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重要な「休暇」の仕組みづくり

少子高齢化によって労働力不足が進むなか、労働者が長く活躍できる職場環境を整えることは企業にとって重要な経営課題となっています。特に育児や介護をしながら働くことが当たり前になりつつある今、「休暇」に関する仕組みづくりは最優先事項といっても過言ではないでしょう。

「休み方・働き方改革」はアベノミクスにおいても中心的役割を果たしています。厚生労働省が発表した「平成
30年就労条件総合調査 結果の概況(※1)」によると、(※2)平成29年の1年間に企業が付与した年次有給休暇の取
得率は51.1%。日数は9.3日だったそうです。政府は今、「2020年までに有給休暇の取得率70%」を目標に掲げ、法律や制度を整えつつありますが、目標達成にはまだまだ遠い状況です。

労働者がしっかりと休める環境を作るためには、休暇日数を増やすだけでは十分ではなく、休みを取りやすくする仕組みや社風を作るところに力を注がなくてはなりません。今回は法律で定められている「休暇制度」の基本を整理するとともに、「休暇」に関する企業の取り組み事例などについてもご紹介したいと思います。

(※1)
厚生労働省平成30年就労条件総合調査 結果の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaikyou.pdf

「休暇」とは?

以前のコラムでも紹介しましたが、「休暇」とは「労働義務があるのに免除された日」を意味します。ちなみに法律上では「休暇」と「休業」という用語は明確に使い分けられてはいないようです。

さて、休暇には労働基準法で定められている「法定休暇」と、企業が任意に設定できる「法定外休暇」があります。

【法定休暇】

・年次有給休暇

労働者が心身のリフレッシュや自己啓発などを図れるように、賃金の支払いを受けながら休暇を取ることを認めた制度(詳しい内容については、次回のコラムでご紹介します)。

・産前産後休業


出産予定日の6週間前から(多胎妊娠の場合は14週間前から)、出産費日の8週間後まで休むことができる制度。産前休暇は労働者からの請求によって取得するものですが、産後については請求の有無にかかわらず、出産翌日から8週間は就業することができません(ただし本人が請求し、医師が認めた場合には6週間経過後に就業することができます)。産前・産後の休業期間については法律上給料の支払い義務づけはなく、取り扱いは会社の判断に任されています。

・生理休暇

生理によって仕事をすることが困難なほど体調が悪化している場合に取得できる休暇。半日または時間単位での請求も認められています。休暇中の給料の支払いについては法律上の義務づけはなく、取り扱いは会社の判断に任されています。会社が生理休暇の日数を限定することは認められていませんが、有給で休める日数を決めることは認められています。「生理休暇は何日取得しても構わないが、2日間は有給、それ以降は無給」というように就業規則などで明確に定めておくことが重要です。

・育児休業

子を養育する労働者が申し出ることによって、一定期間、休業することができる制度です。原則として子が1歳に達するまで。平成29年10月の法改正により、保育所に入れない等の場合には再度申出することにより、育児休業期間 を「最長1歳半まで」だったところが「最長2歳まで」延長できるようになりました。

・介護休業

労働者の申し出によって、要介護状態にある対象家族1人につき、常時介護を必要とする状態ごとに通算93日まで、原則1回の介護休業を取ることができます。平成29年1月の法改正により、通算93日まで、3回を上限として分割での取得も可能になりました。

・介護休暇

介護休暇は、要介護状態にある家族の介護や病院への送迎などが必要な場合に、年に最大5日まで(対象となる家族が2人以上の場合は年に10日まで)の範囲で、休暇を取得ことができる制度です。平成29年1月の法改正により、半日単位での取得が可能になりました。

・子の看護休暇

小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年に5日まで(子供が1人であれば5日、2人以上であれば10日)、看護のための休暇を取得することができます。看護休暇中の賃金については法律上支払い義務づけはなく、取り扱いは会社の判断に任されています。平成29年1月の法改正により、半日単位での取得が可能になりました。

・時間外労働に関する代替休暇

1ヶ月60時間を超える時間外労働を行った場合、割増賃金の一部の支払いを有給休暇に代えることができる制度です。

詳しい内容についてはこちらをご参照ください。
厚生労働省「改正育児・介護休業法のポイント」

【法定外休暇】

疾病休暇、慶弔休暇、夏季休暇など、会社が任意に設定できる休暇です。


休暇制度への細かな配慮は採用の魅力づけにもなり、また離職率の低下にも大きく貢献します。育児や介護をしながら働く人は益々増えており、今後、法制度がさらにこまめに変更されることが予想されます。常に最新の情報をチェックするようにしましょう。また企業は、従業員から休暇の取得申請があった場合には、認めなければなりません。休暇取得のタイミングや給与面などにおいてトラブルにならないよう、事前に制度の内容を正しく把握し、就業規則を整え、社内に周知しておくことが重要です。

休暇制度への細かな配慮は採用の魅力づけにもなり、また離職率の低下にも大きく貢献します。次回は「有給休暇制度」について、詳しくご紹介したいと思います。

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