2016.10.26

長時間労働を抑制する「勤怠管理」の基本(11)
~休暇に対する国・企業の取り組み~

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有給休暇に関する労基法改正

政府は平成27年4月に国会に提出された労働基準法の一部改正案において、年次有給休暇を10日以上与えられた労働者については、5日分は企業側が時期を決めて取らせるよう企業に義務づける内容を盛り込みました。

労働基準法では6年半以上働けば年20日の有給休暇がもらえるようになりますが、先述した通り、取得率は50%に達しません。管理職を含むすべての正社員に年5日分の有休を取らせることを企業の法的義務にすることで、取得率を高めることを目指しています。

この改正法は平成28年4月1日から施行予定となっていたものの、国会未審議のまま通常国会が終了してしまったため、秋の臨時国会以降にまた審議されることになりそうです。

厚生労働省 厚生労働省・労働基準法等の一部を改正する法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000074336.pdf

育児休業とは?

育児休暇とは、「育児休業法」という法律で定められた、子供が1歳に達するまで休業することができる制度です。

・対象者は?

育児休暇を取ることができるのは原則として常用雇用、つまり正社員の労働者や長期間同じ会社で働いている契約社員、派遣社員、パートタイムの労働者です。短期の契約で仕事をしている人など、休暇中に労働契約が切れる場合は対象になりません。

・期間は?

育児休暇で休むことができる期間は、出産から子供が満1歳になる誕生日の前日までの1年間です。育児休暇は男女ともに取ることができるので、例えば夫婦2人で半年ずつの計1年といった取り方も可能です。また、子供を保育所に入れることができない場合などは、さらに半年の延長が認められることがあります。

・休暇中の給与は?

育児休暇の間についても会社には給料支払いの義務がありません。産前・産後休業と同じように、休んでいる間の扱いはそれぞれの会社の判断に任されています。しかし、給料が支払われない場合や大幅に減給されてしまう場合は、雇用保険から育児休業給付金を受け取ることができます。

子の看護休暇とは?

小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年に5日まで(子供が1人であれば5日、2人以上であれば10日)、看護のための休暇を取得することができます。
子どもが怪我をしたり病気にかかってしまったりして看病をしなくてはならない場合、また予防接種や健康診断を受けなくてはならない場合に取得できる休暇です。
企業は年次有給休暇とは別に、子の看護休暇を与える必要があります。

現行の法律では、1日単位での取得とされていますが、平成29年1月1日の法改正によって、半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能になります。

介護休業・介護休暇とは?

家族を介護するための休暇には次の2種類があります。

・介護休業

介護休業は、要介護状態にある家族を介護するための休業制度です。対象となる家族ひとりにつき、合計93日を上限として休むことができます。法律上支払い義務づけはなく、取り扱いは会社の判断に任されていますが、雇用保険法による介護休業給付を受けることができます。

現行の法律では対象家族ひとりにつき、ひとつの常時介護を必要する状態ごとに1回の取得とされていますが、平成29年1月1日に法改正され、対象家族ひとりにつき、ひとつの常時介護を要する状態ごとに通算93日まで、3回を上限として介護休業を分割して取得することができるようになります。

・介護休暇

介護休暇は、要介護状態にある家族の介護や病院への送迎などが必要な場合に、年に最大5日まで(対象となる家族が2人以上の場合は年に10日まで)の範囲で、休暇を取得ことができます。

この制度は、要介護状態の家族の日常的な介護のために有給休暇や欠勤などで対応している労働者が多いことから、介護のための短期の休暇制度として導入されました。
現行の法律では1日単位での取得とされていますが、平成29年1月1日の法改正によって、半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能になります。

育児・介護が必要な労働者に対する休暇以外の対応

育児や介護が必要な労働者に対しては、企業は休暇以外にもさまざまな対応をする必要があります。

・解雇、不利益な取り扱いの禁止(育児・介護)

・時間外労働、深夜労働の制限(育児・介護)

小学校就学前の子を養育している労働者・要介護状態の家族を介護している労働者から請求があった場合、1ヶ月24時間、1年150時間を超える時間外労働や深夜(午後10時から翌日午前5時まで)の労働の禁止

・所定外労働の免除(育児)

3歳未満の子を養育している労働者から請求があった場合、所定労働時間を超えた労働の禁止

・所定労働時間の短縮措置(育児)

3歳未満の子を養育している労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度(1日の所定労働時間は原則6時間)を設けることが義務づけられている

※平成29年1月1日、育児・介護休業法が変わります!

平成29年1月1日から育児・介護休業法の内容が一部改正されます。厚生労働省のホームページなどで最新の情報を確認するようにしましょう。

厚生労働省 「育児・介護休業法が改正されます!」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h28_06.pdf

休暇に関する企業のさまざまな取り組み

労働者がしっかりと休める風土をつくるためには、法令遵守はもちろんのこと休みを取るための仕組みづくりも重要です。ここからは休暇に関する企業の独自の取り組みについて、少しご紹介します。

○上司とともに有給休暇の年間計画を立案!(住友商事)

社員が上司とともに有給休暇の年間計画を立案。毎月の有休休暇取得日数を決め、上司が取得状況をチェックします。それまでは社員の自主性に任せていたために、なかなか有給休暇の取得が進まなかったそうですが、上司が積極的に介入することによって取得率が向上しているそうです。

○3連休には有給休暇をつけて4連休に!(兼松)

3連休や飛び石連休の前後に有給休暇をつけて社員に4連休を取得してもらう制度を導入。各年度のはじめに最低4回の取得候補日を決め、そのなかから原則で年2回以上の取得を必須としています。半強制的に取得させることで、なんとなく休みを取りづらいという雰囲気を払拭しているそうです。

○男性の育児休暇の取得を義務化!(リクルートコミュニケーションズ)

育児休暇の日数を20日に設定し、そのうち5日の取得を義務化。これまでは任意取得だったために、利用が進まなかったそうですが、義務化することで取得拡大を目指しています。

○産休・育休中の給与を全額保証!(メルカリ)

産休中は健康保険から「出産手当金」が、育休中は雇用保険から「育児休業給付金」が支給されますが、その金額は給与の半額から3分の2程度です。メルカリ社は、社員が勤務中と同じ金額の給与が得られるよう全額保証することで、にし、安心して休める環境を整えています。

政府・自治体も「休める」労働環境の整備をバックアップ

政府や自治体も、働き方・休み方改革に積極的に取り組む企業を表彰することで、働く人がしっかりと休める社会づくりに貢献しようとしています。自社の制度づくりにおいては、こういった表彰企業の取り組みを参考にしてみてはいかがでしょうか。

○経済産業省 「健康経営銘柄」

経済産業省は東京証券取引所と共同で、労働者の健康管理に戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定・公表しています。

経済産業省 「健康経営銘柄」
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_meigara.html

○東京都 「働き方改革宣言企業」

東京都は長時間労働を抑制し、有給休暇の取得を促進する都内の企業を「働き方改革宣言企業」と認める制度を開始しました。働き方改革を企業価値の向上や人材確保・定着などに生かすことを目指しています。承認された企業には最大60万円の奨励金があり、成果が上がれば、さらに最大40万円が支給されます。

東京都 「働き方改革宣言企業」
https://www.hataraku.metro.tokyo.jp/equal/hatarakikata/index.html

○厚生労働省 「働きやすさ」が一目でわかる数万社規模のデータベース公開へ

厚生労働省は女性が活躍している企業、有給休暇の取得率が高い企業など「働きやすさ」が一目でわかる数万社規模のデータベースを作成中。インターネット上で閲覧できるサービスも2018年中に開設する予定です。


労働基準法で定められている通り、休暇のない企業というものは本来存在しないはず。そして、いくら長い休暇があっても、労働者が利用しなければ意味はありません。日本は世界のなかでも、もっとも休暇に関心の低い国という調査結果もあるようですが、これまで長時間労働をよしとしてきた社会的な慣習から、休みを取るということに抵抗がある人も多いのではないでしょうか。

また、いくら立派な制度が用意されていたとしても、「制度の存在を知らない」、「内容を知らない」ことから休みを取れず、悩んで退職してしまうというケースも少なくないように思います。

これからは育児や介護をしながら働くことが当たり前の社会がやってきます。労働人口がどんどん減っていくなか、「働き方や休み方を改め、生産性を高める」ことにいち早く取り組まなければ、企業は存続すら難しくなってしまいます。

今回紹介した企業の多くは、個人の働き方に「積極的に介入」し、休暇を取ったり早く帰宅したりすることを半ば強制している印象です。制度を作って終わりにするのではなく、組織を挙げて具体的な行動を起こすことが何より重要ではないかと感じます。

労働基準法を遵守するうえでも、さまざまな勤務形態を正しく運用するうえでも、また新たな制度づくりに挑戦するうえでも、やはり適正な勤怠管理なしでは先に進むことはできません。
次回の最終回では、働く人一人ひとりがイキイキと働ける環境をつくるためには何が必要か、またこれからの勤怠管理はどうあるべきかについて、考えたいと思います。



長時間労働を抑制する「勤怠管理」の基本

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