2015.07.13

"KPCBインターネット・トレンドレポート"から読み解く「アメリカの就労スタイルの変化」
後編:ITが仕事そのものの在り方を変えていく

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 2回にわたってお送りする「 "KPCBインターネット・トレンドレポート"から読み解く『アメリカの就労スタイルの変化』」。前回はインターネットによって変貌をとげつつあるアメリカ社会についてふれましたが、今回は労働市場にフォーカスを当てていきたいと思います。


急激に変容しつつあるアメリカの労働環境

 インタネット・トレンドレポートのこの章では、グローバリゼーション・構造的変化・モバイルのコネクティビティによって、アメリカで人々の働き方が大きく変わってきていることにふれています。順にみていきましょう。

アメリカ労働環境に押し寄せている様々な変化

1)仕事そのものの変化

 仕事そののもの在り方が、グローバリゼーション、構造的変化の外的変化要因で大きく変わってきています。主なポイントは以下の通り。

*製造関連の仕事が減ってきている一方、サービス業の雇用が増えている
*高度なスキルが要求される職、ナレッジベースの職の需要が高まっている

2)労働者側の変化

*より多くの人口が都市部に流入(アメリカ全国民の80%が都市部に居住)
*移民の増加(アメリカ全国民の13%が移民)
*ミレ二アル世代(15-35歳)が2015年度において一番大きなシェア(35%)を占める労働力となる
*ミレニアル世代の特徴

  • テクノロジーを駆使
  • 34%がオンラインで作業することを好む
  • 45%が個人のスマートフォンを業務に活用
  • オンデマンド・ワーカーの主な担い手(需要に柔軟に対応して働く)現在2千7百万人で前年度比2倍の伸び

*フレキシブルな労働時間

  • 家やオフィス、カフェなどをフレキシブルに活用して柔軟に働くことを希望する労働者が増えている
  • 20%前後が夜の時間帯に働いている
  • 38%がフリーランスであり、このうち32%が35才以上
  • 32%が今後フレキシブルな労働時間で働くであろうと予測している

3)コネクティビティの変化

 この20年で起きた劇的な変化は、モバイルデバイスによって人々が24時間365日つながったことにある

4)ビジネス形態の変化

*オンラインでのリテール、マーケットプレースの増加
*サービスのオンラインプラットフォームの増加
*エンドユーザーは、より早く簡単に欲しいものを手に入れたい → フレキシブルワーカーの需要の増加

"Internet Trends 2015"レポートから引用

フリーランスの増加

 特に、上記であげたコネクティビティとビジネス形態の変化が、アメリカにおける人々の消費活動、及び労働スタイルを変えつつあります。特に増加しているのがフリーランスで、このレポートでは、5300万人=およそアメリカの総労働人口の34%をフリーランスが占めるとしています。その形態は様々で、コントラクター、臨時労働、本業の他の副業など。フルタイムのフリーランスとしてやるにしろ、副業で稼ぐにしろ、ソーシャルネットワークや仕事関連のオンラインプラットフォームによって、仕事を見つける・仕事をこなすことが格段に効率的にこなせるようになったことが増加の要因としてあげられます。実際の数値は把握することは不可能ですが、UberやEtsy、 Upworkなどに登録してすきま時間に副収入を得ている人は相当増えているはずです。

イノベーションと法規制

 最近のニュースですが、カリフォルニア州の労働委員会が、Uberの運転手は従業員とみなすべきとの判断を下しました。従業員にすればUberは保険や経費を負担する義務が発生する訳ですが、そもそもUberの運転手は上記でいったように隙間時間を使って小遣い稼ぎをするような層が多く、フルタイムで働いている方が圧倒的に少ないのが現状であり、そこをどう折り合いを付けるのかは非常に難しい。Uberをはじめとしたオンデマンド業界では、この"従業員か自営業者か"として扱うことはグレーゾーンとなっており、今後様々な試行錯誤を経てルールが定まってくるのでしょう。

 他にもAirBnBなどのように、これまでにない全く新しいビジネスモデルが急速に社会に広まると、法規制が追いつかないケースがあります(Googleの自動運転車などもしかり)。これはある意味シリコンバレーの真骨頂で「まずやってみる・それから考える」という典型です。イノベーションを興すにはそういった軋轢が発生するのはやむを得ないといった共通認識がここではありますが、より成熟した"コネクッテッド社会"の実現には、①ユーザー(人)、②システム、③規制の3点が各々進化していく必要があります。

*****

 グローバリゼーション、構造的変化はアメリカで大きな影響をもたらしています。私が住んでいるシリコンバレーはもともと移民が多く住む場所ですが、インターネットによって益々オペレーションのグローバル化が進んでいます。多くのタスクがオンラインで処理されるようになると、必ずしもチームメンバーが同じ場所にいる必要はなくなります。私が以前働いていたソフトウェアの会社では、データ分析をする人材がシリコンバレーで見当たらず、最終的に見つけたのは、タイ在住のローカルの女性コントラクターでした。そのチームは、彼女と一度も直接会わずビデオ会議で面接して採用し、その後の作業もインスタントメッセージ、テレコンファレンス、Wikiなどを有効活用して距離・時間の壁を難なく乗り越えて、同じチームとしてうまくプロジェクトを回していました。

 また、求められる職種も大きく変化してきており、エンジニア系や高度なスキルレベルが要求される仕事は慢性的に人手不足な一方、ルーチンワークが業務の大部分を占める職種はほとんど外部委託されてしまっているのが現状です。

 さらにデジタル・ネイティブのミレニアル世代がこれから労働人口の大多数を占めるようになると、前述したようなB2Bソリューションが益々広がっていき、より一層の効率化が図られていくでしょう。インターネットによって一層フレキシブルに働くことが可能になりましたし、一定の枠にとらわれない働き方がより選択されつつあります。日本でも増えているとは思いますが、このあたりでカフェに行くと、学生以上に、社会人がコーヒーを飲みながら仕事をしている(ミーティングをしているか、PCで作業しているか)光景が当たり前になっています。

 社会の変化がこれだけ激しくなると、そもそも同じ業務・ポジションが何年何十年と存続することは極めて難しいと考えるのは妥当であり(当たり前だと思われるかもしれませんが、日本の方でたまにお見かけします。そんな方に是非手に取っていただきたいのがビジネス書の古典『チーズはどこへ消えた?』です)、会社も、求められるスキルも、雇用形態も時代に沿って変わっていきます。変化を危機と捉えるのではなく、柔軟に対応していく姿勢が益々もとめられていくでしょう。そしてその時の力強い支えになるのがITツールであることは間違いありません。

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