2016.03.14

MWC2016で見えてきた
近未来の「ワークスタイル」

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MWC2016が開催されたスペイン・バルセロナのFira Gran Via

 仕事の仕方をICTが変える――。これはオフィスにコンピューターが導入されたころからの継続した命題だろう。業務の効率化から始まって、新しいビジネスの創出、世界への商圏の拡大と、ICTは仕事自体を変えてきた。2016年2月に、スペイン・バルセロナでモバイル通信の世界的イベント「Mobile World Congress 2016」(MWC2016)が開催された。MWCでは、ICTでより一層仕事のスタイルが変わる可能性を感じさせる出展に出会うことができた。

目も手も自由なコミュニケーションの姿

 その1つが、ソニーモバイルコミュニケーションズがMWC2016で製品発表した新しいコミュニケーションツール「Xperia Ear」だ。Xperia Earはその名の通り、耳に装着する情報デバイス。スマートフォンと連携して、情報を音声で届けたり、音声で指示を出したりすることができる。製品はコンシューマー向けに企画されていて、インターネット上の天気予報やニュース、交通情報などを語りかけたり、メッセージアプリやツイッターへの新着情報を読み上げたりする。もちろん、通話もできるし、電話の通知も「聞ける」。

ソニーモバイルの「Xperia Ear」。展示のために支柱の上に載っているが、本体はもちろん耳に入れる部分だけ。下部にあるのが充電機能付きケース

 Xperia Earへの指示は、本体へのタッチと音声で行う。音声コマンドによる操作というと、「OK Google」といったコマンドワードを一人つぶやいて起動する光景を思い浮かべるが、Xperia Earの起動は本体へのタッチでOK。少ない違和感で確実に音声コマンドの受付状態に入る。その後は恥ずかしがらずに必要なことだけを「話しかける」ことで、操作が可能だ。

 これは、ICTの利用にこれまで求められていた「目」と「手」が自由になることを意味する。情報を得るために目をディスプレイに向ける必要がなく、コマンドを送信するために手を専有されることがない。それでいながら、情報をネットワーク越しに入手でき、さらに自分から必要な情報を指定してリアルタイムにアクセスすることもできる。情報を活用しながら行動を取ることができるようになれば、パーソナルなコミュニケーションツールとしてだけでなく、新しい仕事の仕方が生まれる可能性も広がる。

5GとVRが取り払う「場所」の障壁

 MWCは、スマートフォンやウエアラブルなどのデバイスの新製品を公開するのはもちろんのこと、今後のモバイル通信を支える新しい技術の潮流や、それらを活用したソリューションのショーケースという側面も強い。MWC2016では、2015年後半に標準化活動が正式に始まった次世代通信方式「5G」のユースケースが多く示された。5Gでは、10Gbpsを超える超高速な通信の実現に加えて、多量のIoTデバイスの収容、低遅延で信頼性の高いネットワークの提供といった要件が示されている。

 このうち、低遅延で信頼性の高いネットワークの実現が、新しい仕事の仕方に関連してくる可能性が高いのだ。5Gでは1ミリ秒以下という非常に少ない遅延でデータ通信が可能になる。すると、これまでのモバイルネットワークでは遅延があるために難しかった、遠隔地の機器をリアルタイムで操作するといったことが現実のものになる。

エリクソンのブースでは、ドローンを5Gネットワークで遠隔操作するユースケースを紹介していた。ドローンが風力発電所の点検をする様子を模型で示したほか、VRゴーグルを使ったドローン遠隔操作のデモもあった

 ITが進歩して、情報の操作は場所を問わずにできるようになった。その先には、機器などモノの操作も遠隔地から自在に行えるような世界が来る可能性があるというわけだ。MWCのエリクソンのブースでは、ドローンを5Gと同等の低遅延ネットワークで遠隔操作するシミュレーションのデモや、ロボットアームを遠隔操作してその感触をフィードバックするといったデモが行われていた。現地に赴かずに、作業を遠隔操作でスムーズに行えるようになれば、仕事が「できる」範囲が今よりも格段に広がる。人間が行くことができないようなリスクのある場所でも、安全に仕事が完遂できるのだ。

 もう1つ、MWC2016で多く目にしたデモに仮想現実「VR」がある。スマートフォンの新しいアプリケーションとしてコンシューマー向けの「疑似体験コンテンツ」として紹介があっただけでなく、VRで仕事自体の仕方を変える可能性を示した展示もあった。ノキアのブースでは、ノキアが開発した天地水平方向にそれぞれ360度すべてを撮影できるカメラ「OZO」と、5Gの低遅延のネットワークを組み合わせた疑似体験のデモが行われていた。OZOは8台のカメラの映像で全周囲の情報を得るため情報量は多く、リアルタイム伝送には5Gの高速なネットワークが必要になる。さらに、遅延によるタイミングのズレをなくすほか、VRゴーグルの動きに対する映像の遅れで起こる「酔い」を減らすことにも、5Gの1ミリ秒を切る低遅延の性能が活かされる。

ノキアが出展した360度カメラの「OZO」。5G時代には360度の映像と音声を、リアルタイムで遠隔地のVRゴーグルに再現できるようになりそうだ

 デモでは、リアルタイムではないものの音楽の演奏現場の全周囲映像と音響を、VRゴーグルとヘッドフォンを装着することで体験した。疑似体験ではありながら、全周囲の映像と音響をリアルタイムで体験できるようになれば、「その場にいる」こととの違いが限りなく少なくなっていく。音楽やイベントのプロデューサーは現地に赴かずとも、現場を疑似体験しながらリアルタイムで指示を出すことが可能になるのではと感じさせられたデモだった。「遠隔医療や教育、仮想空間での共同作業への応用が考えられる」というノキアの説明員の解説に、近い将来の仕事の仕方が「場所」という制約を乗り越えて広がる可能性を感じた。

同じくノキアのブースで行われた5Gネットワークを介したVRの協調作業のデモ。背面のディスプレイに映し出されているのがVRゴーグルで見ている映像で、自分の操作端末のほか共同作業者の操作端末も表示されていることがわかる

text/pic:Naohisa Iwamoto

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