2016.01.06

クラウド時代に企業に求められるERP戦略――キーワードは「ポストモダンERP」

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12月3日、4日に開催された国内最大規模のクラウドイベント"Salesforce World Tour Tokyo 2015"。
チームスピリット主催のブレイクアウトセッションでは、ガートナージャパン株式会社 リサーチディレクター本好 宏次 氏に「ERP刷新に求められるアプリケーション戦略」をテーマに講演していただきました。

ガートナージャパン株式会社 本好 宏次 氏
本好 宏次 氏
ガートナージャパン株式会社 リサーチ部門 エンタプライズ・アプリケーション担当 リサーチ ディレクタリサーチディレクター

ERP などビジネス・アプリケーション市場を専門とするアナリスト。国内外における市場動向・ 競合分析・将来予測の第一人者として活躍。

本セッションでは、テクノロジーの進化とともにERPはどのように進化していくのか、経営環境が劇的に変化するなかで企業はどのようなERP戦略をとるべきなのか――ERPをめぐる「未来」について大変興味深いお話を聴くことができました。
今回は、その講演レポートをお届けしたいと思います!

●2016年、過度のカスタマイズやアドオンを施されたERPは「レガシーERP」と呼ばれる。

出だしから大変衝撃的でしたが、本好氏によると大量のカスタマイズやアドオンを施されたERPは来年には「レガシーERP」と呼ばれるようになるそうです。

一昔前、私が大手ERPベンダーに勤務していた頃は、大企業・グローバル企業におけるERP全社一斉導入プロジェクトが次々と立ち上がるような時代でした。残念ながらパッケージの標準機能だけで対応できる企業はほとんどなく、カスタマイズやアドオンで何とかやりくりしながらも、レガシーシステムを刷新しようとERPを導入していたわけです。ところが皮肉なことに、そのERPが「レガシー」と呼ばれてしまう時代が来ているというのです。

ガートナー社が2014年11月に国内企業向けに実施したERPの満足度調査で、最も不満が大きかった項目は「コストパフォーマンス」。ERP導入によって、安定的なシステム運用は実現できたものの、投資に見合った効果が得られているのかどうか確信できないと感じているIT部門の担当者が多いとのことでした。またクラウドやモバイル、アナリティクスなどの「テクノロジーの革新性」やグローバル対応などについても既存のERPでは不十分だと感じている企業が多いという結果が示されていました。

さらに最近は、カスタマイズをすることによって膨らんでしまった保守費用を抑えるために、ライセンスの保守を第三者保守サービスに切り替えたり、ERPそのものをダウンサイジングして、他のベンダーに乗り換えたりするケースが増えているそうです。
(少し解説を加えると、第三者保守サービスとは、製品ベンダーではなく第三者企業が保守のみを請け負うサービスで、費用も格安かつ古いバージョンのERPも保守してくれるため、高額な保守費用に悩むユーザーや、正式サポート終了後も製品を使い続けたいというユーザーからの支持を集めています。一方で、サポートを切り替えてしまうと製品ベンダーからの正式な保守サービスが受けられなくなるというリスクもあります)

本好氏は「レガシー」の意味を「変化に柔軟に対応できなくなっている硬直化したシステム」と定義し、まずは自社で使用しているERPがレガシー状態になってしまっていないかをまず見なおしてほしい、と受講者に語りかけました。

●現在主流のクライアント/サーバ型のERPは3年で陳腐化。注目を集めているのはPaaSベースのERP。

さて下の図は、ガートナー社が提示している「ITマーケットクロック」です。
自社で導入しているIT技術/サービスがこのチャートのどこにプロットされているかを見ることで、そのテクノロジーがライフサイクルのどの段階にあるのか、また、今後どのようなテクノロジーについて投資していくべきなのかについて判断することができます。

※講演資料は公開されておりません。
ITマーケットクロックについての詳細については、ガートナー社HPをご参照ください。
https://www.gartner.co.jp/research/methodologies/market_clock.php

このチャートを活用したERPの分類で注目すべきポイントは、N層クライアント/サーバ型ERP(いわゆるプレゼンテーション層・アプリケーション層・データ層の3層型のERP)が、陳腐化一歩手前の「コスト」フェーズにプロットされていたこと。つまり、現在主流のクライアント/サーバ型のERPは激しいコスト競争にさらされているうえに、あと数年で陳腐化して他のテクノロジーに取って代わられる可能性が高いということです。

そしてもうひとつ注目すべきなのは、「チョイス」フェーズにプロットされていた「マルチ/シングルテナントクラウドSaaS ERP」の存在。これはクラウドのプラットフォーム上に作られたERP で、TeamSpiritもここに分類されます。
今、このPaaSベースERPが急速に市場の注目を集めており、製品としての成熟度も高まっているということで「今後、ERPを導入するのであればクラウドを抜きにしては考えられない」と本好氏は強調していました。さらに製品選定をする際には、クラウドに加えて、モバイル・ビッグデータ・ソーシャルといったキーワードがしっかりと取り込まれていることも重要だということです。

今後ERPの導入や刷新を考えている企業は、どのようなアークテクチャを採用すべきか、十分に検討する必要がありそうです。

●最も重要なキーワード:「ポストモダンERP」

さて、本好氏が「今日、覚えてもらいたい言葉はこのひとつだけです!」と何度も強調していたキーワード。それが「ポストモダンERP」という言葉です。

1990年代にERPが登場してからの約30年をガートナー社では、3つの時代区分にしています。

・古典時代
ERP以前の時代。会計パッケージ・生産パッケージなど、業種や業務に特化したソリューションが主流で、それぞれベストなパッケージを組み合わせて使用することが一般的。機能が充実しているため、エンドユーザーの満足度は高いが、マスタデータの管理方法などもばらばらであり、いかに連携させていくかが大きな課題だった。

・ERPの近代化
SAPやオラクルなどのメガスイートベンダーが市場を牽引し、国内でも急速に導入が進む。経営層向けのシステムを謳い、エンドユーザーの使い勝手や満足度よりも、本社主導でとにかく整合性や統合性を高めていくことを重視。その結果、俊敏性・柔軟性が失われ、ビジネスリーダーやカジュアルユーザーのERPへの抵抗感が助長された。

・ポストモダンERP
従来のERPと大きく異なり、整合性・統合性と柔軟性・俊敏性のバランスをとるほか、経営層のみならずエンドユーザーにとっての使い勝手のよさも追求する。一枚岩のシステムではなく、クラウドのプラットフォームを使用し、クラウドとクラウド、クラウドとオンプレミスのシステムなど異なるシステム間での統合を重視する。

従来ERPはひとつのパッケージに色んな機能を詰め込んだ重厚長大なシステムでしたが、「ポストモダンERP」はクラウドプラットフォームをベースとして、色々なアプリケーションと連携するスタイルをとるのが大きな特徴です。

●いかに「ポストモダンERP」を実現するか。

さまざまなシステムを連携させることが重要となる「ポストモダンERP」。企業はどのようなステップでこの「ポストモダンERP」を実現すればよいのでしょうか。

「いきなりクラウドベースのERPにまるごと乗り換えるというのは、企業にとって非常にハードルが高い」と語る本好氏。そこで鍵となるのが、従来のオンプレミス型のERPを残しながら、少しずつクラウド型のERPを導入していくという「ハイブリッド戦略」です。

つまり、ERPのなかでも制度対応を主眼とし、特にデータの整合性や統一性が重視する財務会計などの分野はそのままオンプレミス型のERPに残し、エンドユーザーの生産性や創造性を高めるためにソーシャルやモバイルなど比較的新しい技術を採用した方がよい分野については積極的にクラウドアプリケーションを採用していくというやり方が現実的だということです。

企業は自社システムにおける各アプリケーションの役割をしっかりと整理し、仕分けしたうえで、急速に変化することがないコアな記録システムについては、堅牢性・信頼性・ルール・運用性を重視し、事業の差別化や革新につながるシステムについては、流動性・俊敏性・結果を重視するというように、システムの特性に応じてスタンスを切り替えていく必要があります。この姿勢が今後のアプリケーション戦略の肝になるということでした。
さらにクラウドアプリケーションを導入する際には、まずはコアなERPに対する影響が少なく、独立性の高い業務から導入し、徐々にクラウドで対応できる範囲を広げていくことが成功の秘訣だと強調されていました。

ちなみに、海外のERP市場でもクラウドシフトは鮮明になっており、会計や人事といった分野でのクラウドアプリケーションに利用率が非常に高まっているそうです。海外ではおよそ6割の企業が、既にオンプレミスのERPとクラウドアプリケーションをハイブリッドで使用するシナリオを採用しており、5年後にはコアなERPもクラウドサービスでまかなうだろうという調査結果も出ているようです。

●ガートナー社からの提言

最後のまとめとして、「まずは『ポストモダンERP』という言葉を覚えてほしい」と再度強調した本好氏。
あらゆる機能をERPにおしこめた重厚長大なシステムを求めるのではなく、ポストモダンERPの考え方を計画に練り込みつつ、ベンダー選定では、クラウド・アナリティクス・モバイルなどのテクノロジーの革新やグローバルサポート、柔軟性やコストパフォーマンスを重視することが大切だということでした。
「脱レガシーERP」という強いメッセージで講演はしめくくられました。


ERPをめぐる未来予測。本好氏の話を聞いていると、変化の兆しは明らか・・・・・・どころか、想像以上にスピーディーに我々のもとに訪れていることが感じられます。ビジネスにスピードが求められる今、企業にとってのシステム投資は重要な成長戦略のひとつです。
まずは自社のシステムの現状をしっかりと把握し、どこからクラウド対応していくのかということを、前向きに検討していく必要がありそうです。
次回はポストモダンERPの中核となる「PaaSベースERP」であるTeamSpiritが、いかにして企業の「ポストモダンERP」戦略を実現していかについて、考えてみたいと思います。

次回の記事:ポストモダンERP時代にTeamSpiritを選ぶべき4つの理由

▼ポストモダンERP時代のPaaS ベース ERP、TeamSpirit の詳細はこちらです。
https://www.teamspirit.co.jp/concept/

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