2015.05.18

会議は変わる
テクノロジーがもたらした原点回帰

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外出先から電話会議に参加する。米国ではさほど珍しくない光景だ

 もうずいぶん前になるが、現Yahoo!のCEOを務めるマリッサ・メイヤーがまだGoogleに籍を置いていたころ、来日会見でこう語っていたことがある。

 「渋谷の街は本当に静かだった。みんな電話をもっているのに、誰も大声で話さない。この静かな街には、そこに適した検索システムが必要だと思う」

 まだスマートフォンが世界を席巻する前の話だが、いまでも日本ではパブリックスペースで大きな声で通話することはマナー違反だとされている。以前はよく耳にした"着メロ"はめったに聞かなくなり、呼び出しはバイブレーションのみという人がほとんどだろう。電車の中で電話がかかってきたら、申し訳なさそうに「あとでかけ直します」とすぐに切る光景はもう何年も変わっていない。

 一方、米国の大都市、たとえばサンフランシスコやニューヨークなどのダウンタウンを歩いていると、ヘッドセットを付け、ハンズフリーで通話をしながら歩いている人々が日本に比べてはるかに多いことに気づく。声の大きさも周囲に配慮して......などという奥ゆかしい感じはいっさいなく、日常の会話とまったく同じレベル。よほどの大声でない限り、周囲の人々もほとんどその内容を気に留めない。呼び出し音もにぎやかだ。

 そして、こうした足早に歩きながら話す人々の中には、実は電話会議に参加しているというケースもままある。いまやスマートフォンさえあれば、少なくとも音声によるリアルタイムの会話と資料の閲覧は十分に可能だ。会議に必要なのは"顔"ではなく"声"であり、重要なのは"同じ場所に集う"ことではなく"何かを決める"こと、ならば歩きスマホの会議も十分に可能だといえる。

 スマホで歩きながら、とまではいかなくとも、カフェや電車、あるいは空港の出発ゲート付近で、ノートPCを広げてSkypeやチャットツールで打ち合わせをしている人はそこかしこにいる。会議室に関係者全員が顔を揃えてからでなければ会議が始まらない、というのは、少なくとも米国では過去の話になりつつあるのだろう。これはニューヨーク在住の友人から聞いた話だが、最近ではクルマを運転しながら会議に参加する従業員も増えているという。「PRのスタッフと会議をするのはたいてい夕方5時くらい。この業界のスタッフには女性が非常に多いが、彼女たちは夕方になると子供を迎えに行く。自宅に帰ると家事や子育てに時間を使わなければならない彼女たちのために、クルマでの移動時間帯に打ち合わせをセッティングすることにしている」。時間の効率とワークライフバランスを重視する米国ならさもありなん、という気がする。

 ひと昔前、電話会議システムというのは限られたエグゼクティブのためのものだった。何千万円もする特別な機材と専用回線を用意しなければ実現しなかった。そのため、ベンダが期待するほど普及することはなかった。コストがかかりすぎたのだ。

 だがインターネットとデバイス、そしてソフトウェアの進化は会議のあり方を大きく変えた。とくに回線の高速化とスマホの普及、そしてSkypeの登場は会議のダウンサイジングをもたらしたといっていい。とにかくネットワークにつながることさえできれば、誰もがどこからでもリアルタイムに参加できるようになったのである。いまや会議に必要なのは会議室ではないのだ。その会議は何を決めるために行うのか。テクノロジーの進化は会議の原点に立ち返らせたと言えるのかもしれない。日本企業は無駄な会議が多いとよく言われるが、たまには会議室に集まらない会議を開催してみてはいかがだろうか。何が必要で何が無駄なのか、見えてくるものはきっと多いはずだ。

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