日常生活はもちろん、ビジネスを進めるうえでもWeb環境はなくてはならないものになりました。検索するだけで求めている情報にアクセスできたり、メールや業務管理ツールを活用できたりと、Webを使うことはほぼ無意識と言ってもよく、Web以前のことを思い出すことすら難しいものでしょう。

更に、「クラウドサービス」の登場は、初期費用の安さや導入のしやすさから、ベンチャー企業を中心に爆発的に取り入れられ、よりスピード感のあるビジネスを支える"インフラ"のようになっています。「いつでも、どこでもビジネスができる環境が容易につくれる」ということは、もはや珍しいものではなくなっていると言えるでしょう。

少し前までは、大企業を中心に「クラウド化」に二の足を踏むケースは少なくなかったように感じられます。その理由としては、「セキュリティ問題」「新しいシステムに移行することの難しさ」などが挙げられてきました。

しかし、ここにきて、大企業にもクラウド化の波が訪れているようです。

総務省が発表している「平成28年度 情報通信白書」の「第2部 基本データと政策動向」によると、次のような傾向が見られるとのことです。

クラウドサービスを利用している企業の割合は2014年末から上昇

一部でもクラウドサービスを利用していると回答した企業の割合は44.6%であり、2014年末の38.7%から5.9ポイント上昇している。産業別にみると、「金融・保険業」が61.4%と最も高い。また、資本金規模別にみると、資本金50億円以上企業で79.2%と最も高い。


図表:クラウドサービスの利用状況

クラウドサービスの利用状況

<出典:総務省「通信利用動向調査」>



図表:クラウドサービスの利用状況(産業別及び資本金規模別)
クラウドサービスの利用状況(産業別及び資本金規模別)

<出典:総務省「通信利用動向調査」>

最もセキュリティに敏感であると考えられる「金融・保険業」がクラウド化に前向きであるという結果は、特筆すべき点だと言えるでしょう。

この背景には、クラウドサービスの質が向上したことと、企業側の理解が深まったことなどが考えられそうです。



導入のしやすさ、資産や保守体制の軽減だけじゃない!
企業がクラウドサービスを活用するメリット

同白書によると、企業内で利用されているサービスは「電子メール」が51.9%と最も高く、「ファイル保管・データ共有(51.3%)」「サーバー利用(42.9%)」が続きます。この点については、この記事を読まれている方も実感として納得されるところがあるのではないでしょうか?

そうした変化の理由は「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから(42.3%)」が多数なようです。

クラウドサービスを利用している理由

<出典:総務省「通信利用動向調査」>

しかし、当然ながらクラウドサービスを利用するメリットはこれだけにとどまりません。たとえば、「多様な働き方を実践する」といった「働き方改革」への取り組みにも、クラウドサービスの利用は貢献すると考えられます。



クラウドサービス利用が働き方改革を加速させる理由

クラウドサービスの利用によって働き方改革が実践できるという理由のひとつ目に挙げられるのが「事務作業の手間の削減」です。一例として、勤怠管理について考えてみましょう。

勤怠管理は、働くひと・企業双方にとって大変重要なもの。出勤・退勤時間、休憩時間、休暇・休日の日数などを正確に管理することは、労働基準法を遵守するという点でも、正しい賃金を支払うという点でも、健康経営を推進する意味においても欠かせないものです。

さて、これまで多くの企業では、勤怠管理について、

・自社のイントラネット内で、自社で設計・構築した勤怠管理システムを使う

・物理的にタイムカードに打刻して締め日に表計算ソフトに転記し集計する

といった手法が取られてきました。

このことは、オフィスで仕事をすることを前提とした働き方であれば問題も少なかったでしょうが、今日のビジネスの実態との乖離は否めないものとなってきています。「外出先で対応できないから使い勝手が悪い」「出退勤の打刻だけのために帰社しなければならない」といった声は多く聞かれることでしょう。

そうした"不便"を是正したり、打刻後の集計等の事務処理作業の手間を簡素化したりすることができるようになるのは、クラウドサービス利用のメリットとして挙げられます。また、データが一元化され、リアルタイムで把握できることは、事務処理を担当していたスタッフや部署の手間をも削減し、リソースを別の業務に振り分けることにもつながり得ます。

また、クラウドサービスの最大のメリットである「場所やデバイスを問わずにサービスを活用できる」ということは、直行直帰やテレワークの実践といった現場スタッフの働き方の柔軟性にも寄与するでしょう。さらに、データの反映がリアルタイムで行われることから「働くひとの"動き"が把握できるので、超過勤務や36協定違反などに素早く気付きやすい」という管理者側の利点も考えられます。

クラウドシステムの懸念点「安全性と実績」について

政府主導で始まった「働き方改革」について、いよいよ企業は何らかの取り組みを行わなければならない、という雰囲気になってきました。しかし、やはりまだ「基幹システムや重要なデータについては自社の環境を活用すべし」という考え方は根強いものです。それが「働き方改革と企業のあり方の間のジレンマ」として横たわっているという企業は多いのではないでしょうか。

経営陣や担当者から「クラウド化およびクラウドサービスの安全性と実績の有無に裏打ちされた安心感が得られれば、踏み出しやすいのに...」という声が漏れてきそうです。特に、勤怠管理のデータや工数、予算、経費精算等の情報は、企業にとっても働くひとにとってもセンシティブな内容。その性質上、外部からのアクセス等による情報漏えいリスクについて、敏感になることは十分に理解できるものです。

確かに、一般的なクラウドサービスの中にはアプリケーションの利用契約内容の中に独自のシステム環境(ハードやDB等)を含んでいるため、サービスを提供する業者がいつでも何度でも顧客のデータにアクセスすることができてしまうものが見受けられます。

しかし、金融・保険業の企業が導入できるセキュリティレベルのサービスも存在するのは事実です。

たとえばセールスフォースが提供する Force.com は、現在、全世界で10万社社以上、金融機関やエンタープライズ企業も採用するPaaS(クラウド環境のひとつ。Platform as a Serviceの略)の代表的なサービスとして知られています。

ここでは、特別な許可が無い限り契約者以外がシステム環境にアクセスすることができないようになっており、高い安全性が担保されています。これまでのセキュリティレベルを担保する、あるいはそれ以上のものを選ぶことができるようになれば、企業のクラウド化はいままで以上に加速すると想像できます。

また、クラウドサービスの利用は、在宅でなら就業が可能なひとだけでなく、多くの方にとって「いま以上に働きやすい社会」に近づく基礎になるとも考えられるでしょう。

働き方の見える化

text:働き方改革研究所 編集部