2016.10.18

長時間労働を抑制する「勤怠管理」の基本(5)
~1年単位の変形労働時間制~

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1年単位の変形労働時間制

「1年単位の変形労働時間制」は、1ヶ月単位の変形労働時間制の変形期間が1ヶ月以内から1年以内に延長されたイメージです。

1ヶ月を超え1年以内の期間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間であれば、特定の日に8時間、特定の週に40時間を超えて働かせることが認められます(特例事業場の44時間は適用なし)。季節ごとに忙しさが大きく変わる職種や年間の繁忙期が予想できる旅館業などによく導入されています。

例えば

・1日の所定労働時間:7時間30分
・原則として土日週休2日制
・3月・4月・6月・10月末から2月までは、繁忙期なので土曜日出勤
・年末年始やお盆に休みを集中させる

というように、春期と冬期にはっきりとした繁忙期がある企業の場合、「1年単位の変形労働時間制」を採用することで、労働時間の効率化と割増賃金コストの削減を図ることができます。

では、この企業で「1ヶ月単位の変形労働時間制」を採用するとどうなるでしょうか。

上図を見ると、4月・6月・2月の労働時間が180時間、3月の労働時間は195時間となっています。「1ヶ月単位の変形労働時間制」では暦日数30日の労働時間の総枠が171時間とされているので、このケースでは、時間外労働が発生することになり、36協定の締結および労働基準監督署への届出や割増賃金の支払いが必要となります。

ちなみに「1年単位の変形労働時間制」では、法定労働時間の総枠は下記の通りです。

変形期間法定労働時間の総枠
3ヶ月(92日) 525時間42分
6ヶ月(183日) 1,045時間42分
1年(365日) 2,085時間42分
1年(366日) 2,091時間24分

上図では労働時間の総合枠は2,078時間となっています。上記の制限内に収まっている限りは、たとえ1週40時間を超える週があったとしても、超えた分の労働は時間外労働とはなりません。

さて、「1年単位の変形労働時間制」は「1ヶ月単位の変形労働時間制」よりも厳しい規制が設けられています。

1日および1週間の労働時間の限度

「1年単位の変形労働時間制」では、対象期間における1日および1週間の労働時間の限度が厳密に定められています。

-1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間

さらに、対象期間が3ヶ月を超えるときは

-労働時間が48時間を超える週は、連続で3週以下であること
-対象期間を3ヶ月ごとに区分した各期間において、労働時間が48時間を超える週は、週の初日で数えて3回以下(※1)

(※1)
下記のように1年を3ヶ月単位で区切った場合、①から④のそれぞれの期間内に所定労働時間を超える週は3回週以下でなければならないということです。

連続して労働させる日数の限度

-連続して労働させることのできる所定労働日数は6日
-特に忙しい特定期間においては1週間に1日の休日を確保しなくてはならない(※2)

日曜日を起算日とした1週間で、最初の日曜日が休日だったとします。翌週は日曜日を出勤日として最後の土曜日に休日を与える、というかたちでも「1週間に1日の休日を確保」という条件を満たしているので、特定の期間においては、所定労働日数は連続12日までOKということになります。

労働日数の限度

-年間労働日数は280日が上限。

つまり、最低でも85日(うるう年は86日)の年間休日数を確保しなくてはなりません。対象期間が3ヶ月を超えて1年未満である場合には、280日×(対象期間の暦日数÷365日)が上限となります。

1年単位の変形労働時間制を導入する際の手続き

1年単位の変形労働時間制を導入するためには、必ず労使協定を締結して、これを労働基準監督署に届出ないといけません。

労使協定には、5つの事項を定めます。

① 適用する社員の範囲(正社員を適用し、パートは除外など)
② 起算日及び対象とする期間(通常1年以内)
③ 特に忙しい期間(特定期間といいます)
④ 出勤日とそれぞれの出勤日の労働時間
⑤ 労使協定の有効期間

(※④については、1年間を1ヶ月ごとに区切って、それぞれの月の出勤日数と総労働時間数とすることも可能です)

1年単位の変形労働時間制における時間外労働の考え方

もちろん1年単位の変形労働時間制を導入しても、時間外労働がゼロになるわけではありません。割増賃金の対象となる時間外労働については、次のように考えることが行政解釈で示されています。

(1)1日については、労使協定で8時間を超える所定労働時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

(2)1週間については、労使協定で1週40時間を超える時間を定めた週はその時間、その他の週は1週40時間を超えて労働した時間(1で時間外労働となる時間は除く)

(3)変形期間(1年以内で定めた期間)については、変形期間における法定労働時間の総枠(40時間✕対象期間の暦日数÷7)を超えて労働した時間(1または2で時間外労働時間となる時間を除く)

この制度で大事なことは、「いかにして閑散期の労働時間を減らせるか」ということです。労働時間は1年を通して計算しますので、祝祭日が多い月や忙しくない月の労働時間を減らせれば、減らした分だけ他の月の労働時間を多くできます。しかし先ほども述べたように、休むべき月にはしっかりと休み、メリハリのある働き方ができるような運用方法に気をつけなければいけません。

1年単位の変形労働時間制の詳細につきましては、こちらもご参照ください。

厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-6a.pdf
東京労働局
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/1nen.pdf

「変形労働時間制」の導入+従業員のモチベーションをアップさせる取り組みが重要!

「変形労働時間制」を採用することで、これまで支払われていた割増賃金が支払われなくなり、従業員の不満が生まれてしまう可能性もあります。労働時間の縮小や業務の効率化に取り組む姿勢をみせず、残業代カットのためだけに変形労働時間制を採用するというのでは、従業員のモチベーションは下がる一方です。

生産性向上に本当に効果のある「変形労働時間制」を実現するためには、

・業務量の繁閑予測や適正な人材配置を徹底的に見直し、社内の無駄を発見する
・業務量の少ない時期には、しっかりと短時間で帰社させる
・削減された労働時間をリフレッシュや自己啓発に活用できるような福利厚生を充実させる
・削減された割増賃金コストを、短時間で結果を出している従業員への給与に反映させる

などの取り組みと合わせて実践していくことが重要ではないでしょうか。

次回は「フレックスタイム制」について、考えてみたいと思います。



長時間労働を抑制する「勤怠管理」の基本

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