2015.05.19

官製ベンチャー輸出!あなたならどうする?

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 はじめまして。今後カタリストに寄稿することになった大木です。シリコンバレー在住13年。現在は独立し、日本、アジア、シリコンバレーをつないでの新規ビジネスの立案、立ち上げなどを主に展開しています。チームスピリットのアメリカでのビジネス開発も鋭意展開中です。カタリストでは、主にシリコンバレーで今何が起こっているか、日本のメディアでは取り上げられないようなアメリカ社会のトピックなどを現場の目線から随時紹介していきますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。


 さて第一回目のトピックですが、先日の安倍総理の訪米に関してです。米議会上下両院合同会議で行った英語のスピーチがいろいろ話題になりましたが、私は素晴らしい出来だったと思います。多少オーバーアクション気味でしたがそこはご愛嬌で、あれだけの数の議員の前で堂々と且つ明瞭に話していて、とても好感が持てました。アメリカ社会のプロトコルになじんだ、違和感の少ないパフォーマンスだったのではないでしょうか。

出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201504/29usa.html

 そして、現職の総理としては初めてシリコンバレーを今回訪問し、Facebook、テスラモーターズなどとのミーティングや、シリコンバレーで活動している日本人起業家との朝食会など盛りだくさんのスケジュールをこなしたのは、日本でも大きく報道されたかと思います。

 これは、シリコンバレー在住の日本人にとって(おそらく全米の日本人にとっても)、非常に勇気づけられる出来事でした。アメリカにおいては、日本文化を高く評価する層は一定数あるものの、ことビジネスの世界となると、日本の存在感が薄いのが現状です。特にIT業界ではその傾向が強く、ソフトウェアやネットサービスなどのイノベーティブなものは依然アメリカ企業が圧倒的で、そこに世界中からツワモノが参戦している状況。さらに最近ではアリババをはじめとする中国企業がものすごい勢いで伸びています。

 多民族国家のアメリカでは、自分の存在を示す、自分の考えをうまく言い表す(= articulate)能力が非常に重要で、その意味でも今回の総理のスピーチ、シリコンバレー訪問は、日本のプレゼンスを示す上で大きな意義がありました。

 さて、シリコンバレーの訪問において、総理はスタンフォード大学のシンポジウムで講演、シリコンバレーの起業文化を日本にもたらすことを目的として、「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」を発表しました。このプロジェクトでは、① 向こう5年間で200社の中小企業をシリコンバレーに送り込み研鑽してもらう、② 起業家、ベンチャー投資家、大企業内で新規事業に挑戦する社員など、個人ベースで100人募集して選抜された30人をシリコンバレーに送り込み同じく研鑽してもらう、③ 日米で大企業、中小企業、ベンチャー企業間での交流の場を積極的に増やして新規ビジネス醸成の機会を増やす、という3つの支援策が柱になっているようです。

 私自身、日本の大企業やスタートアップのアメリカ進出を様々な面でサポートしてきたので分かるのですが、海外で挑戦してみたい、でもどうしたらいいか分からない、という企業/個人はたくさんいます。そうした方々に対しては、このプログラムが海外進出のいいきっかけになるはずです。実際に行ってみないと分からないことはたくさんあるからです。そして実際に体験したことで次のステップが見えてきます。

 ただし、考慮しなければならないポイントも少なからずあります。均一社会の日本と、多民族国家のアメリカは、多様性という面で真逆の社会です(特にシリコンバレーの多様性はアメリカ国内でも抜きん出て高い)。そうすると、社会のプロトコルやプロセスが大きく違っていて、前述した通り自分/自分の意見を積極的に押し出すことにある程度慣れていないと、最初はその違いに圧倒されてなかなかアメリカ社会に入りこめない恐れがあります。特にシリコンバレーは牧歌的なのんびりした風景とは裏腹に、文字通り会社の生存をかけた競争が繰り広げられているところで、そのスピード感は半端ではなく、そのビジネスを追求する熾烈な様は、最近話題のベン・ホロウィッツ著「HARD THINGS」にある通りです。

 繰り返しになりますが、そういった全くの異文化のなかに身を置くこと自体、貴重な体験になることは間違いありません。

 ですが、国家予算を使って目玉プロジェクトとしてやる以上、「シリコンバレーで貴重な体験ができました」だけではなく、それなりの投資対効果=成果を期待していると思います。「政府が用意してくれたプログラムにちょっと参加してみる=そのこと自体が目的」というような受動的な姿勢ではなく、「このプログラムを踏み台として世界進出を加速させる」ぐらいの意気込みが必要かと。そのためには、ある程度の英語力(前述した安倍総理のスピーチの件の通り、必ずしもきれいなアクセントなどが必要な訳ではありません)、アメリカの商習慣の最低限の知識などを事前に身につけておく必要があります。

 そこで、グローバル展開する上でのスターティングポイントに立つ訳です。日本は良くも悪くも現時点では世界の競争から外れており、そこから競争社会に入ってやっていくとすると、最初の負荷は確かに大きいですし、失敗することもないとは言えません。しかし決して超えられない壁ではないはずですし、そこを乗り越えることでそれまでとは比べ物にならないオポチュニティがみえてくるはずです。そしてそのオポチュニティ(機会、チャンス)をものにするには、リスクを恐れず挑戦すること、且つ周到に準備・努力することの両方が必要です。より多くの企業・個人がこのプログラムを能動的に有効活用し、国際競争力を高めていくことを願っています。


編集部注:経済産業省では、米国シリコンバレー派遣プログラムへ参加する、起業家及び大企業等の社内起業家の公募を、5月1日から開始しました。(リンク:http://sido2015.com/#toppage

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