2015.07.06

真のダイバーシティ実現をめざすシリコンバレー

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シリコンバレーを代表する女性エグゼクティブのひとり、Intelのデータセンター部門を統括するダイアン・ブライアントSVPはカンファレンスにもよく登壇する。堅いイメージの強いITの世界をしなやかに生きてきた女性の先駆者的な存在。2014年6月にサンフランシスコで行われた「Gigaom Structure 2014」にて筆者撮影

 米国のIT系カンファレンスは、日本にくらべてはるかに女性の登壇者や参加者が多い。筆者が取材する機会の多いエンタープライズIT系のイベントも同様で、たとえばこの6月にサンノゼで行われた「Hadoop Summit 2015」にもさまざまな人種の女性たちを数多く見かけた。

 さらに最近のこの手のカンファレンスでは「Code for Women」「Talk with Excective Women」といった参加者を女性に限定したラウンドテーブルやBOFが用意されており、Hadoop Summitでも「Women in Hadoop」という女性限定のBOFが行われ、アグレッシブな議論が展開されていた。男性に追いつけ追い越せという内容でもなければ、初心者にフォーカスした内容でもなく(日本で開催される女性向けのITセッションは子供向け/初心者向けと見紛うものが非常に多い)、むしろ女性ならではのユニークな視点や女性だからこその優位性を際立たせることに力点を置いているのが特徴だ。

 意外に感じる向きも多いかもしれないが、シリコンバレーという土地は男尊女卑の空気がかなり強く残っている。もちろん日本のようにあからさまなかたちで表面化することはないが、24時間365日働くことを当然のように受け入れているワーカホリックな男性にとって、自分たちと同じ価値観をもっていない人々、とくに女性と同じチームで仕事をすることは心理的に大きな負担となりうる。

 大きな成功をめざして日夜開発に勤しむスタートアップなどはとくにその傾向が顕著だ。2年前、西海岸のある技術系イベントに参加したとき、筆者の隣に座った若い男性は「セッション中に女性の登壇者が髪の毛をかきあげたりするのを見るとイライラする」とはっきりと口にしていた。昨年、急成長中のスタートアップであるGitHubで女性プログラマに対するハラスメント行為が判明し、かなりの騒動(女性プログラマは退社し、共同創業者のひとりが辞任)になったが、この事件はシリコンバレーのそうした男性優位社会の空気を強く象徴している。普通の女性がITの世界で普通に働くということは、たとえ米国であってもそれほど簡単ではないのだ。だからこそ、女性の参加を促すためのセッションやBOFが女性たち自身の手で頻繁に開催されているともいえる。

 話はすこし変わるが、そうした状況の一方でシリコンバレーには多くの女性エグゼクティブが活躍している。Yahoo!のマリッサ・メイヤー、Facebookのシェリル・サンドバーグ、Appleのアンジェラ・アーレンツなど、女性から見ても魅力的な彼女たちがIT業界の最前線で仕事をしている姿は、同じ業界で働く女性たちにとって力強い存在だ。

 彼女たちはひと昔前の女性エグゼクティブ――IBMの現CEOであるジニー・ロメッティやHPの前CEOで米大統領候補選にも出馬宣言したカーリー・フィオリーナ、Xeroxの元CEOのアン・マルケイヒーのような、"特別に強い女性"とはかなりイメージが異なる。男性並みの知力/体力と強い上昇志向で激しい競争社会を生き抜き、世界でも指折りのエグゼクティブとなった旧世代の女性たちに比べ、マリッサ・メイヤーやシェリル・サンドバーグはどこまでも女性らしい雰囲気を失わない。男性と同じように仕事をして地位を得るのではなく、女性ならではの人生の選択にきちんと向き合いながら、着実にIT業界の人間としてのキャリアを積んでいる。

 そうやって彼女たちが切り拓いた道、ITを女性にとって特別な業界にしないための努力は間違いなく後進の女性たちに影響を与えている。男性から「髪をかきあげないでくれ」と文句を言われても、女性が「これが私のスタイルだから」と言い返せる時代がいままさに醸成されつつあるのを、西海岸に取材に行くたびに強く感じる。メリッサやシェリルのような女性たちの活躍によるトップダウンと、女性向けの勉強会やセッションを現場の女性たちがみずから積極的に推進するボトムアップ、その両輪が共に前に向かって回転することで、シリコンバレーは本当の意味で誰にとっても働きやすい土地、真のダイバーシティ(多様性)を実現する場所へと進化していくに違いない。

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