2016.03.23

「ポストモダンERP」基礎講座②
ERPの新たな役割と「PaaS Based ERP」とは?

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前回のコラムでご紹介したとおり、「クラウド化の波」は基幹系業務を担うERPの分野にも押し寄せており、大手ITベンダーはクラウドファーストへとサービス方針を切り替え始めています。PaaS/SaaSといった新たなサービスも次々と生まれ、この勢いは今後さらに加速していくことが予想されます。
「ほとんどの企業が、今後数年でIT基盤のクラウド化を本格的に検討する必要性に迫られる」といっても過言ではないかもしれません。
では、自社のIT戦略にクラウドを取り入れるということは、一体どういうことなのでしょうか?また、どのような手順でクラウドの導入を考えていけばよいのでしょうか。少し整理してみたいと思います。

これまでの日本のIT投資は「守り」が中心

これまでの日本企業のIT投資は、「業務効率化」・「コスト削減」・「セキュリティ」などが主な目的でした。経済産業省が2014年に発表したレポート(※1)では、
「社内の利用部門がIT部門に期待する業務とIT部門が注力する業務」の1位が「安定稼働のための運用・管理」、次いで「セキュリティ体制の維持・運用」となっています。

さらに、同レポートは

日本企業の生産性は欧米企業に比して低く、特にサービス業をはじめとする非製造業分野の低生産性は深刻
米国は「製品やサービス開発強化」「ビジネスモデル変革」が上位である一方、日本は「ITによる
業務効率化/コスト削減」に主眼が置かれている状況
米国やドイツと比較すると、我が国のICT資本投資は低水準

と指摘したうえで、今後日本企業は「業務効率化」にとどまらず、従業員の生産性の向上やイノベーティブなアイデアやビジネスモデルを創造するためにIT投資をしていくべきだと記しています。

製造業からサービス業へ――新たな役割を求められるERP

ERPは70年代の製造業における生産管理手法(MRP)に会計・物流・人事などの業務管理機能が追加されて現在のかたちへと進化したと言われており、日本でも大手メーカーから導入が進んでいきました。
しかし産業構造が大きく変化した今、日本のGDP・雇用シェアの7割をサービス業が占めています。
ERP(Enterprise Resource Planning)を日本語に直訳すると「企業資源計画」となりますが、製造業が盛んだった時代の重要な資源は「モノ」であったのに対し、この時代に最も重要な資源はまさしく「人」。
ERPには最適な人材配置や従業員の生産性を向上するという新たな役割が求められています。

スティーブン・R・コヴィー著のベストセラー「7つの習慣」をお読みになったことはありますでしょうか。
「7つの習慣」では、将来の成長や豊かな人生を実現するためには緊急度は高くないが重要度が高い領域(第2領域とよばれています)の時間を増やすことが重要だとしています。

ビジネスにおきかえて考えてみると、従業員の生産性や創造性を向上させるというのは、この第2領域を広げていくことであり、それこそが企業の独自性や競争優位性へとつながります。しかし実際は、多くの人が日々「緊急だけど重要ではない」領域(第3領域)の仕事に忙殺され、第2領域は後回しとなってしまっています(自分自身も大いに反省すべきところではありますが......)

先日チームスピリット社が実施した調査では、ひと月のひとりあたりの平均作業時間は
・勤怠管理52分
・経費精算93分
・工数管理96分 
の合計4時間という結果でした(※2)。
月に4時間というと、たいしたことのないように思えるかもしれませんが、もちろん第3領域の仕事はこれ以外にも存在することが考えられますし、さらに「緊急でも重要でもない」領域(第4領域)の時間も存在するでしょう。組織全体として考えると、決して無視することのできない数字ではないかと思います。

これまでのERPの導入によって、ある一定の業務の効率化や安定的なシステム運用は実現されましたが、「守り」のITでは、ITの力によって従業員の生産性を向上し、革新的なビジネスを生み出す――つまり「人」という資源を最大限に活用するというところまでは実現できていないようです。
企業が今後、国際的な競争力をつけていくためには、これまでとは異なる視点でIT戦略を考え、より効果の高いIT活用方法を検討していかなくてはいけないということが強く感じられます。

※1 「攻めのIT経営銘柄」の選定について
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/it_keiei_meigara_sentei.pdf
※2 チームスピリット社調べ247社36,388人の平均

人々の働き方を変革し、イノベーティブなビジネスを生み出すクラウドプラットフォームの可能性

企業に新たな価値をもたらすテクノロジー環境は、ここ数年で急速に整いつつあります。
スマートフォンやタブレットを含むモバイル端末やウェアラブル端末によって、人々はいつでも、どこでもつながることができるようになりました。GPSを使えば簡単に位置情報を取得することができ、SNSを活用すれば人々が何に関心を持ち、製品やサービスについてどのような評価をしているのかをリアルタイムでデータ化することができます。さらにIoTデバイスの発達により、ありとあらゆるものがインターネットにつながり始めました。インターネットを経由して得られる膨大な情報は「ビッグデータ」とよばれ、今、このビッグデータをいかに活用するかが企業の競争力につながると言われています。
そしてこのすべての受皿となり、重要な基盤となるのが「クラウドコンピューティング」なのです。

パブリッククラウドの登場によって、データの保管や処理コストは劇的に削減されました。さらに最近では、クラウド上でビッグデータ分析を行うミドルウェアも次々と登場しており、AI(人工知能)の発展により、単純なデータがあっという間に付加価値の高い情報へと生まれ変わるようになっています。

2016年、注目のキーワードは"PaaS"

前回のコラムではクラウドの色々な分類をご紹介しましたが、なかでも、この1年で最も注目されるであろうキーワードが"PaaS"です。
クラウド上で提供されるアプリケーション(SaaS)には、インフラ上に直接構築されるものと、PaaSを介して構築されるものがあります。開発だけを考えると、前者の方が自由度が高く開発しやすいのですが、メーカー独自の仕様で作られる分、他システムとの連携において柔軟性の低いシステムとなってしまいます。
一方、自社のIT基盤にPaaSを採用すれば、さまざまなアプリケーションやデバイスを簡単に連携させ、ワークフローを共有することができます。自社独自のアプリケーションが必要となれば、すぐに開発することも可能です。

クラウドを導入するということは、単純にシステムインフラをアウトソースするということではありません。時代やテクノロジーの進化に合わせてビジネススタイルを柔軟に変化させ、いろいろな活用方法にチャレンジしながら新たなビジネスの可能性を生み出す。その目標を実現するためおIT基盤を、企業は検討していかなくてはならないのです。
そういった観点から考えると、柔軟性や拡張性に優れた「PaaSをベースとしたSaaS」を活用していくことが、今後の重要なポイントとなりそうです。

さてSalesforce.comのPaaSをベースとするTeamSpiritは、まさにこのような思想のもとで生まれたサービスです。
「煩雑な日常業務を効率化する」ということにとどまらず、さまざまなデバイスと接続し、ソーシャルメディアの要素を取り入れることでチームワークを活性化し、個人・組織の創造性や付加価値を最大化する――そんなサービス化の時代に求められる新たなERPの姿を追求し、それをPaaSのメリットを最大限に活かして実現する「PaaSベースのERP」なのです。

クラウドのもうひとつのメリット――エンドユーザー自らがITの活用法を考えることができる

クラウドのもうひとつのメリットは、事業部門自らがITの活用方法を考えることができるということです。
これまではIT部門が中心となってシステムを構築し、それを現場の業務担当者が使用するという流れでした。しかし、クラウドアプリケーションはユーザビリティが非常に高く、ITに強くなくてもすぐに使うことができるため、ビジネスの主体となるエンドユーザー側から積極的に活用方法を発信することが可能です。

冒頭で紹介した経済産業省のレポートに、「利用部門がIT部門に抱くイメージ」という調査が掲載されているのですが、1位「請負人(39.6%)」・2位「門番(21.6%)」・3位「抵抗勢力(14.8%)」となっており、「パートナー」は11.2%、「先導者」に至ってはわずか1.2%となっています。

現状では、IT部門が先頭に立って、革新的なIT活用を進めていくというイメージはあまりないようですが、これからのクラウド時代には、IT部門がより深くビジネスに関与し、事業部門のパートナーとしてともにIT基盤を育て、強化していくという新たな役割や部門としての付加価値が期待されていくのかもしれません。

今後数年は、「クラウド×オンプレミス」のハイブリット戦略がトレンドに。

さて、クラウドが大きな可能性を秘めているとはいえ、すでにオンプレミスで大規模なERPシステムを運用している場合には、そのすべてをクラウドに移行させることはもちろん簡単なことではありません。むしろ、非常にハードルの高いことだといえるでしょう。

そこで注目されているのが、「クラウド×オンプレミス」のハイブリッド戦略です。以前のコラム(https://www.teamspirit.co.jp/catalyst/work-style/postmodern-erp.html)でもご紹介したように、今後数年は、オンプレミスとクラウドが併存するハイブリッド環境が続くと予想されており、クラウドアプリケーションを導入する際には、まずはオンプレミスのコアなERPに対する影響が少なく、独立性の高い業務から導入し、徐々にクラウドで対応できる範囲を広げていくことが成功の秘訣とされています。
小さく始められることがクラウドアプリケーションの大きなメリットです。長い時間と人件費をかけて慎重に検討し、大きな開発に着手するという従来の方法ではなく、まずは特定の事業部門で1ヶ月使ってみて、うまくいけば本格的に導入し、うまくいかなければ別のアプリケーションを試してみるということも、クラウドであれば可能です。

スマホやタブレットによって日々の生活が激変したように、私たちの働き方もこれから大きく変わっていくはずです。改めて考えてみると、スマホで何でもできるこの時代に、「経費精算は会社に戻らないとできない」というのはとても不思議ですよね。
大きな資金をかけずとも、イノベーティブなビジネスを生み出せるテクノロジー環境は整いつつあります。ありきたりな言葉になってしまいますが、重要なのは新しいことに挑戦してみようという姿勢と行動力なのかもしれません。
従業員一人ひとりの働き方に注目し、テクノロジーの力で少しでも改善していく――そのチャレンジ精神が、付加価値の高いビジネスを生み出すことにつながり、企業の競争力となっていくのではないでしょうか。


今回、2回にわたって「ポストモダンERP」の背景について整理してきましたが、今後のIT戦略を考えるうえで重要なキーワードとなる「ポストモダンERP」については、これからもさまざまな角度から考えていきたいと思います。


「ポストモダンERP」基礎講座

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