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以前から新幹線などのような指定席の多い特急列車であれば列車毎の混雑状況は把握可能。しかし、テクノロジーの進化でより詳細な予測ができるようになった(※写真はイメージ)

 東日本旅客鉄道(JR東日本)は山手線の混雑状況の傾向が分かるスマートフォンアプリを実験的に提供しています。このアプリは「曜日毎」「時間毎」「駅毎」、さらには「号車毎」の混雑状況を可視化できます。どの駅にどの時間帯にいても、過去の同様の情報から、どこの車両がどの程度混雑しているかが分かるもので、特に「直近の電車でも簡単には乗れない」という朝の山手線の混雑ぶりを考えれば便利な機能と言えるでしょう。

「小分け化」が様々な領域に入り込む

 かなり以前から、例えば新幹線などのような指定席の多い特急列車であれば、列車毎の混雑状況は把握可能で、ある程度の予測はできていましたが、時間的にも空間的にもここまでのメッシュの細かさで予測ができて、しかもそれをエンドユーザーが簡単に利用できるようになったことは、これまでと大きく異なります。

 このような「小分け化」は様々な領域で進んでいます(連載第4回第9回参照)。列車の座席予約にしても、エンドユーザーレベルで座席を指定して予約することも簡単になりました。さらに飛行機やスタジアムでは座席指定ができるだけでなく、一つひとつの座席の価格も異なり(非常口や障害物の近くの席は個別に値段が違うなど)、しかも「時価」という形で時間的にも刻々と変化するものになっています。

 このような「個別予約」の進展は、おそらくレストランの席やビジネスホテルの部屋などでもエンドユーザーが「ここ」という形で「一品予約」が可能な世界に近づいていくことになるでしょう。また価格も、眺望や使い勝手などによって細かく分かれていくことも十分考えられます。

 さらに「小分け化」は他の領域にも進展しています。金融の世界に目を向けると、「マイクロファイナンス」「キックスターター」のような少額融資/投資が該当するでしょう。さらには天気予報でもエリアのピンポイント化が進んでいます。

IoTがリアルタイム、個別化を後押し

 ICTの進展によって「小分け化」のメッシュはさらに様々な分野に広がっていく可能性があります。例えば、施設の稼働率や混雑率といった場所によって大きく異なるものが挙げられます。既に事業化が進んでいるものとしては駐車場が代表的ですが、同様に、「場所によって混雑率が変わって、時に(不本意ながら)長蛇の列に並ばなければならない」という状況は他にも考えられます。

 例えば、ランチタイムのレストランや屋台の行列、さらにはトイレの個室などです。これまでは自動車の渋滞情報がメインだった「混雑状況」も、徐々に(前述の山手線の例のように)人の混雑状況への応用へと進んでいくことでしょう。

 これまではICTが貢献してきた領域は(細分化による)「管理工数やコストの低減」や(スマホアプリの進展による)「エンドユーザーの使い勝手」という側面が大きかったですが、これからはさらにGPSやIoTの活用による「リアルタイムかつ個別の箇所を特定した、状況把握の精度向上」を、人と様々なモノに適用するという側面が大きく寄与していくのではないかと予想できます。

 IoTの活用による新しい仕事や働き方の可能性は、まだまだ創造的なアイデアが生かせる領域と言えます。