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時代によって変わり続ける「労働基準法」

今回の連載では、労働基準法で定められているさまざまな制度について解説をしてきました。労働者保護を目的に昭和22年に生まれた労働基準法ですが、その内容は時代の要請に応じて大きく変化しています。

近年のサービス産業の拡大によって専門的・創造的な職業が増え、すべての労働者に対して一律的な労働時間管理を適用することが難しくなりました。そのなかで、フレックスタイム制・変形労働時間制・裁量労働制など自律的な働き方ができる制度が作られ、労働時間や休暇に関する規制の見直しなども合わせて行われてきました。今回の「働き方改革関連法案」は、これまでの一連の改正のなかで、最もインパクトの大きいものかもしれません。長年審議されてきた高度プロフェッショナル制度も、ついに創設されることとなりました。

企業も個人も、もはや「9時始業、17時終業。必ず職場に出社しなければならない」という固定観念に縛られる必要はなくなりました。流通業であれば一年間の変形労働時間制、IT企業であればフレックス制度など、自社の事業スタイルや戦略に合わせて、適切な制度を導入することが何よりも重要です。もちろん、そのためには制度の目的や内容を正しく理解する必要があります。

働く「個人」が働き方を「自由に」選べる時代へ

さらにここ数年、個人の就業形態が多様化し、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員といった非正規雇用者や、育児や介護をしながら働く社員、外国籍の社員など、さまざまな背景や事情をもって働く人が増えています。長時間働くことを美徳とするような一昔前の価値観では、社員の個性や能力を生かすことができないばかりか、社員は疲れ、組織は硬直化し、成果に対する人件費率が割に合わないほど高いというような結果に陥ってしまいます。このような文化のもとで企業が成長していくのは、とても難しい時代になりつつあります。
労働人口が減少し、人材採用の難易度がこれから益々高まっていくことが予想されるなか、社員の生産性を向上し、離職率を下げることは企業にとって喫緊の課題です。個人のライフステージが移りゆくなかで、長い期間に渡ってモチベーション高く仕事にコミットすることは、柔軟な働き方なしではとても実現できません。
これからは、自社の事業戦略や人材戦略に応じて社員に多様な働き方の選択肢を与え、社員一人ひとりが自律し、実力を存分に発揮できる場を作れる企業こそが、真の競争優位性を得られるといっても過言ではないでしょう。

先進的な企業のさまざまな取り組み

そんななか、優秀な人材採用と定着のために常に人事制度の改革に取り組む企業が増えています。
コラムでは、以下の企業の事例について簡単に紹介しました。
・スタートトゥデイ : 昼休憩なしの6時間労働制
・ファーストリテイリング : 変形労働時間制による週休3日制度
・住友商事 : 幹部社員に対する平日5日の連続休暇取得義務化
・さくらインターネット : 連続2日の有給休暇取得に対し1日あたり5,000円支給
・リクルートコミュニケーションズ : 男性の育児休暇の取得を義務化
・メルカリ : 産休・育休中の給与を全額保証

もちろんこのほかにも、さまざまな企業が働き方改革に取り組んでいます。特にこの分野のパイオニアとして知られるサイボウズでは、2006年に最長6年間の育児・介護休暇制度を導入したことが大きな話題となりました。さらに2007年には「選択型人事制度」を設け、ライフステージによって「時間に関係なく働く」・「少し残業して働く」・「定時・時短で働く」という3つの選択肢を従業員に提示しています。

味の素社は、2017年4月から所定労働時間を7時間15分に短縮しました(基本給の変更はなし)。同社では「働き方計画表」という社内ツールを使い、従業員自身が残業時間や有給取得日などの労働計画表を作成し、上司や同僚とそれを共有することによって、自分の働き方を「見える化」しているそうです。2020年までに年間の総労働時間1750時間を目標に労働時間短縮を進めてきましたが、2018年度時点ですでに約1800時間まで短縮しており、効率的な働き方の浸透に一定の効果があったことを発表しています。
また伊藤忠なども、いち早く「朝型勤務制度」を導入し、残業削減への取り組みを進めています。

個人が働き方を「選択」できる環境づくりには、何が必要か

上に挙げた事例はほんの一例です。最近は「働き方改革」の重要性に対する認識が高まっており、ユニークな休暇制度や福利厚生制度をもつ企業が増えています。ただ、「働き方改革」で重要なことは制度を作ることではなく、「使ってもらう」ことです。どんなに立派な制度があったとしても、企業が積極的に告知したり、従業員の背中を押したりしない限りは、結局は「絵に描いた餅」になってしまいます。長時間働くことががよしとされる社風のなかで、自分ひとりだけ年に2回4連休を取得するということはとても難しいことです。

「働き方改革」に成功している企業の共通点は、「コミュニケーション」ではないかと強く感じます。休んだり、時短で帰ったりすることに従業員が不利益を感じることなく、気持ちよく働き続けるうえでは、コミュニケーションが何よりも重要です。例えば味の素などは、有給休暇の取得計画に上司が積極的に関わっています。またサイボウズでは、人事制度の構築に現場の社員の意見を積極的に取り入れ、ワークショップなども頻繁に開催しています。働き方を選択できる職場には、こういった文化の醸成が不可欠です。

環境づくりは、一朝一夕にできることではありません。10年後、20年後に優秀な人材が集まる成長企業になっているかどうか、多種多様な人にとって本当に働きやすい企業になっているかどうかは、今、それぞれの企業が「働き方」についてどう考え、どう行動するかにかかっています。組織としての理想の姿、目指すべき未来をしっかりととらえ、そのための一歩を踏み出してみることが重要ではないでしょうか。

「守り」の勤怠管理から「攻め」の勤怠管理へ

今回の連載テーマである「勤怠管理」に話を戻すと、労働基準法などの法令を遵守し、従業員に適切な労働環境を与えるための勤怠管理は、企業を「守る」ための勤怠管理といえるでしょう。しかし、事業戦略や人事戦略に合わせて制度を進化させ、さまざまな働き方をするあらゆる従業員のパフォーマンスを最大化するためには、勤怠データも重要な経営データとしてとらえていくことが重要です。そのための勤怠管理が「攻め」の勤怠管理です。

あるベンチャー企業では、毎月個人の成果やパフォーマンスに関して5段階で自己評価し、自分の仕事やコンディション、組織に関しての質問に答えるアンケートを実施しているそうです。人事部はこれらのアンケートと勤怠データや査定データを掛け合わせ、労働時間と成長実感の関連性を分析したり、個人のモチベーションと組織としての成果に乖離がないかなどのチェックをしたりしています。

そのほか短い労働時間で高いパフォーマンスをあげている社員の働き方やノウハウをテンプレート化して社員の育成に活用したり、勤怠情報を売上情報やトレンドなどと掛け合わせたりすることで、どこに誰を配置するのがよいのかなどの予測・実験を行うこともなどもできるかもしれません。

勤怠管理データを給与計算や長時間労働のチェック、業務量の偏りなどを見つけるためだけに使うのはもったいないことなのかもしれません。データ分析やテクノロジーの力で新たな視点を発見し、上司と部下とのコミュニケーションや人材戦略に生かすことこそが、「攻め」の勤怠管理ではないでしょうか。

TeamSpiritで労働生産性の向上を実現を実現

「守り」の勤怠管理を実現するだけでも、もはやシステムの導入は必要不可欠です。冒頭にあげた産業構造の変化や働き方の多様化により、複雑な変形労働制やフレックスタイム制の導入が増えるなかで、労働時間や休暇を厳密に管理し、正しい給与計算を手作業で行うことは、ほぼ不可能でしょう。

もちろんシステムだったらなんでもよいというわけではありません。固定的なシステムでは、個人の働き方の変化や社内制度の変更、頻繁に起こる法改正に柔軟に対応することができません。マイナンバーなどの機密性の高いデータを取り扱う必要がある以上、セキュリティの面でも最高レベルの対策を施す必要があります。
せっかくシステムを導入するのであれば、正しい労務管理や業務を簡略化できるだけではなく、多様な個人が柔軟な働き方を実現でき、同時に生産性が向上するようなシステム、「守り」と「攻め」の勤怠管理を同時に実現できるようなシステムが理想です。そのためには、柔軟性・信頼性・拡張性に秀でたクラウド型サービスを検討することが一番の近道ではないでしょうか。

TeamSpiritは、勤怠管理・経費精算・プロジェクト工数管理・電子稟議などの日常業務をクラウドで一元管理する「オフィスワークオートメーションツール」です。勤怠管理に関しては、日々の労働時間管理はもちろん、休暇の日数管理や申請・承認フロー、残業時間管理や申請・承認フロー、またさまざまな勤務形態に応じた勤怠管理機能がすべて一体化されています。さらに給与計算や経費精算、工数管理と連携したソリューションも用意されています。

例えば就業時間を記録すると、その範囲内でのみ原価管理用の工数がスライダーで登録できるなど、業務アプリケーション同士が連動することでデータ入力が自動化され、ユーザーの日々の煩雑な業務を大幅に削減することができます。さらに企業内SNSが標準で装備されているため、さまざまなアイデアや情報を社内でスピーディーに共有することができ、コミュニケーションも活性化されます。

拡張性に関しては、セールスフォース・ドットコムのAppCloudをプラットフォームとして採用しているため、セールスフォース・ドットコムの基盤を通してつながっていれば、自社開発のアプリケーションであろうと、異なるベンダーのアプリケーションであろうと、ひとつのシステムのように連携させることができます。もちろん、PC・スマホ・タブレットなどのマルチデバイスを手軽に導入することも可能です。世界最高水準の安全性・安定性をもつことも、大きな利点です。

勤怠管理は「従業員を管理するもの」というイメージで語られがちですが、今やそれだけではありません。優秀な人材の採用・育成・適正配置はもちろん、経営戦略や事業に直接貢献する機能として再認識することが必要とされる時代がきているのです。
人々の働き方も法律も、これまでよりもさらにスピーディーに変化していくはずです。「やらなきゃ」と思ったときにすぐに導入することができるWorkForceSuccessPlatformのTeamSpirit。「守り」から「攻め」へ、「管理」から「戦略」へ――TeamSpiritを使って、新しい時代の勤怠管理に一歩踏み出してみてはいかがですか。

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