2016.05.30

【カタリスト】リアルイベントレポート:海外企業と日本企業のIT活用の巧拙とは?

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2015年3月に創刊した「カタリスト」。「人を変え、企業を変え、世界を変えるメディア」として、変化に挑戦している方々へのインタビュー記事や変化の潮流をいち早くキャッチする各種コラム記事を掲載しています。5月24日に開催された初のリアルイベントでは、その執筆陣が一堂に会し「グローバル企業のIT活用は日本企業と何が違うのか」というテーマで語りました。

最初に、なぜこのテーマでのイベントを企画したのか、その背景をお話します。

それは、20年以上も続く日本経済全体のなんとも言えない停滞感と、相変わらず変化に関わらないようにする日本企業への問題提起です。

もはや"ノスタルジア"でしかないものづくり信仰、"自己満足・自画自賛"でしかないおもてなし、"再現性のない武勇伝"としか思えない成功体験といったものにしがみつき、耐えていればそのうち良くなるからと現状維持を続けているように見えるこの状況に、少しでも問題提起をして取り組むべき方向性の端緒でも発信できないか、と考えた次第です。あまり大上段に構えても発散しますので、IT活用という切り口でテーマ設定をしました。

自社セミナールームで開催するイベントですので、それほど多くの方にご参加いただくことはできませんでしたが、こうして当日のディスカッションを発信できるというのは素晴らしく恵まれた環境であると感謝しています。 少々長い投稿ですが、ぜひご一読ください。

登壇者:

五味 明子

五味 明子氏

IT系出版社の編集者を経た後、2011年からフリーランスライターに。フィールドワークはクラウドコンピューティング、データアナリティクス、セキュリティ、オープンソースなどエンタープライズITが中心。海外カンファレンスの取材が多く、1年の半分近くを海外出張先で過ごす。北海道札幌市出身 / 東京都立大学経済学部卒。Twitter(@g3akk)にてエンタープライズITの情報を日々発信中。

細谷 功

細谷 功氏

ビジネスコンサルタント  1964年神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ等の米仏日系コンサルティング会社にてコンサルティングに従事。専門領域は、製品開発や営業等の戦略策定や業務/IT改革等。最近は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で多数実施。著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『会社の老化は止められない――未来を開くための組織不可逆論』(亜紀書房)等。

大木 美代子氏

大木 美代子氏

日本IBMソフトウェア事業部でグローバル・マーケティング・プログラムの日本部門を担当。その後サンフランシスコGolden Gate Universityにて修士号 (e-commerce)を取得。以降、シリコンバレーの様々なIT関連企業で事業開発を歴任し2013年に独立、コンサルティング会社Serendの代表として活躍中。チームスピリットのグローバル事業展開も担当。サンフランシスコ近郊在住。

大澤 香織氏

新卒でSAPジャパン株式会社に入社し、コンサルタントとして大手企業における導入プロジェクトに携わる。その後、転職サイト「Green」を運営する株式会社I&Gパートナーズ(現・株式会社アトラエ)に入社。ライターとして100社以上の企業への取材・執筆を行った後、フリーランスとして独立。現在、IT・Web系企業を中心にコンテンツの編集、取材・執筆を行っている。

モデレータ

大谷 晃司氏

日経BP社コンピュータ・ネットワーク局教育事業部部長。富士総合研究所(現・みずほ情報総研)を経て、日経BPに入社。日経コミュニケーションの記者・副編集長、日経NETWORK、ITpro、日経コンピュータの副編集長を経て、現職。

視点1:ITそのものの選び方・使い方

口火を切ったのは大木氏。「人材の流動性が高い海外では、IT担当者の流動性も高い。したがって、カスタマイズやアドオンはほとんど行わず、サブスクリプションサービスをそのまま、スピード感を持って使う」。会社や組織の買収や分離、売却も盛んな海外では、使いはじめるまでの時間を極力短くし、いかに手間をかけずに使いはじめるかを優先している、とのこと。

大澤氏は、自身がSAPのコンサルタントだった経験を語ります。「SAPはグローバルでのベストプラクティスのはずだが、日本ではアドオン開発を行うプロジェクトが非常に多い。自分が導入支援した企業も、ほぼすべてアドオン開発を行っていた」。

続いてビジネス・コンサルタントである細谷氏は、「多くの場合カスタマイズをすることでスピード感が変わってくる。導入スピードが遅くなるだけではなく、結局、カスタマイズによりオペレーションがバラバラになり、コード体系も独自の体系が保持されてしまい、結果として個別最適に陥る。その影響として、例えば連結決算に非常に時間がかかったりする」とコメント。これを受けて海外のITベンダーのビジネスを多く取材する五味氏は、「日本企業は四半期等の決算が遅い。予定よりも遅れる場合もある。こだわったオペレーションが差別化になったという話は聞いたことがない。ライブドアは、当時ノンカスタマイズで最安値でSAPを導入した。素晴らしい事例だと思う」と発言していました。

確かに、私自身の過去のコンサルタント経験でも、ERPのカスタマイズは「過去に例のない斬新なオペレーションがERPパッケージに具備されていないからカスタマイズする」というケースはなく、現状のオペレーションを維持する、もしくは現場での変化を最小化するために行われてきたケースだけでした。パネリストの意見を聞き、現状維持のオペレーションを守る為に追加のコストを払うという価値観は日本特有なのだという認識を改めて持ちました。

ここで守るITと攻めるITというキーワードがモデレーターの大谷氏から提示されました。「日本企業のIT人材は、ITを使って攻めるという考え方ではなく、ITを守る意識が強すぎるのではないか」という問いかけです。

再度、大木氏が口火を切ります。「(米国では)経費をおさえて、レベニューを上げることにフォーカスするのは当たり前。効率性と合理性を重視する。安くて便利な新しいサービスが出てくれば、すぐにスイッチしてしまう。サービス提供者も、導入してくれたからと安穏とはしていられない。サービスを磨き続けなければ、乗り換えられてしまう、という緊張感をもっている」。

オンプレミスで導入したパッケージソフトではなく、完全にサブスクリプションサービスでビジネスオペレーションが回っているという海外の現状を踏まえた発言です。海外企業は常に攻めているのですよ、というメッセージと理解しました。日本ではまだまだクラウドストレージやメールサービスなど、コンシューマー向けサービスの印象が強いクラウドサービスですが、海外ではビジネス向けサービスもクラウドサービスが当たり前、ということだと思います。

ここで細谷氏からは、クラウドサービスについて、使い始めのスピード感だけではない効果についてコメントが出てきます。「パブリッククラウドは、全員が同じサービスを使うことで、オペレーションも同じにすることができる。オペレーション統一のツールとしても有効。しかしながら、プライベートクラウドなどで個別最適の仕組みを作ってしまうと、結局、非効率なバラバラなオペレーションが維持されてしまう。20年前のERP導入機運も、ベストプラクティスによるオペレーション統一のチャンスだったが、日本企業では、必要以上に現状にこだわってしまい、カスタマイズやアドオンが増えてしまった。クラウドでは、同じ轍を踏まないように意識するべき」。

確かに、当時のERPもオペレーションの統一という効果が期待されていました。しかし、国別のインスタンスが乱立したり、カスタマイズされたりして、コード体系の統一やオペレーションの統一が後回しになって、再統合に多大なコストが必要になったり、バラバラERPのまま塩漬けで使い続けることを余儀なくされたり、なかなか思い通りにできていないケースも良く見かけます。

一方の現場では、自分の仕事の特殊性をアピールして現状を維持することに熱心で、なんとかしてシンプルにしていこう、標準化しよう、といった方向に考えが至らない人が少なからずいます。現状を維持すること以外に目を向けさせる方法はないのでしょうか? ここで、大澤氏からある企業を取材した際の興味深い話が共有されます。

「先日、リミニストリートという企業を取材した。SAPやORACLEのERP製品の保守をアドオン含めて半額で請け負います、という新しいサービスだ。『企業のIT人材とIT予算を現状維持作業から開放したい』という問題意識から始めたサービスだと聞いた。ERPパッケージの保守費用として毎年高額な費用負担を強いられている企業が、大きな関心を寄せている。今後、大幅な機能強化が見込めず、すでにベンダー自身はクラウドファーストに舵を切っているERPパッケージのお守りのために、貴重なIT人材やIT予算も疲弊しないために、できることから取り組んでいくべきだと思う」。

細谷氏からも、まるでERPパッケージベンダーに人質をとられているようだ、とのシニカルなコメントがありましたが、まさにその通りであると思います。「保守費用をお支払いいただかないとバージョンアップできなくなりますよ」という"人質モデル"は、毎年のように新機能がぞくぞくと搭載されていく時代には納得感のあるモデルだったかもしれません。しかし、ERPパッケージも熟成されて充分多機能になり、法制度対応等の改修以外に目立った機能強化が見られなくなった昨今、高額な保守費用を払い続ける妥当性が低下している感は否めません。

一方で、質実剛健なERPがコアとなるような守りのシステムである基幹システムとは異なり、スピード感を持って進化させるべき攻めのシステム、すなわちフロントエンドシステムの重要性が高まっているという感覚は、おそらく皆さんお持ちでしょう。まさにバイモーダルなITです。

この話題については、以前の五味氏のコラムでも言及があったように、リーン・スタートアップの考え方が企業システムにも求められています。ディズニーのような大企業でも、ローンチ&イテレートを繰り返し、"小さく開発→こまめに公開→素早く改善"を高速回転させていかないと変化についていけず生き残れない、という強烈な危機感が、新しいことに取り組むモチベーションになっています。

失敗がリスクと考える日本企業と、現状維持がリスクと考える海外企業は、根本的にスタンスが違うのだと考えます。

IT人材が足りないという声は、日本国内に限らず世界中で聞きますが、現状維持をリスクと捉え変化に挑戦するIT人材は、これまで以上に渇望されるでしょう。次に視点をITの選び方・使い方から、徐々にIT人材の育成に視点を移していきます。

視点2:ITを使う人材の育成

少し前に「正義の味方と悪の組織」を比較した記事が話題になりました。Webで検索すると、いろいろな比較表が見つかると思いますが、これまでのパネルディスカッションを聞きながら、現状維持に執着するIT人材は、もしかしたらこの比較表に載っている「正義の味方」の例えに似ていると思いました。

しかし、IT人材に関する議論の冒頭で細谷氏が話した例えの表現は、さらにイメージしやすくわかりやすいものです。

「守りのITから攻めのITへのシフトは価値観の転換が必要であり、それは文字通り、保守を中心とした"川下"から、ビジネス要件に近い"川上"へのシフトである。川下は、川の流れがゆっくりで流量も多く石の大きさは均等で丸い。川上は、水量は少ないものの流れが速く、岩は尖っていてさまざまな大きさである」

少数の尖った人材が、川上に相当する"攻めのIT"をリードしていく、そのような尖った人材は日本企業には多くない、といった趣旨の例えだと理解しました。

ここで海外のIT人材はどのような状況なのか、大谷氏から大木氏に水を向けます。

大木氏によると、海外もIT人材が足りない状況は同じ、ただ採用するために工夫を凝らしているとのこと。特に大木氏が拠点を置くシリコンバレーやサンフランシスコのベイエリアでは、英語で会話できれば良いということで、募集地域を広くとれるという点と、ジョブディスクリプション(職務記述書)を細かく定義することで、効率的に必要な人材を集めやすくしているということでした。

まずは具体的なジョブディスクリプションで、募集する側も応募する側も紙上でお互いを吟味し、面接となったら面接担当だけではなく、一緒に仕事をすることになるチーム全員を1日がかりで会って(Skypeインタビューもあり)、相性や考え方を理解し合うというプロセスを踏むようです。このような採用プロセスであれば、シリコンバレーの企業だからといって、サンフランシスコ周辺に応募者を限定する必要がありません。日本やインド、最近では東欧に住むエンジニアと英語レジュメを交換した後、Skypeで会話して採用決定に至るケースも増えているようです。

日本企業の採用も変わってきていますが、相変わらず募集内容が雑駁(ざっぱく)で、あわよくば周辺業務もいろいろやってもらおう、という邪(よこしま)な考えで採用している人事担当者もまだまだいます。

昨今は、インドや中国のエンジニアだけではなく、日本人も英語でのコミュニケーションができれば、どんどん海外に出ていきます。ただでさえ少ない貴重な日本人のエンジニアが海外の魅力的な企業で働きたいと考えるのも無理はないでしょう。

タイの大学で教鞭をとっている細谷氏も、日本国内だけでなく東南アジアのエンジニアにも目を向けるべき、とアドバイスしています。東南アジアのエンジニアは日本文化に興味があり、日本文化を学びたいと考える人が多いそうです。きっかけは日本のアニメだったりアイドルだったりするようですが、日本をリスペクトしている意欲的で優秀な人材を雇えるチャンスはすぐそこにあるわけです。

しかし、こういうところにも多様性を理解していない日本企業は、対応方法を間違えがちだと、五味氏は指摘します。

「多様性を尊重する、ということは、その人がそのままであることを尊重するということ。例えば、寝食を忘れて仕事をする、というノリを強要してもうまくいくはずがない。何を重視するか、価値観も多様であるということ。日本企業では、まだまだ40代以降の男性が中心となって意思決定することが多い。しかし、そのようなメンバーで多様なアイデアがでるとは考えにくい。実はシリコンバレーも少し前までそうだった。女性で活躍できるのは、男性並に猛烈に働く男女(おとこおんな)みたいなマッチョな人じゃないとダメ、という風潮があった。信じられないかもしれないが、ほんの数年前である。しかし、シェリル・サンドバーグのように柔らかくて綺麗な女性が活躍を始めた。女性のデータサイエンティストも注目されている。男女(おとこおんな)でないと務まらないという時代は、そろそろ終わりにしたい」

さらに五味氏は続けます。

「日本人のように、21:00や22:00までダラダラ酒を飲むという生活をしていない。飲み会も、ハッピーアワーといって夕方からサクッと飲んでサッと帰る。会議もわざわざ会議室に集まる必要がない。どこでも電話会議をしている」

すると大木氏からも働き方に関する発言が出ます。

「基本的にホワイトカラーはエグゼンプト(残業代支給対象外)なので、残業管理という考え方はない。たくさん残業してもだれも咎(とが)めないが、そもそも誰も長時間働きたがらない。米国では、親が子供を学校に迎えにいく。夕食を家族で食べて、その後仕事を再開するという働き方が一般的。デバイスの持ち出しやBYODが全面的に禁止されている、というIT活用を阻害するようなルールはあまり聞かない。こんなに長時間働いたのだから給料を上げて欲しい、といった話にもならない」

一方で、日本の労働基準法に詳しい大澤氏からは、このような指摘も出てきます。

「若い世代の価値観とシニアの世代のギャップもあり、会社のカルチャーは長い時間をかけて醸成されてきたものなので、一朝一夕に変わるということは難しい。加えて、日本の場合は、法律で残業代は払わないといけないことになっている。裁量労働だから残業代を支払わなくて良い、ということにはならない。仕事を早く片付けて帰宅する人よりも、だらだら残業している人の方が給料が多い。これは大企業だけではなく、ベンチャーでも、会社の規模に関係なく法律を守るためには労働時間を記録して、残業代を計算しなくてはならない。ベンチャー企業が、上場を目前にした審査で未払い残業代が発覚して大騒ぎになる、という例は少数ではない」

労働時間ではなくて成果で評価していこう、という流れは日本でも認知が広がりつつありますが、逆の捉え方をすると、成果が出るまで時間がかかるものもあるので、初めての取り組みについては、試行錯誤が欠かせないですね。そのためには、労働基準法に準拠するという目的だけでなく、成果を図るための労働時間としても、データをきちんと管理してく必要はありそうです。

視点3:経営とITの標準化

続いて、議論の視点はITと経営、特に経営におけるデータの活用へ。

経営の視点では、ITを使いこなすというよりは、データをうまく使いこなすという観点で課題があるという話をよく聞きます。ディスカッションの冒頭で議論された決算情報もそうですが、多様な働き方を可視化して社員の労働実態を把握したい、といった話も良く耳にします。

このあたりの議論は、ビジネスコンサルタントである細谷氏がリードしていきます。

「全体最適のはずのERPが、見やすさや慣れなどの現場の意見を中途半端に取り入れてしまった結果、個別最適なコード体系やデータ体系に陥ってしまい、例えば月次決算を3日で締めたい、という経営視点の要件が蔑(ないがし)ろになってしまうケースがよくある。極端な話、現場にとっては失敗に見えるかもしれないが、経営トップにとっては成功のプロジェクトになったはずなのに、両方中途半端でコストは倍増、といった結果に終わってしまう。このあたりは、プロジェクト成果の判断にも関係してくる」

すると大木氏が、先ほどの労働時間と絡めてコメントします。

「海外ではジョブディスクリプションが明確で、それはすなわち達成すべき成果も明確である、ということ。日本人からすると、海外の人は少しでも範囲外の仕事を頼もうとすると断ってくる、と文句を言いたくなるかもしれないが、それはジョブディスクリプションに忠実というよりは成果に忠実である、ということ。セールスなら売上、サポートなら顧客満足度、マーケティングならコンバージョン、といった指標が明確なのだ」

この点に関しては細谷氏からも、コンサルタント時代は目標設定して四半期ごとに評価していたので、職種とやり方次第では日本企業でもできるはず、とコメントがありました。ただし、今後は評価も一方通行ではなく双方向になったり、客観データに基づく評価に進化していくだろうとのことでした。

これらの評価に関する議論について、大谷氏からは、新規事業に関しても同様の指標設定や評価で良いのか?との問題提起がありました。

これを受け大木氏からは、再度リーン・スタートアップの考え方のコメントが。「新規事業開発に携わっている在米の日本企業は本社の意思決定に時間がかかるにも関わらず、決定したら一年で結果を出してくれ、といった指示が飛んできたりする。しかし、一年後に収益化するというのは、米国のベンチャー企業でも至難の業である。うまく行かなければ、すぐに考えなおして、やり方を変える。失敗だ、と叱責しても何も好転しない。評価も同じと考える」

確かに、業績直結の評価指標は、評価する側としては分かりやすくて良いのですが、一方、個人の成長とは全く関連のない会社都合の指標であることが多く、育てる側と育つ側がともに成長する指標とはなっていないケースが多く見られます。個人の成長が結果的にビジネスの成功に結びつくという指標設定は簡単ではありませんが、しかし、その視点を持たない限り、持続的な成長にはつながらないでしょう。

最後に

最後にカタリストの編集長を務める荻島氏が自ら質問を投げかけます。

「日本のIT業界はどのように変わっていくべきなのか」

最初は細谷氏。「クラウドサービスが提供しているベースのシステムは差別化の要因ではなくなっている。(電気や水のように)当たり前のようにベースは使えるようになっていく。IoTなど、ビジネスそのものを生み出していくITを使いこなしていく人材がますます重要になっていく。アイデアの実現手段としてのITである、という意識を保つ必要がある」

次に五味氏。「『新しいワインは新しい革袋に盛りなさい』という言葉が気に入っている。日本企業の現状と照らし合わせると、古いITから古いものしか生まれない、と解釈している。つまり、新しいビジネスはクラウドやビッグデータ分析やIoTから生まれてくると思っている。例えば、Windows2000で稼働している環境を、クラウド環境に移設してもイノベーションは期待できない(現状維持でしかない)。ソーシャルゲーム業界は賛否両論あることは承知しているが、しかし、彼らのように、新しいテクノロジーをフルに駆使して、とにかく新しい体験を生み出すという努力が必要である」

続いて大木氏。「自前主義からの脱却が必要。時間がかかりすぎるし、その分失敗した際のリスクも大きくなる。オープン・イノベーションは普通に行われている。外部のリソースやサービスをうまく使って、スピード感を持ったイノベーションに近づける。もう一つ、多様性や新しいテクノロジーといった変化に慣れておくこと。異なる考え方や文化を持つ人達とコミュニケーションすること、そのようなストレスに慣れておくこと」

そして大澤氏。「管理職(管理だけする人)の需要が激減しているように、デザインだけ、プログラムだけ、という需要は減っていく。フルスタックのエンジニアやUXを作り込めるデザイナーが必要とされていく。企業側も、弊社で仕事をするとフルスタックになれますよ、といった組織になっていく必要がある。会議なんてしなくて良いですよ、対面の会話が不得意でも、チャットが冗舌ならば採用ですよなど。本当に必要なスキルを明確に定義して育てていく組織になっていくことが大事だ。」

ディスカッション中にいくつか質問が出ましたが、最後に日本企業からよく出る質問と応答のやり取りを掲載してまとめとしたいと思います。

「日米の企業のセキュリティに関する意識の違いをお聞きしたい。『クラウド』というだけで、セキュリティが不安だからダメだという企業が多い」

五味氏が真っ先に回答します。「パブリック・クラウドに関してはベンダー毎にSLAが明確だ。TeamSpiritしかり、AWSしかり。日本企業でセキュリティ不安だ、とおっしゃる人、特に経営層の方は、何が不安なのかあやふやな場合がほとんど。何が不安なのか、言葉にする、数値にする、そうしていかないと、(あやふやな質問には)あやふやにしか答えられない。海外の企業も、攻撃されないわけではないのだが、万が一そのような事態が起きたらどうするかを考えている。しかし日本企業は、そのような事態が起きたらどうするか、を軽視し、そのような事態が起きないように慎重に行動する。」

大木氏もすかさず返します。「スピード感を持ってビジネスを進めることが最優先であるという意識が希薄だと、そのようなリスク回避・現状維持のバイアスがかかる。ビジネスを進めたいのか、セキュリティを守りたいのか、よくわからない。添付メールのパスワードとか、GoogleドライブやSkypeを避けるとか、ドメイン移転に紙の書類を郵送する必要がある、とか」

最後のやり取りに日本企業の課題と打ち手が凝縮されていたように思います。

日本企業は、"情報漏えい"や"システム停止"、"コスト増"におびえて萎縮し、いかに低コストで現状を維持するかに注力しすぎたのかもしれません。

一方、海外企業は、"従業員満足度""顧客満足度""株主満足度"を上げるためにITを最大限活用し、変化を自ら起こしてきたのです。

海外企業ができて、日本企業にできないことはありません。我々もTeamSpiritを広める活動をしながら、変化を挑戦する人々を後押ししていきます。

最後になりましたが、ご参加・ご登壇・ご協力いただいた皆様本当にありがとうございました。

今後ともカタリストとTeamSpiritを宜しくお願い致します。

text/pic:Takeshi Hishiki

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