2016.05.10

ポストモダンERP 基礎講座③
これまでの常識を覆す「デジタル・ビジネス」って一体どんなもの?
~「ガートナー エンタープライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット2016」イベントレポート その1~

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少し前になりますが、3月14日(月)・15日(火)に開催された「ガートナー エンタープライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット2016」に参加しました。

イベントの大きなテーマは「デジタル・ビジネスを推進するアプリケーション戦略の実践」ということで、テクノロジーの進化がビジネスにどのような影響を与えているのか、またデジタル時代を勝ち抜くために、企業はどのようなアプリケーション戦略をとるべきかについて、さまざまな角度から講演が行われました。

一見難しそうなテーマですが、話を聞くと「なるほど」と思うことが多く、時代の流れを理解するうえで、とても勉強になりました。ということで、今回はイベントレポートとして、特に印象的だった内容についてまとめてみたいと思います!

●「デジタル・ビジネス」とは何か?

講演内容をご紹介する前に少し補足したいと思いますが、今回のイベントの大前提でもある「デジタル・ビジネス」とは、一体どのようなものなのでしょうか。

ビジネスにITを活用するということは、既に当たり前になっています。しかし今、テクノロジーの進化によって、「IT活用」というレベルをはるかに超えた大きな変革が既存のビジネスにもたらされようとしています。
例えば従来のコンピュータやスマートフォンに加え、センサー・無線通信といったIoT技術や人工知能、「ITの歴史なかで最も画期的」とも評されるスマート・マシン(※1)など......。
このようなあらゆるデジタル技術を活用し、かつてない新たな価値を創造するビジネスが「デジタル・ビジネス」なのです。

さて、「デジタル・ビジネス」時代にはユニークなビジネスモデルがたくさん生まれています。
代表的な例としてよく挙げられるのが、スマートフォンアプリを使ったタクシー配車サービス「Uber(ウーバー)」です。Uber社は従来の枠組みで考えると「タクシー会社」ですが、自社でタクシーを所有していません。乗客はスマートフォンの地図上で乗車したい場所を指定するだけでUberが契約しているタクシーを呼ぶことができ、乗る前に運転手の評価や概算料金、時間なども見ることもできます。支払は事前にアプリに登録したクレジットカードで行うため、運転手との金銭のやり取りはありません。既存のタクシー業界を震撼させるこのサービスは、今、世界を席巻しています。

「Uber」とならんで名前が登場することの多い「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、空き部屋を持つ世界中のホストと宿泊したいゲストをインターネット上つなぐプラットフォームサービスです。この企業も宿泊サービスを提供しているものの、自社で宿泊施設は運営していません。そして「Airbnb」の登場で、人々の旅のスタイルは大きく変わっています。

もちろんこれまでのタクシー業界や宿泊業界も業務支援のためにITを活用してきていると思います。しかしUberやAirbnbは、デジタルテクノロジーの力によって全く新しいサービス・ビジネスモデルを創出し、直接マネタイズへとつなげています。これが「IT活用」と「デジタル・ビジネス」との大きな違いなのです。

日本国内でもDeNA社とロボット開発ベンチャーのZMP社が合弁会社を設立し、自動運転技術を活用した無人のロボットタクシーサービスを実現しようとしています。またドローンを使った宅配便なども近いうちに現実のものになりそうです。

テクノロジーを活用することでこれまでの常識を破壊するようなビジネスモデルをいかに生み出すか、既存のビジネスから「デジタル・ビジネス」へといかにシフトしていくかが、これからの時代を生きる企業の成功の鍵を握っているのかもしれません。

(※1) スマート・マシンとは、「自律的に行動し、知能と自己学習機能を備え、状況に応じて自らが判断し適応し、これまで人間しかできないと思われていた作業を実行する新しい電子機械」のこと(ガートナー社レポートより)。自律走行車・ドローン・ロボットなど、広範な分野で実用化が進んでいます。

●【講演レポート】「オープンなビジネス・アーキテクチャが実現する革新的なものづくり ~デジタルものづくりがもたらす技術革新と新しいものづくりエコシステムの萌芽~」 
株式会社カブク 代表取締役 稲田雅彦氏

さて前置きが長くなりましたが、「デジタル・ビジネス」を理解するうえで非常に勉強になったのが、カブク社の講演です。
カブク社は「3Dプリンターを使ったデジタルものづくりプラットフォーム『Rinkak』 を運営するベンチャー企業です。先に紹介したUberやAirbnbにならって表現すると、「工場を持たない製造業」ともいえる画期的なビジネスモデルを展開しています。

カブク社のサービスを一言で説明すると、「個人・企業から3Dデータを集め、ネットワーク化したデジタル製造工場から最適な工場をマッチングし、完成品を購入者に届ける」というもの。
同社では、産業用の3Dプリンターを1台以上所有している工場を「デジタル工場」と呼び、30カ国以上のデジタル製造工場からなるネットワークを構築しています。そして顧客から寄せられた3Dモデルデータや素材・後処理・納期・配送先地域などのさまざまなリクエストに対して、最適な製造工場を自動でマッチング(この技術で特許も取得しています)。さらに、オーダーから製造、物流といったプロセスを効率化するシステム一式をクラウドで提供しています。このデジタル工場向けのクラウド基幹システム「Rinkak 3D Printing Manufacturing Management Service(MMS)」は、同社のソリューションのなかでも特に成長著しいとのことでした。

消費者のニーズが細分化している今、企業にとって顧客のニーズにいかに早急に対応し製品開発につなげるかは非常に重要な課題です。そんななかカブク社は、「だれでもものづくりができる世界をつくる『グローバルものづくりプラットフォームを構築』」することをビジョンとして掲げ、製造・流通業界に大きな変革をもたらそうとしています。
同社のサービスを活用すれば、専門知識や設備がなくてもモノづくりに参画できます。そして既に自動車・電気・ゲーム・エンタメ・医療など多様な業界で実績を重ね、高い評価を得ているということでした。

世界ではIoT技術によってさまざまな設備や工場そのものをネットワーク化し、そこに蓄積された大量データを分析することで、新たな次元の工場管理を実現する動きが活発化しています。
例えばドイツでは、工業のデジタル化によって製造プロセスを根本的に変革し、コストを大幅に削減する「インダストリー4.0(Industry 4.0)」という巨大プロジェクトに国を挙げて取り組んでいます。日本でも「日本版Industry 4.0」として、標準化の策定が始まっています。

講演のなかで稲田氏は「これまでの製造業は高い技術力を持つようになった一方で、自分達で保有する技術のなかで製品開発することにこだわり、結果としてイノベーション効率が低下していまっている」と指摘していました。今後はものづくりの世界においても「オープン」・「ネットワーク」・「シェア」・「コラボレーション」といったキーワードが重要になっていくのではないかと強く感じました。

「デジタル・ビジネスにおいては『デジタルの世界と物理的な実世界を区別しない』、『エコシステムを考える』ことが最も重要だ」と稲田氏は語っていましたが、確かにこういった視点で世の中を見回してみると、これからまだまだ新たなビジネスモデルが生まれてきそうです。
10年後には、今は想像もできないような世界が広がっているかもしれません。


講演レポートは次回も続きます!
「デジタル・ビジネス」は企業にとって重要なキーワードとなりそうですが、実際にテクノロジーの力を使って新しいことに挑戦する際には、どのようなことを考えながらIT戦略を策定し実行していくべきなのでしょうか。また新しいテクノロジーやビジネスモデルの導入は、人々の働き方にどんな影響を与えるのでしょうか。次回は、「デジタル・ビジネス」に歩みを一歩進めていくためのヒントとなる講演についてご紹介したいと思います。


「ポストモダンERP」基礎講座

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