2015.11.05

新卒一括採用の習慣がないアメリカ
重要なのは「メンテナンスの必要性」

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専攻した分野を活かし、即戦力を求められるアメリカ。日米の習慣の違いは“厚切りジェイソン”も「TeamSpiritファン感謝Day2015」(https://www.teamspirit.co.jp/catalyst/news-report/fanday2015-1.html)の中で指摘した

 アメリカという国は歴史が浅く、かくあるべし、という社会通念・固定観念が比較的少ない社会です(もともとそれを打ち破るためにアメリカに移民してきた人で出来た国ですのでそれは当たり前)。なので、個々人が思い思いに自分の道を進んで挑戦しやすく、たとえ若くても才能があり運も勤勉性もあれば、どんどん上昇していけるという「出る杭は伸びる・伸ばす社会」です(スティーブ・ジョブス、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグしかり)。それは同時に、自己責任の範囲がより大きいということを意味し、それがうまくコントロールできないと一般社会から逸脱しかねないリスクと表裏一体です。

 アメリカの若者は通常18歳の時点で親元を巣立ち自立することが期待されます。また、一定数の新卒が同じタイミングで一斉に入社して、終身雇用というケースも稀。ということで、常に自己管理=自身のメンテナンスが求められるのです。

その1 健康のメンテナンス

 アメリカではご存知の通り、健康保険制度が未だにうまく機能しておらず、そのため予防医療が発達しています。不摂生の結果、病気やけがをしてびっくりするような治療費を払うより、病気にならないようにバランスのとれた食事を心がけたり、喫煙・飲酒を控えてエクササイズを積極的に生活に取り入れている人も多く見受けられます(もちろんアメリカは上記で述べた通り個人差が激しいので、真逆のライフスタイルも当然散見されます)。

 また、アメリカの企業は、生産性・効率性の向上に関して非常に熱心に取り組んでいるところが多く、社員のパフォーマンスも通常半期毎にレビューされます。一定の生産性を保つには、まず病欠などはより少ないことが望ましく、仕事で優れたパフォーマンスをあげるためには心身ともども健康であるからこそ、という意識が浸透しています。最近、「Fitbit」などのウェアラブルデバイスをアメリカの企業が一括購入・社員に配布するケースが増えているのも、社員が健康であることを促進し、パフォーマンスの向上、ひいては会社の業績向上につなげることが目的なのです。

 シリコンバレーに来ると分かりますが、エンジニアでもアウトドア指向の人が数多く見られ、ロッククライミングやランニングなどを出社前や退社後にこなしたりしますし、ジムに定期的に通う人は本当に多い。頭脳を酷使した後、体を動かして心身のバランスをうまく取っています。

 日本の場合、得てしてより長時間働くことが仕事に対するコミットメントを示すことにつながりがちかと思いますが、よい仕事とは、やはり心身が健康でエネルギーが満ちたコンディションの上で実現するもの。また、今後ますます仕事においてもクリエイティビティの要素が高くなってくると思われ、ずっとオフィスで働き詰めで疲弊していては、よいアイディアは生まれづらい。意識的にしっかり休養を取って体を休めることも仕事のうち、また社外の人や情報と接することも思考の凝り固まりを防ぐ上でも重要です。時に日本の方で、不健康自慢(?)をしたりする方がいらっしゃいますが、それはもってのほか。体調管理はプロフェッショナルの基本です。

その2 ファイナンスのメンテナンス

 日本の雇用状況も変わってきつつありますが、新卒で入ってそのまま定年まで勤め上げる――最初は給与は少ないものの、年功序列によってその会社でキャリアを積むほど段階的にあがっていき、最後は退職金でフィニッシュ、というケースもまだあるかと思います。給与と時間をx, y軸とした折れ線グラフでいうと右肩上がりのリニアな一直線な感じです。 

 アメリカだと、一生に一社だけ、という人は稀で、少なくとも私は転職を経験していない人に会ったことがありません(シリコンバレーが特に転職数が高いというのもありますが)。こちらのグラフはまさしく百人百様。同じようなステディな右肩上がりもあれば、急カーブの右肩上がり、転職によって給与が上昇または下降、休職・レイオフや、スタートアップにゼロから挑戦したりで無給の時期があったり、そのグラフの折れ線は激しく乱高下があったり、途中が途切れていたりします。

アメリカでは、若くても能力があれば昇進が早く、またシリコンバレーの優れたエンジニアなどはキャリア3年程度でも年棒で1千万円を越えることが少なくありません。そのため、日米の20代、30代の給与レンジを比較すると、アメリカの給与の方が総じて高くなります。それは先に挙げた実力本位の部分と、またいつ無職になるかわからないリスク分が加味されたものなのです。シリコンバレーでは、高い給料の一部を貯金にまわして、いざというとき(キャリア・チェンジ、学校に戻る、スタートアップを立ち上げるなど)の蓄えとしてセーブしておきます。特にスタートアップをゼロから始める場合、成功するかどうかは未知数で、最初の1年程度はそれこそ無収入を覚悟ではじめるため、そういった蓄えがあることで、チャレンジしやすくなっているのです。

 また、年金制度は401Kで個人の采配にまかされ、ご存知の通り税金も毎年自分で申告しないといけないので、自ずと収入・出費に敏感にならざるを得ません。そういう背景があるので、給与収入の他に株式投資などでリスクを取りながら資産形成を目指す人も多いです。とは言うものの、一方で貯金する習慣がない一定層がいるのがアメリカですが。

その3 キャリアのメンテナンス

 アメリカだと、基本毎年決まった時期に企業がまとまった数の新入社員を採用する、といったことはまずないので、学生の就職活動は各自手探りで自分の道を追い求めることになります。典型的なパスとしては、自分の専門分野で一定上の成績をキープしつつ、周りのつてをたどってインターンシップのポジションを探して応募。このインターンシップが学生にとっての就職の糸口になることが多く、そこで得たコネクションを最大活用して就職活動に励みます。

 新卒の就職面接では、大学の専門分野がシビアに問われるので、それに沿った専門職を選ぶことが基本で、例えば自分の専攻分野以外のところで職を得たいとなると、それはかなりの裏ワザが必要となります。そして新卒で正社員として雇われてからも、何ヵ月もあるような研修が最初にあったりすることは稀で、最初から即戦力としてみなされ、新入社員は仕事をしながらOJTで自分で業務を身につけていく――とまあ、学生/新卒の場合で既にこのような試練(?)があります。

 そうやって新卒初就職の厳しい洗礼を無事サバイブしても、それ以降のキャリアを安泰に過ごす(過ごせる)わけではありません。そもそもキャリアアップを目指して数年毎に自ら動くのが一般的ですし、企業間の合併や特定事業部門の撤退など、様々な形で変化が絶え間なく起こっているのでそれが個別の雇用状況にもダイレクトに影響します。マクロでみればこのダイナミズムがアメリカ社会に活力を注入し続けている要因と言えますが、それはこういった日頃の、時に犠牲を伴う微調整があった上で成り立っています。

 特にアメリカのIT業界は変化の流れが早く、受動的に過ごしているとあっという間に置いてきぼりになってしまいます。なので、常時新しい技術のトレンドをウォッチしながら自分のスキルを定期的に棚卸しして、いらなくなったものは潔く捨てて、新しく必要とされるスキル・知識を習得し続けることが必要になります。そして、業界の潮目が変わるような大きな変化があった時には、その流れに潔く飛び込むことも。

ちなみに上記で述べたことは、これまでアメリカで見受けられた一般的な企業文化ですが、それが今まさに、スタートアップの増加に加え、ITの力によってフリーランスなど多様な働き方で構成されるギグエコノミーへと大きく変わろうとしています。それは以前のブログ(https://www.teamspirit.co.jp/catalyst/column/silicon-valley/kpcb-it.html)で触れた通りです。



 冒頭の通り、アメリカ社会でのキャリア形成は百人百様なので、やりがいもありますが、個々人がそれぞれ常に試行錯誤しながら進めていかなければいけない「しんどさ」を伴う社会とも言えます。しかしながらそのような自己責任の大きさによるしんどさは、主体的に人生を進める上では必ず伴うもので、それがあるからこそ自己実現が達成した時の喜び・充実感が大きいのだと思います。今後日本も益々働き方が多様化し、各自がそれぞれのキャリアを形成していくことが増えるでしょう。それにあたって、健康・ファイナンス・キャリアの定期メンテナンスを心がけられることをお勧めします。

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