2015.06.26

"KPCB インターネット・トレンドレポート"から読み解く「アメリカの就労スタイルの変化」
前編:インターネットがもたらしたアメリカ社会の変容

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 毎年恒例、米ベンチャーキャピタル「KPCB 」に在籍するMary Meekerによる "Internet Trends" レポートが、今年も5月に発表されました。既にご覧いただいた方も多いかと思いますが、今年のレポートでは、トピックの一つとして「インターネットがもたらした就労スタイルの変化」を挙げており、かなりのページを割いて検証しています。

 今回から2回にわたって、私が実際にシリコンバレーで体験している事例を織り交ぜながら、その内容について見ていきたいと思います。1回目の今回は、まずインターネットがもたらしたアメリカ社会の変容についてざっと見ていきます(以下の図は全て"Internet Trends 2015"レポートから引用)。


 「インターネットは多大な影響を広範囲にわたって与え続けているが、まだそれは序章に過ぎない」

 まずは概況から。業界毎にどの程度インターネットがアメリカ社会で浸透しているかという図です。ご覧の通り、B2Cでは業界が完全にデジタルに塗り替えられており、B2Bはかなりインターネットが浸透したところ。教育、ヘルスケア、政府関連などはまだ伸びしろが多く、これらの分野が今後大きくインターネットによって変わっていくとみなされます。

 シリコンバレーに住んでいる実感からすると、数年前に教育関連のスタートアップがEdu-Techとして一気に勃興し、Khan Academy、 Courcera(教育系のオンラインサービス)などをはじめとしてずいぶん変革がすすんでいます。一方IoTと絡んで盛り上がっているヘルスケア(Health-Tech) 、金融関連(Fin-Tech)などの規制の多い業界に関しては、まさにこれから大きく変化が起こっていく分野かと思います。

「Re-Imagining Continues - さまざまな事象の再定義」

この章では、私たちを取り巻く環境が、インターネットによってますます変化してきているということを60ページを割いて検証しています。

1)エンタープライズ・コンピューティング

  企業が抱えている課題=ペインポイントを解決すべく、さまざまなソリューションが分野毎に生まれてきています。改革が起きている分野及び主だったプレーヤーは以下の通り。

*ビジネスコミュニケーション(Slack)
*オフライン決済 (Square)
*オンライン決済(Stripe)
*ビジネス分析(Domo)
*文書トランザクション管理(DocuSign)
*カスタマー・コミュニケーション(Intercom)
*カスタマー・サクセス (Gainsight)
*カスタマー・サービス(Directly)
*人事管理(Zenefits)
*戦略プラニング(Anaplan)
*人材採用(Greenhouse)
*バックグラウンド・チェック(Checkr)
*社員教育(GuideSpark)
*オフィス受付管理(Envoy)

 レポートはここで Box の CEO、 Aaron Levie の、非常に興味深いツイートを紹介しています。

 「エンタープライズソフトウェアは、これまでは既存の作業を効率化するものだったが、今や仕事の在り方そのものを変えうるものとなった」

 アメリカで働いていると本当に実感することなんですが、こちらは中小企業でも大企業でも、日々のコスト削減や生産性向上を促進するツールをどん欲に会社に取り入れる文化がもともとあります。最近は更に上記のような新しいB2Bのソリューションどんどん生まれてきており、特に「クラウドコンピューティングによって仕事のプロセスが劇的に変わる」→「仕事で必要とされるスキルセットが変わりつつある(よりクリエイティビティが重要視されてきている)」→「チームのフォーメーションがかわる」→「仕事の定義・ゴール設定そのものが変わる」といったサイクルが見受けられます。

2)メッセージング

 Snapchat、 Line、 We ChatなどチャットツールやFacebook Messengerなどはスピーディに世界展開しています。決済システムやPR/マーケティング、e-コマースなどの機能も日増しに増えており、その結果、これらのツールがコミュニケーションのハブになりつつあります。

3)コンテンツ

 ユーザージェネレーテッド/キュレーテッドコンテンツの増加
(Pinterest、Snapchat、Facebook、twitch、SoundCloud、Wattpad、Airbnb、Twitter、Dataminr)

4) インターネット活用そのもの

 12~24歳のジェネレーションが引き続きトレンドを牽引

*視覚に訴えることが重要(Instagram, Snapchat, Pinterest)
*ミレニアル世代(15 ~ 35才)はスマホを片時も離さない

 このグラフにあるとおり、アメリカの若者の間ではFacebookが一番多く使われていますが、一番大切なソーシャルネットワークはInstagram、Twitterという順になっており、SnapchatもFacebookに肉薄しています。

5)欲しいものを今すぐに

*エンドユーザーはさまざまな分野で情報をほぼリアルタイムで入手/活用できるようになった
*オンデマンド・フルフィルメント

 移動、レストラン予約、エンターテインメント、グロッサリー、食事の出前、物品配送、トラベルの分野では、オンデマンド=要求に応じてサービスの提供を行う形態が増えてきています。

6)エンドユーザーの購買動向

 以下がアメリカにおけるトップ3の消費項目であり、インターネットによってこれらにおける購買・活用動向が今後ますます変化していくと見なされています。

1.住宅関連 2.移動 3.食関連

7)ドローン

 ドローンの適用分野は農業、鉱業、生活インフラの点検、災害対策など多岐にわたっており、ビジネスの機会は非常に大きいものの、それが離陸するには規制緩和が鍵となるでしょう。

 インターネット及びモバイルツールの進化によって一年中いつでもどこでも繋がっていること=高いコネクティビティが、人々の意識及び行動パターンに多く影響していることは間違いないでしょう。私自身、LyftやUber、Yelpなどは既に生活に密着したものとなっており、これらがなかった以前の生活が考えられないほどです。

 一方でこれらのサービスは既得権層と軋轢を生むこともよくあり(Uberは言うまでもなく、最近の例で言うと、スモールビジネス向けの人事サービスを提供しているZenefitsが大手給与処理サービス・ベンダーのADPから訴訟される騒ぎとなっています)、全く新しいビジネスモデルの場合、法規制が後手に回るケースが多いです。民間と行政が連動しながらイノベーションを推進していくことが求められます。

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