちんと取得できる環境を整えてくれ!」と、心の中で叫んでいる人も多いことだろう。

では、社員が有給休暇を取得しやすくするためにはどのような解決策が必要なのだろうか。今回はその点について、考えていきたいと思う。

- 日本における有給休暇の取得状況は?

まず確認したいのが、日本における有給休暇の取得状況だ。厚労省がまとめている「平成29年就労条件総合調査の概況」によると、1年間に企業が労働者に対して付与した年次有給休暇日数は労働者1人平均18.2日となっている。そして、実際に労働者が取得した日数は9.0日で、その取得率は49.4%となっている。つまり企業から付与された有給休暇の半分弱が実際に使われている計算だ。

これを企業の規模でブレイクダウンすると、最も取得率が高いのは1000人以上の社員を抱えるいわゆる大企業であり、その取得率は55.3%。一方で30〜99人の中小企業になると、取得率は43.8%と実に10%以上の差が開いており、大企業の社員ほど有給休暇が取りやすい状況であることが数字の上でもはっきりと示されている。

(厚生労働省「平成29年就労条件総合調査」より 
※黃・水色は編集部で着色)

- 取得率が5割を切っている状況の課題とは?

なぜ、日本の労働者は与えられた有給休暇を半分も取得することができないのだろうか。その理由として、「周りの社員が取得していないため、申請しづらい雰囲気にある」という意見がある。日々の業務に追われ、誰もが多くのタスクを抱えている中、自分だけが有給休暇を取得するのは「申し訳ない」という周囲への遠慮や、「上長が有給休暇をまったく取得しないため」それが部下に無言の圧力となって取得をためらってしまい、会社から与えられた有給休暇を取得することなく、次年度に繰り越してしまうということが挙げられる。

有給休暇は社員に与えられた権利であり、本来は上長が部下の就業状況をよく確認しながら適切に取得を促すことがマネジメントの一環である。が、上長の態度が知らないうちに部下にプレッシャーを与えてしまっているといった事実は、企業と社員どちらにも非常に残念な状況と言わざるをえないだろう。

- 取得率向上に向けて経営側でやらなくてはいけないこととは?

この問題の根底には、休む権利を与えられたのに行使しない社員側の問題というよりも、有給休暇の申請をしにくい環境を作ってしまっているマネジメント層に課題があると捉えるべきだろう。

社員の有給休暇の残日数を管理し、その取得状況をよく把握して、適切に有給休暇を取るように指導するとともに、有給休暇が申請しやすい社内のフロー整備や雰囲気作りをおこなうことで、社員の自発的な取得を促す必要があるのではないだろうか。

たとえ申請しやすい雰囲気になっても、自分の有給休暇の残日数がすぐに把握できなかったり、その申請フローが複雑で時間がかかるようなものであればあるほど、日ごろから多忙な社員は有給休暇の取得に及び腰になってしまうことは想像に難くない。

- 有給休暇が取得しやすい環境をITのチカラで作っていく

では、社員誰もが自ら有給休暇の申請を自発的におこない、管理する側もスマートにそれを管理できる環境を作り上げていくためにはどうすれば良いのだろうか。

企業と社員の双方がメリットを享受しながら、労働生産性の向上を実現するために開発された「TeamSpirit」の勤怠管理システムは、有給休暇や企業で設定した休暇の残日数管理だけでなく、労働基準法にあわせた有給休暇の定期的な自動付与にも対応している。

部下の有給休暇の残日数も瞬時に確認することもでき、状況に応じて、有給休暇の取得を促すことができるだけでなく、社員も自らの残日数を簡単に把握でき、シンプルな申請フローで上長に取得の意思を発信することができるため、有給休暇に関する双方のコミュニケーションをよりスマートなものにすることができる。

このようなシステムを活用することで、社員が周囲に遠慮することなく有給休暇を取得できる環境を整え、取得率を改善するだけでなく、管理する側も社員の休暇を適切にマネジメントし、リフレッシュさせることで、チームのパフォーマンス向上に役立てることもできるだろう。

- 有給休暇取得に際して"忖度するこころ"が働いていないか? 確認することも経営陣の責任

昨年来「忖度(そんたく)」という言葉がたびたび聞かれるようになった。意味を言語化することは難しいが「空気を読み、相手を慮って望まれるであろうことを先読みし、そのように行動すること」と説明できるだろう。

もしかすると、有休取得率の低さの背景には「忖度する文化」が組織内に蔓延しているという事実があるのかもしれない。

たとえば、「これまで自分はほとんど有給休暇を使ったことがない!」と豪語するマネージャーの存在がボトルネックになっているケースはままあるものだ。こうしたリーダーの下では、当然ながら"有給休暇の取得が難しい雰囲気"が醸成され、それが間違った文化として根付く恐れもある。

「どれだけ有給休暇の取得を促しても、社員が取ってくれないからどうしようもない」や「仕事をしたいと言う社員の熱意に水をさすわけにはいかなくて」「特に予定もないから仕事をする、と言っているので...」という意見があったとしても、本当にその見方が正しい認識であるのか、経営陣は今一度、確認する必要があるだろう。そうすることで、これまで気が付かなかった「有給休暇が取得しづらい理由」があぶり出されるかもしれない。

その課題を解決する手段のひとつとして、ITのチカラは有効な手段となる。だが、これだけでは不十分だ。改善された環境の下で、ある程度の強制力を発揮して取得を促進してみてこそ、文化は変化する。

有給休暇の取得促進は、社員ひとりひとりの権利を行使させることであることはもちろん、マネジメント層が「自分の役割はなにか?」を自分自身に問い直すきっかけにもなるかもしれない。また、リフレッシュした状態で働き続ける環境を整えることは間違いなく経営にプラスの影響を与えることだろう。

どの立場にとってもメリットがもたらされる。それもまた「有給休暇の取得推進のメリット」と言えるのではないだろうか。

text:働き方改革研究所 編集部