2016.05.31

ポストモダンERP 基礎講座⑤
リミニストリートの「第三者保守サービス」で変わる、ポストモダンERP時代のIT戦略

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日本リミニストリート株式会社 支社長 脇阪順雄氏
NECオフィスシステム株式会社にて、製造システムエンジニアとして勤務後、1997年にSAPジャパンに入社。主にハイテクメーカー向けの生産管理導入コンサルタントとして従事し、インダストリ事業開発本部本部長、ソリューション統括本部本部長、自動車産業統轄本部副本部長などを経て、2015年9月にリミニストリート日本支社長に就任。現在にいたる。

ビジネスの「デジタル化」が加速している今、企業にとって、限られたIT予算をいかに戦略的に投資し高いROIを実現するかが大きな課題となっています。
そんななか、社内の基幹システムを今後どのように維持もしくは刷新していくべきかについて頭を悩ませているCIOやIT部門のマネージャーも多いのではないでしょうか。

そんな悩みを解決するひとつの手段を提示しているのが、株式会社リミニストリートが展開する「ERPの第三者保守サービス」です。2005年にアメリカで生まれたリミニストリート社は、2014年に日本支社を開設。同社のサービスは現在、世界で約1,300社、日本国内では55社に導入され、市場が急拡大しています(取材時)

今回はリミニストリート日本支社長の脇阪順雄氏に「ERPの第三者保守」とはどのようなサービスなのか、またIT環境が劇的に変化する今、企業はどのようなことに気をつけてIT戦略を考えていくべきなのかについて、お話を伺いました。


-はじめに、リミニストリートのサービスについて教えてください。

脇阪氏:リミニストリートはSAP社やOracle社に代わり、ソフトウェアの保守サービスを提供する独立系保守サービス企業です。
これまではパッケージソフトの保守メンテナンスはベンダーから受けるというのが常識であり、ユーザー企業の多くはライセンス費用の20%~22%に相当する額を保守費用として、毎年ベンダーに支払ってきました。当社はその保守メンテナンスサービスをベンダーの半額で提供しています。
大きな特徴は、ユーザー固有開発のプログラムつまりアドオンの保守や、法・税務改正にともなう更新サポートも追加料金なしでサポートしていることです。
当社の保守サービスに切り替えていただければ保守費用を削減できるだけではなく、ベンダーの都合によるバージョンアップや社内のシステム保守要員も必要なくなります。
当社は「ERPの保守料を50%に削減する」と謳っていますが、実際にはベンダーに支払ってきた保守料金の1.5倍の保守費用削減を実現しています。

脇阪順雄氏

-なぜこのようなサービスが生まれたのでしょうか?

脇阪氏:実はユーザー企業が支払う保守料は単なるパッケージの修理代ではなく、将来のアップグレード権も含まれています。ERPの成長期にはベンダー同士が健全な競争のなかで新たな機能を次々と開発し、ユーザー企業は機能拡大やアップグレードのメリットを享受し、保守料を払ってきました。
しかしここ数年、この状況は大きく変化しています。今のERPには企業にとって必要な機能がほぼ網羅されており、成長が止まっている状態です。ユーザー企業は相変わらず高額な保守費用を支払っているものの、アップグレードから得られるメリットはほとんどありません。高額な保守費用を支払い続けることに疑問を感じる企業が増えるなか、保守費用の負担を軽減することで企業のイノベーションを支援していきたい、そんな思いからリミニストリートは生まれました。

-システムの保守費用は、企業にとって大きな負担となっているんですね。

脇阪氏:現状では企業のIT予算の8割を保守費用が占めていると言われており、事業変革戦略に使われている予算はわずか13%にすぎません。
一方でビジネスのデジタル化はどんどん進み、ユーザーエクスペリエンスの向上やIoT、「インダストリー4.0」など、企業が真剣に向き合うべき新たなテクノロジーが次々に生まれています。ERPに関しても、新しいアーキテクチャをベースとした製品が登場しています。
もちろん全ての企業が当社の保守サービスに切り替えるべきだとは思っていません。優先順位は企業によって異なるので、最新のテクノロジーを採用したERPの導入が必要だということであれば、それを進めるべきですし、当社も保守を切り替える前に必ずお客様と一緒にどちらの選択肢が良いかを検証するようにしています。
ただ、当面は今のERPは変更しなくてもいい、保守料を削減してビジネスに直結するところにもっと予算を投下していきたい、ということであれば、しばらくは当社に保守サービスをお任せしていただいて、その間に将来のERPのアーキテクチャを見直していくというのがベストなのではないかなと思います。

-ところで、なぜベンダーは保守料を下げられないのでしょうか?

脇阪氏:実は保守サポートサービスは非常に優れたビジネスモデルであり、ベンダーにとって保守費用というのは重要な収益基盤となっています。初期費用を大幅にディスカウントしても、導入さえしてもらえればベンダーは安定的な収入を得ることができるという仕組みなのです。
保守費用を下げてしまうと収益が悪化し、新たな開発投資ができなくなってしまうので、ベンダーがこのビジネスモデルを簡単に放棄するということは、かなり考えにくいと思います。

-なるほど。リミニストリートのサービスは、そんな保守サービスの常識を覆したわけですね。導入企業は、御社のサービスをどのように評価されていますか?

脇阪氏:お客様の満足度は非常に高いと自負しています。実は導入前のお客様の期待値はそれほど高くないんです。「値段が半分だから、サポートの質はベンダーよりも悪くなければ、まあいいか」と(笑)。「安かろう、悪かろうじゃないの?」と心配するお客様もいらっしゃいます。ところが一度当社のサポートサービスを体験していただくと、がらりと評価が変わります。
ベンダーのサポート部門に問い合わせをしても、なかなかレスポンスをもらえなかったり、こちらの状況を正しく理解してもらえなかったりといった不満を感じたことがある方も多いのではないかと思いますが、当社は価格だけではなくサポートの品質にも大変なこだわりをもって取り組んでいます。
当社では一社ごとに専属の「プライマリーサポートエンジニア」がつき、365日24時間体制でサポートを行います。さらに最初の問い合わせから30分以内で回答、その後2時間ごとに状況の更新を行うということを契約書に明記し、厳守しています。
ただここで驚いてほしくはないんです(笑)。実際には、問い合わせから平均2分30秒で最初の回答を行っています。

-それはすごいですね。

脇阪氏:非常に印象的だったのは、あるお客様が税制改正によって固定資産の償却エンジンを新しいものに移行しなくてはなればならなかったのですが、ベンダーのコンサルティングサービスを使用することなく、リミニストリートのサポートだけでシステムを刷新することに成功しました。
ベンダーのサポートに問い合わせると「この問題はコンサルティングサービスの対象です」と言われてしまうところですが、リミニストリートのサポートエンジニアはあらゆる質問に答えてくれるので、お金をかけずにシステムを移行できたと大変感謝していただきました。
最近ではこういった当社のサポートの評判を聞いて、お問い合わせくださるお客様も増えています。

-保守をリミニストリートに切り替えることによって、コスト削減に成功した企業は浮いた予算をその後、どのように活用されているのでしょうか?

脇阪氏:ERPのUIを改善したり、モバイルアプリを開発したりと、よりイノベーティブな分野に投資されているお客様が多いようです。アメリカの事例ですが、SAPをグローバル展開しようとして全世界分のライセンスを買った企業がありました。ところが本国の導入だけで予算を使い果たしてしまったため、ライセンスがあるのにグローバル展開することができなくなってしまったんです。そこでリミニストリートに保守を切り替えて保守料を削減し、浮いたお金で改めてグローバル展開を成功させたという例もあります。
2013年には当社のクライアントであるエンブラエルというブラジルの大手航空機メーカーのCIOが IT Exective Yearを受賞しました。リミニストリートの保守サービスに切り替えることでコストを削減し、新規プロジェクトや海外展開へと積極的に投資していったことが評価されての受賞でした。これも非常に嬉しいニュースでしたね。

-なるほど。ビジネス競争が激化するなか、限られたIT予算をいかに戦略的に投資していくかは、企業にとって今後、さらに重要な課題になっていきますね。

脇阪氏:そうですね。IT戦略は非常に重要ですが、かといって社内のIT予算が急激に増すということはあまり考えられません。限られた投資額でいかに高いリターンを得るかが企業の競争力に直結すると思います。
世の中には新しい技術があふれていますが、企業が新しいことに挑戦するためには、まずそこに投資するための予算を確保しなくてはいけません。保守費用を最大限に削減し、企業がよりイノベーティブなIT投資をしていけるように支援することが当社の存在意義だと考えています。

-日本国内でリミニストリートのサービスを拡大していくにあたって、重視していることはどのようなことですか?

脇阪氏:リミニストリートのサービスをいかに正しく理解してもらうか、ということでしょうか。
当社が大切にしているのは「システムを正しく動かすこと」です。ITアーキテクチャとして必ずしも美しいかたちになっていなくても、まずはシステムを動かすということを再優先に考えています。なかにはワークアラウンド的なソリューションを嫌う方もいて、特に日本では「システムは根本から美しく整っているべきだ」と考えられがちですが、いくら裏側が美しく整っていてもECサイトでユーザーが気持よく買い物ができなければ全く意味がありません。
時間も予算も限りがあるなかで、すべてを100%完璧にすることはできません。ITはビジネスを成功させるため存在するのだということ、そのために優先順はどうあるべきかを、まずはお客様にしっかりと理解していただくことが大切になってくると思います。

脇阪順雄氏

-ERP業界では「クラウド化」が大きなトレンドとなっていますが、どのように感じていらっしゃいますか?

脇阪氏:「ERPのクラウド化」といっても、ベンダーによってソリューションの仕組みや思想は大きく異なります。例えば、SAP社の「S/4 HANA」は専用のハードウェアにメモリを積んで、最強のCPUで高速処理をするという仕組みになっている一方で、ワークスアプリケーション社の「HUE」は完全分散型で、Google検索でお馴染みの予測変換機能や、AIによるアシスト機能などを搭載しています。どちらも最新の技術を活用した素晴らしい製品ですが、発想が全然違います。
また「クラウド」という言葉でまとめられてはいるものの、マネジドクラウドなのかSaaSなのかで意味合いが異なりますし、基幹システムのクラウド化についても、業界ごとにプロセスが大きく異なります。そして今あるサービスやテクノロジーがベストではなく、5年後、10年後にはさらに選択肢が増えていくと思います。企業は将来を見据えたうえでどのタイミングで何を選ぶべきかを考えなくてはいけないので、力が試されますね。

-選択肢が増える分、企業も賢くならなくてはいけませんね。

脇阪氏:そうですね。重要なのは新しいテクノロジーを採用することではなく、会社のビジョンやビジネス戦略を実現するために、どんなテクノロジーをどんな風に活用していくのかということです。
ERPの世界にも大きなパラダイムシフトが起きていますが、本当にいますぐERPを切り替える必要があるのか、まずはカスタマーエクスペリエンスの向上に力を注ぐべきではないか、ということを問いなおす必要があるのではないでしょうか。
またCIOやIT部門の方は、常に最新の情報にキャッチアップする姿勢が必要です。CIOは1年のうち1ヶ月くらいはシリコンバレーに滞在するくらいの意気込みが必要かもしれません(笑)。
これまで世界中の企業を見てきましたが、日本企業はITエンジニアが少ない印象です。アメリカ企業に比べるとエンジニアの地位も高くありませんし、なんとなくベンダーの言うことにそのまま従ってしまう企業も多いような気がします。
ERPの保守だけに携わり、ユーザーから「動かない」・「使いづらい」といった文句を言われながら日々過ごすよりも、新しいデジタルビジネスを開発して「これはオレが作ったシステムだ!」と胸を張って言える方がエンジニアにとっても楽しいですよね。
保守は当社に任せていただいて(笑)、エンジニアの方がよりクリエイティブな仕事でビジネスに貢献できるような環境を生み出すことが企業にとって重要なことではないでしょうか。エンジニアが自信をもって活躍できる企業こそが、これから大きく成長していくのではないかと思います。

-最後に、今後の目標について教えてください。

脇阪氏:SAP社やオラクル社からは、「自分達がせっかく築き上げたビジネスモデルを奪っていくとんでもない会社だ!」と思われているかもしれません(笑)。ただ新しいビジネスモデルが生まれたときは、同じようなことは必ず起こるもので、iTunesもUberもAirbnbも業界から大きなバッシングをされながらも結果的には消費者の支持を得て、大きく成長しています。
私自身SAP社で長く働いてきて、今でもSAP製品は大好きですし、素晴らしいと思っています。
SAP社もオラクル社も素晴らしい技術をもっている企業ですが、運用コストによってIT予算が逼迫してしまっていてはユーザー企業がイノベーティブな分野に投資することはできません。
保守料削減は私たちに任せてもらって、SAP社やオラクル社には、それぞれのベンダーにしか提供できない技術やサービスをどんどん世の中に広めていってもらいたいと思います。それが本当の意味で、日本企業のイノベーションをサポートすることにつながると信じています。ERP業界全体で日本のITイノベーションを促進する、そんな社会を実現したいです。

-ありがとうございました。


「ポストモダンERP」基礎講座

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